今日はいつもと毛色の違う話題を。
いつも当社のアナリストレポートを書いていただいているフェアリサーチの鈴木氏は、CBP501関連調査の一環で日頃から世界中の膵臓がん治療薬開発状況をリサーチしておられます。
先日、米国Revolution Medicines社(時価総額100億ドル近い大型バイオ企業です)のKRAS阻害剤が膵臓がん2次治療で有効というニュースがあり、その関係で鈴木氏が同社のIR資料をご覧になっている中で、キャンバスに関する誤情報の記載をみつけた旨のご連絡をいただきました。
確認したところ、資料の中のこの表にCBP501が登場していました。
膵臓がんに関する最近の臨床試験のデータを並べ、「この領域には大きなニーズがある」と説明する表です。
(私たちの説明資料でも同様のことをやっています。いずこも同じですね。)
表の上7つが2次治療、下2つが3次治療の臨床試験データです。
2次治療の1行目に掲げられているNAPOLI 1試験(5-FU+LV+Nal-IRI)は、この臨床試験のデータをもとに、のちにお薬として承認されました。
さて表を見ると、いちばん下の行に、CBP501+シスプラチン+ニボルマブ(オプジーボ)の3剤併用臨床第2相試験結果について
症例数 36例
ORR(奏効率) 6%
無増悪生存期間中央値 1.9ヶ月
全生存中央値 5.1ヶ月
と記載されています。
・・・私たちのこれまでの公表情報をご覧になっている皆様にはたぶんすぐにわかる誤りですが、慣れておられない読者の方にご説明します。
キャンバスが米国で実施した臨床第2相試験は、
第1群:CBP501(25mg/㎡)+シスプラチン+ニボルマブ
第2群:CBP501(16mg/㎡)+シスプラチン+ニボルマブ
第3群:CBP501(25mg/㎡)+シスプラチン
第4群:シスプラチン+ニボルマブ
の4群の試験で、群と群の間の比較を目的としたものではなく、それぞれの組み合わせについて主要評価項目「3ヶ月無増悪生存の比率」を確認するためのものでした。
その結果は下の表のとおりでした。
また、副次的評価項目として、さまざまなデータが得られました
これをまとめたのが下の表です。
(これらの表についてもっと詳しい解説は、当社のブログ 「ESMOポスター発表について解説します」をご参照ください。)
冒頭でご紹介したRevolution社の表では、第1群から第4群までを全部合計した「全体」36例の数値を使ってしまっています。
CBP501+シスプラチン+ニボルマブ(オプジーボ)の3剤併用について表示するのであれば、私たちが十分な用量と考えている25mg/㎡のCBP501を含む3剤併用である第1群の9例だけを抜き出して記載されるべきでした。
同社の臨床試験は2次治療対象なので、3次治療対象であるCBP501臨床試験データについてはついうっかり読み飛ばしてしまったのかもしれません。
冒頭の表に合わせてデータを抜き書きすると、
症例数 9例
ORR(奏効率) 22%
無増悪生存期間中央値 2.8ヶ月
全生存中央値 6.3ヶ月
です。
そこで、勝手ながら修正版を作りました。
https://ir.revmed.com/static-files/87b6dcb4-94c9-4e79-9d8c-d21f2bb7aaafの表の誤謬を赤い文字で修正
そもそも臨床試験はそれぞれ組入基準などの条件が違うので単純に横比較はできず、また症例数も少ないので統計的に意味のあることは言えません。
ただ、手応えとしては、3次治療臨床試験としてCBP501は優秀な成果を上げているといえます。
さらに、以前からお伝えしているとおり抗がん剤治療は1次治療→2次治療→3次治療とラインが進むにつれて効果が出にくくなることがわかっている中で、CBP501の臨床第2相試験データは、見かたによっては、2次治療の臨床試験結果(上7つ)に優るとも劣らないデータであることがわかります。
他社様の資料の誤記載を確認してみたら、改めてCBP501の位置が確認でき、症例数を増やした最終証明試験である第3相試験を実施するべき根拠を再確認できた・・・という、今日はややこぼれ話的な話題をお届けしました。
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