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株主総会での質疑応答(要約)

今回から2回に分けて、2023年9月26日に開催された第24期定時株主総会中の質疑応答と、その直後に開催された毎年恒例の株主報告会での質疑応答をお届けします。

今回は株主総会中の質疑応答です。
社長の河邊・CFO加登住からお答えした内容をまとめて要約しています。

昨年の株主総会・株主報告会では2相から3相に向けてさほど時間のかからない印象を受ける質疑応答だったが、その後何が変わったのか。

昨年の時点では最速での臨床試験開始を追求していました。さほど時間のかからない可能性もあり、私たち自身もそう考えていたので、そのような印象を与えたと思います。いま私たち自身も振り返ると「思っていたより時間がかかった」と感じています。
交渉・折衝そのものに時間がかかっているというよりも、ひとつひとつのやりとりに時間がかかる・待ち時間が長いのがおもな原因です。その点について見通しが甘かったといわれればそれはあると思います。

もうひとつ、臨床試験開始の一般的な流れとの対照でお話しします。
一般的に臨床試験開始の申請は、まず臨床試験の最終報告書をとりまとめ、その最終報告書を添えてプロトコール案を規制当局に提出し、そこから審査・協議が始まるという順序で進みます。
私たちは今回、最速のスケジュールを狙って、最終報告書とりまとめに先立って規制当局との折衝を始めて現在に至っています。
臨床第2相試験の開始の際も、この最速の準備スケジュールで進めました。
試験後の承認を見据える最終試験ということで、規制当局も細かい点を含めた指摘をしてきており、目論んだような最速スケジュールは実現しませんでした。
今まさに最終報告書作成が進んでおり、まとまり次第これを当局に提出する予定です。
現在私たちは、最終報告書提出前に議論を進めることができていますから、いまお話しした一般的な流れと比べれば、遅れているという状況ではありません。

現在最終報告書をまとめておられる第2相試験のデータについて、CBP501第2相試験の内容と思われる情報がネット上にあるのを見ると各群の間の全生存期間(OS)の差が思ったより小さく感じるのだが、どのように解釈すべきなのか。このあと直接ご質問できるのが1年後になると思うので、学会発表前ではあるがこの場で質問させていただきたい。

学会発表前に発表内容に関するディスカッションを公の場でしてはいけない規定になっているのと、当局との協議の内容にも関連する情報なので、ご指摘いただいた情報に基づいた具体的な質疑は差し控え、ある程度一般化した回答になるのをご容赦いただきたいと思います。
また、直接面と向かっての質疑は確かに1年後になりますが、学会発表直後から投資家リレーションでしっかりと質疑応答をしていく考えです。そのためにこそ普段からの投資家リレーションに注力していますので、ぜひそちらを活用していただきたいと考えています。

ということで個別のデータについては触れないのですが、学会発表を読み取っていただく前提として、私たちの実施したCBP501第2相試験が証明しようとしたのが
「現在承認されている治療では10%程度しかないはずの3か月後の無増悪生存(3M-PFS)率が35%を上回ること」
だったことを改めてご説明したいと思います。

これを証明するためのデザインとして、各群の人数を23人と設定し、最初の9人のうち4人で3M-PFSが確認されれば野球でいう「コールド勝ち」の早期有効中止、1人以下であれば「コールド負け」の早期無効中止と設定した試験を実施しました。
その結果、4つの群のうち3剤併用の2つの群で最初の9人中4人の3M-PFSが確認されたので、3M-PFS率が35%を上回ることが95%の確率で正しいと統計的に証明され、それら2つの群はコールド勝ちになりました。
2剤併用の2つの群は、ひとつは1人以下だったのでコールド負けです。
もうひとつの群は、1人以下でも4人以上でもなかったので、最初の9人の段階では何も証明できていません。その群について続きの14人の臨床試験を続ければ3M-PFS率が35%を上回るかどうかを証明できるのですが、臨床試験に携わった医師の満場一致で、続きの臨床試験を実施せず3剤併用の臨床試験を進めることが推奨され、臨床第2相試験の終了が決定しました。

今回、各群のOSの比較についてご質問いただいていますが、そもそも今回の試験は、それらの差(統計的に意味のある差:有意差)を群と群の間で比較し確認・証明するための試験ではありません。感触を見ることはできますが、統計的には、良いとも悪いとも差が大きいとも小さいとも何も言えません。
それを見るためにはもっと大きなサイズが必要です。わずか9名のサイズなので、個別の患者さんの属性など偶然に左右されるバラつきも大きいのです。

3M-PFSについては、それらのすべての要因を加味した上で証明できるようデザインされているので、3M-PFS率が35%を上回ることが95%の確率で正しいと統計的に証明できています。

また、たいていの医師が「がんが小さくなることはほぼない」と考えている膵臓がん3次治療で、わずか9例の中に複数の奏効がありました。これも統計的には「偶然でしょう」と言われる話ではありますが、とはいえインパクトのある情報です。

