去る2月22日、2023年6月期第2四半期決算説明会(アナリスト・報道機関向け)を開催しました。
本編の動画(Youtube)はこちら、投影資料(PDF、一部訂正済み)はこちらです。
このブログではいつものように、説明会本編終了後の質疑応答をお届けします。
(日比野)
ありがとうございます。
投与できる患者様の数は、2次治療で2万人以上、3次治療で1万人以上と考えています。
説明会資料27-28ページで、2018年の死亡者数データをもとにした投与対象患者数規模の推定を示しています。
3次治療で年間約5万人の患者様のうち20〜70%程度の方が投薬治療を望まれると見ており、仮に30%とすると約1.5万人と考えられます。
(日比野)
基本的には、まだ私たちが競合等と考える段階ではないだろうと考えています。
CBP501はまず3次治療での承認の獲得を考えている一方、ゾルベツキシマブが承認された場合、Claudin18.2陽性と判定された患者様はまず1次治療でゾルベツキシマブの対象となると考えられます。
その後の2次治療・3次治療をどうするかという話であり、3次治療の患者数が大きく変わることはなく、3次治療でもう一度ゾルベツキシマブが使われるということも考えづらいと思われますから、基本的には1次治療の中での競合と捉えるべきだと考えています。
(日比野)
前のご質問のゾルベツキシマブと同様と考えています。
まず1次治療でゲノム解析や生検がおこなわれ、Claudin18.2陽性であればゾルベツキシマブ、KRAS陽性であればASP3082が投与されるようになると考えられます。
つまり、膵臓がん1次治療の中で細分化は進むと思われますが、その後の2次治療・3次治療の市場や競合の状況がすぐに変わるような状況には未だ至っていないと考えています。
(日比野)
オニバイドの膵臓がん1次治療を対象とする臨床試験結果については承知しています。
この内容は、現在よく使われているFOLFIRINOX(5-FU・イリノテカン・オキサリプラチンの3種類の抗がん剤と5-FU増強剤レボホリナートの4剤併用)のイリノテカンの部分をオニバイド(イリノテカンリポソーム)に置き換え、ゲムシタビンと比較した試験です。
これも、前のご質問のゾルベツキシマブやASP3082と同様に、膵臓がん1次治療の選択肢の細分化の話題であり、3次治療での承認獲得を目指しているCBP501の対象患者数や開発競合と捉える必要はないと考えています。
将来、膵臓がん1次治療・2次治療の領域へCBP501開発が拡大する際には、これらの点も検討していきます。
(日比野)
はい。ESMO2020での発表のあと、現在は血液がんから離れ固形がん対象の開発にシフトしています。
説明会資料35ページにあるとおり、⼤腸がん、KRAS変異がん、腎臓がん、もしくは p53関連のがんを対象に、他の抗がん剤との併用によるピボタル試験または第2相試験に進むと想定しています。
(加登住)
現時点でお話できることは限られていますが、おかげさまで私たちが今後の開発資金確保に向けてとり得る選択肢が広がっています。
製薬企業等とのアライアンス(ライセンス導出・薬剤提供などさまざまな形の可能性)、機関投資家や株式市場からの資⾦調達、あるいはそれらをミックスした手法などです。
それぞれのメリット・デメリットと実現可能性を比較して最善の選択をし、固まったところですみやかに開示していきます。
(河邊)
導出にあたっての困難というか、ハードルになっているものは何かというご質問と思います。
私が感じているハードルとしては、CBP501作用機序が製薬企業等の望むタイプのものと違うという点が一番大きいと感じています。
大きな製薬企業では特に、あらかじめ「こういうものを導入しよう」とターゲットを定めて活動される傾向があり、CBP501が「カルモジュリンに対する作用」で「しかも単純なカルモジュリン阻害剤ではなく複雑な作用をする」という時点で、彼らが獲得したい物のカテゴリー分類に入らなくなります。
これがおそらくいちばん大きな理由だと思います。
その理由を払拭するには「結論」(新薬承認、上市)の確度を上げていくことが必要で、それによって作用機序云々のハードルの重要性が下がっていくしかないと考えています。
もうひとつは、既に皆さんご存じのとおり、物質特許の話題です。
製薬企業の皆さんはものすごくたくさんの候補の中から導入品を選択するので、いわば「足切り」の基準をいくつもお持ちです。
その中で多くの企業は、物質特許の有無や残存期間で足切りをします。
CBP501の物質特許(2003年出願)の存続期間20年は2023年で切れ(注:医薬品に認められる特許期間延長を申請したとしても2028年まで)、そのあとは、白血球数で投与対象を絞る用途特許での排他性の確保を図ることになります。
私たちは、この用途特許(注:国際公開番号 2014/207556、⽶国・欧州主要国・⽇本で成⽴済)による排他性が確保できると主張しています。