なお、ESMOでのポスター発表の1週間ほど前にアブストラクト(抄録)が公表されますが、その2つはデータの時点が異なります。
アブストラクトの内容は、昨年の提出〆切の時点のデータに基づくものです。投資家の皆さまへ当社から適時開示などを使っていろいろお伝えしていたのとほぼ同じタイミングということになります。
一方でポスター発表は、今年4月のデータカットオフを踏まえた最終のデータに基づくものですから、当然ですが数値などが変わります。この点にもご留意いただきたいと思います。

質問というよりお願いだが、株主数をもっと増やすよう努めてほしい。

株主数は、昨年の約5,000人から、今年6月末で約15,000人となりました。
今後も増加を図っていきますが、単に株主数だけでなく、大口で中長期に持っていただける株主づくりと併せて、両面を推進しています。

これまでの投資家リレーションの中で、投資家の期待が過度に高まっているところに「もっと時間がかかるよ」といった抑制的なコメントも出してほしかった。その場では株価が下がるかもしれないが。

これまでの時点では(現在も)、私たち自身にとっても「すぐかもしれないし、しばらくかかるかもしれない」という状態が続いています。そのため、「もっと時間がかかるよ」とお伝えした途端に話が進むことも考えられ、ミスリードになる難しさがあります。
「わからない」と書いてお伝えしたいのは本当に「わからない」で、「すぐかもしれないし、しばらくかかるかもしれない。私たちにもわからない」なのですが、一般の方には「そんなはずはないだろう」と思われてしまいます。
もしできるなら、「ずっと先だろう」「永遠に無理だろう」と言う人には「そんなに先じゃないかもしれませんよ」、「すぐだろう」と言う人には「そんなにすぐでもないかもしれませんよ」と、別々の回答をしたいとつねづね思っています。

第19回新株予約権のコミットメント条項が解除になったが、このまま株価が右肩下がりで資金調達が不調に終わった場合には臨床試験継続のためにどのような選択肢を考えているか。

割当先に新株予約権の行使をお約束いただいたコミットメント条項は解除になりましたが、発行会社にとって有利だった条項が外れたものであり、特別に不利益なものになったわけではありません。一般的な行使価額修正条項付新株予約権に戻ったものです。
今後も、下限行使価額を上回る株価推移があれば行使の進捗が期待でき、実際に割当先Long Corridor社からも「引続き行使の意向。キャンバスの資金調達に貢献したい」と伝えられています。
「このまま株価が下がり続けたら」という趣旨のご質問については、臨床第2相試験の最終データ公表や次の臨床試験に向けた動きなどをお伝えすることでそういう右肩下がりを回避する試みが先決で、次に考えるのは臨床試験やランニングのコスト削減という順序と考えています。
さらに最悪の事態に備える方法はもちろん常時複数の選択肢を検討していますが、まだ大急ぎでどれかに向かって準備にとりかかるような状況ではなく、コメントする状況でもないと考えています。

CBP501臨床第2相試験の結果に関して、科学雑誌や大手メディアへの広報予定はあるか。

まさに今回のESMO発表がその第1歩にあたります。これひとつとっても、外部のさまざまな協力を得つつ1年近く準備を進めた成果です。

国内外の補助金・助成金などを申請する予定は。

活用できそうな補助金・助成金については常にリサーチしています。なかなか現状使えるものは限られていますが、使えるものは使っていく考えです。

CBS9106はどのような状況か。

第2相試験でどのような併用でどのがんを狙うかが検討されているところです。
先方との直近のコミュニケーションでも、引続き開発を進める意向を確認できています。
これも時期は見通せませんが、次に想定される進捗ご報告は臨床第2相試験などのスタートのお知らせになると考えています。

ESMO発表に関し、河邊社長ご自身が発表される予定はあるか。また、河邊社長の所属について誤った情報が出ているが。

学会発表は研究者が実施するもので、河邊自身が学会で発表する予定はありません。
河邊の所属が誤っている点については完全に先方の事務処理ミスです。そのようなミスの起きた原因については想像の域を出ませんが、おそらく発表者のうち誰かの利益相反情報が紛れ込んだものと思われます。

なお、このミスへの対処について諸々ご指摘をいただきましたが、あの手のミスは頻発するもので、ひとつひとつ対処するのも限界があります。
また、自然発生の風説であれば会社が否定すればとどまるものですが、どうもそれを面白がって愉快犯的に言い続けるケースがあり、ひとつひとつ対応するのは彼らを面白がらせるだけです。「あんなに躍起になって否定するということは怪しい」などいくらでも言えるので、シンプルな対応にとどめていることをご了承ください。

将来的な、第3相試験成功後の会社ビジョンはどのようなものか。

もともと「がんを治したい」という思いで起業した会社であり、将来もそれに向かって進みたいと考えています。
もしCBP501が私たちの想像するベストのコースを辿ったとしても、すべてのがんを治せるわけではありません。「がんを治す」までにやることはたくさんあり、やらせていただける限りやりたいと思っています。