しかし、用途特許とひとことで言っても、全く排他性のなさそうなものから強い排他性確保の可能性のあるものまでさまざまあり、それぞれよく検討してみないとわかりません。
それをひとつひとつ検討するのでは製薬企業の皆さんにとって足切りのハードルを作っている意味がないので、用途特許については十把一絡げに足切りとしておられるようです。
以上のふたつ(作用機序、特許)は、しっかりとご説明すれば納得していただけると私たちは考えており、実際に個々のご担当には納得していただけることがほとんどなのですが、製薬企業の会社全体を動かしていくにはやはりハードルになるようです。
そういうわけで現在は、「結論」(新薬承認、上市)の確度の高まりをご覧いただいて、これらのハードルの重要性を下げていただく方向にシフトしています。
(加登住)
プロトコールそのものという意味では、さきほど説明会の中でも触れたとおり第3相試験は「第2相試験で見られた有効性・安全性の証明」なので、さほどの変動幅はありません。
それを証明するための投与群の数、各投与群の規模などについて、現在は規制当局とのやり取りも含めて最終の詰めをおこなっているところです。
確定と公表の時期に関しては、ある程度の目処は社内的に持っているのですが、変動要因がまだいくつか残っているため、まだ「おそらくいつ頃になりそう」などと公表するべき時期ではないと考えています。
「できる限り早く」という考えは変わっておらず、また、お示ししている最速シナリオ(2025年末〜2027年上市目標)のスピード感は現状で堅持できており、それを引き続き維持できる範囲で第3相試験をスタートできると考えています。
(加登住)
社内的に最優先しているのはスピード感です。
第3相試験のスタートまでに開発資金確保が決まるのがベストなのですが、その一方で、資金確保方法が決まらないから第3相試験の開始がズルズルと遅れるという選択は、私たちにとって最も好ましくないものです。
第3相試験の開始時期は、最速シナリオとの関係もあり、私たちが許容できる範囲までにとどめたいと考えています。
アライアンス(ライセンス、共同開発など)と自社調達のそれぞれについて、他が決まらなかったときに備えてあらかじめ固めておける話を固めていく、そういう状況にあります。
アライアンスについて具体的に「かくかくしかじかの条件が満たされたら」といった内容は現時点であまりご説明できず大枠のお答えになってしまいますが、アライアンスとは結局のところ「将来の価値と今の価値の交換」であり、その率としてあまりに不利益なものは将来の私たちの企業価値を食い潰すことになるので、そのような内容でないことを大前提とし、その範囲内で開発に寄与するものをと考え、交渉折衝を続けています。
(河邊)
加登住からの説明に付け加えるとすれば、できるだけ速く開発を進めることともうひとつ、開発が上手くいくことが重要です。
ですから、極端な話ではありますが、たとえばものすごく良い条件で開発の成功確率上昇に寄与するものであれば多少はスケジュールを遅らせてでもその話に乗るし、そういう点で曖昧さの残る間はできる限り自分たちで前へ進みながら交渉を続ける、という優先順位になります。
* * *
質疑応答は以上です。
ところで2月24日、日経バイオテク・オンラインで
『第2相成功の膵臓がん治療薬CBP501は特許問題で導出に課題』
と報道され、株主・投資家の皆様にご心配をおかけしました。
このタイトルや、有料記事中の表現
一方、同社はCBP501の導出を狙っているが、こちらの状況は厳しいとの説明もなされた。カルモジュリンを標的とする作用機序が、導出先候補企業に好まれないほか、特許の状況が理由だという。物質特許が切れており、用途特許の成立可能性は検討中だという
の妥当性については、私たちとしては不本意と感じていますが、上記の質疑応答全文と見比べていただき、読者の皆様のご判断におまかせしたいと思います。
なお最後に、CBP501物質特許の話題について補足です。
この物質特許が2003年出願のものであり、その存続期間20年が2023年で切れる(医薬品に認められる特許期間延長を申請したとしても2028年まで)という状況であることは公知の事実で、既に私たちからも繰り返しご説明しているとおりですから、今回の質疑応答で何らかの新しい情報が出たわけではありません。
この物質特許の取扱いについては知的財産戦略の一部でありこれ以上の情報公表は差し控えますが、CBP501は初期適応疾患と想定される膵臓がんを対象としたオーファンドラッグ指定を獲得済みであり、これによる先発権保護(市販承認から7年間)のほうが物質特許による保護よりも長期間有効なことから、CBP501物質特許に関する議論の意義は現時点でほぼなく、「オーファンドラッグ指定による先発権保護」「用途特許によるプロテクト」の2つに集約してお考えいただいて良いと考えています。
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