マネジメントブログ

2022年9月27日の質疑応答(1)株主総会

今回からの2回は、2022年9月27日に開催された第23期定時株主総会中の質疑応答と、その直後に開催された(毎年恒例です)株主報告会での質疑応答をお届けします。

今回は株主総会中の質疑応答です。
すべて社長の河邊からお答えしました。

会社の資料によると「金メダルシナリオ」の場合の第3相試験開始時期が2022年中になっているが、現状の考えはどうか。

当社の資料の上では「第3相試験の開始を会社が意思決定して具体的な準備をスタートするのは2022年中」という趣旨で矢印表示しており、現時点で私たちは、その実現可能性はあると考えています。
なお、金メダルシナリオは未だ確定していません。その可能性は相当に高くなっているとお伝えしているところです。

臨床第3相試験の開始にはFDAの許可を取る必要があるのか。

第3相試験の開始にあたって、原則としてFDAの許可を取る必要はありません。
FDAが主に見るのは安全性で、懸念を表明する期限はプロトコール提出から30日間なので、それを待ってスタートするのが業界の標準です。

ただ、ケースによっては、FDAと事前に「こういう概要で試験をします」と合意を取ってから実施する試験があります。
Special Protocol Assessmentといいます。
それを実施するケースの多くは、どの指標で有効性の証明とするかのすり合わせが必要な試験です。
たとえば、抗がん剤の有効性で一番大事なのは全生存期間ですが、がんによっては生存期間のとても長いものもあり、その場合には全生存期間でない代わりの指標(たとえば無増悪生存期間など)で承認を取りに行く場合があるので、事前のすり合わせが必要になります。
ですが、私たちが今回対象としている膵臓がん3次治療は余命の中央値が約3ヶ月という残念ながらとても厳しい状況で、比較的短い期間で有効性を見ることができてしまいますから、全生存期間を指標とする臨床試験となります。
したがって私たちは現時点では、このあと第3相試験を始める前にFDAとのすり合わせは必要ないという考えです。

第3相試験の開始は提携等の獲得を待つのか、それとも先に始める場合もあるのか。

原則として私たちは、良いものであれば一日も早く患者様へお届けするというのが会社始まって以来の理念ですし、今のところ良いものでありそうなデータが出ていますから、とにかく最速を目指しています。
最速のためには自力で進めるのが最も良い方法です。

ただ、この試験で使っている免疫チェックポイント抗体はとても高価な薬剤ですから、自分たちで全費用を調達して進めるよりは製薬企業等との提携などで費用の一部負担を得て進めたほうが経済的な面でも株主の皆さんのご負担の面でも望ましいという考えもあります。
そこは「一番良い方法と一番早い方法とのバランス」ということになります。
現時点でどちらということは申し上げられず、両方の可能性を検討しています。

多少時間を遅らせてでも提携等の話をまとめたほうがいいというような状況になった場合にはそちらを選択する可能性もありますし、逆に、そっちはとりあえず置いておいて第3相試験に入ったほうがいいという判断になる可能性もあります。

直近で株価が急速に上昇しており、株式市場で評価を受けて株価に反映されているということだと思うが、ずっと赤字企業であるにもかかわらずそのような評価を受けている理由について経営としてどう考えているのか。

創薬は、上市して販売して利益が出て初めて現実の価値が生じるものですが、株式市場ではその手前の段階で、期待値が見積もられると考えています。
成功した場合の市場の規模などから見積もられる企業価値が、そこに至るまでの成功確率や時間でディスカウントされます。
その際にどの程度のディスカウントが適切と考えるかは、投資家の皆様それぞれの主観的判断によります。

私たちの場合、企業価値評価=株価の低い時期が続き、株主の皆様にはご心配をおかけしました。
その原因は、私たちの伝え方の不行届もあって開発中の価値が十分に伝わっておらず、成功確率の想定が低いままだったことが挙げられます。
今回、臨床第2相試験で良い兆候が見え始めたことで株価が上がったと認識していますが、その背景は、客観的にもわかる良い兆候が現実のデータとして出てきたことによって、投資家の皆様が成功確率を想定できるようになったことだと考えています。

資本力の劣る当社のような場合、開発にある程度目処が立った時点で、大手製薬企業等との連携や吸収/買収などを検討するのが当然なのではないか。

私たちが一番に考えている最優先事項は「良いものは一日も早く患者様にお届けする」ということです。
提携等によって資金が入って良い面もありますが、一方で、提携したばかりにスピードが遅れることもよくあります。
最適の選択をしたいと考えています。

今回の開示資料で3剤併用投与群のOS・PFSでかなり良さそうなものが出ているが、これは事前の想定どおりだったのか、想定以上なのか。また、2剤併用投与群のほうは3M−PFSは出ているもののOS等に出ていないことについてどう考えているのか。

過去のデータに基づいて統計の設定をして第2相試験を開始しましたが、その際の事前想定にかなり近いと感じています。

3剤併用投与群のOS等については、本来よりも長い数値が見えている時期ではあり、最終的な数値はこのままの数値より低く落ち着くと思っています。
しかしそれでも、他の臨床試験と比べて途轍もなく良いという状況は間違いありません。

2剤併用投与群については、たとえば投与群2−1は、9月20日公表の内容でも過去よりも良い数値が出ています。
投与群2−2は、これまで考えられてきたとおりです。

併用薬剤である免疫チェックポイント抗体は大競争の状況で、それらを持っている製薬企業等が当社のデータを見ればふつうなら早く組みたいと思いそうなものだが、各社の反応などについてどう見ているか。

大きな企業においてはデータの確定を待たれているケースがあります。
現時点で第2相試験のデータはまだ最終確定数値ではなく、大きな企業では「確定数値でない」というだけで話が止まることがよくあります。
また、私たちの成果が小さな規模の試験であるという点は論点として避けられないので、そこからは相手先ごとの交渉になります。
最終データに近いものがそろそろ固まるので、進展を期待しています。

その最終数値とはいつ出るのか。

本当の意味の「最終数値」は、データベースロック(もうこれ以上のデータを収集しないと決めること)の上でまとめられる最終報告書です。
これにはまだ半年〜1年以上かかります。

最後の患者様の投与開始から3ヶ月経過で時期を切る試験も多いのですが、今回の場合、3ヶ月を超えてご存命の患者様がそれなりの人数おられるので、私たちとしてはOSなどをもう少し長く見て良いデータを収集したいという考えもあります。

交渉のためには試験を早く打ち切りたいが、データの収集のためにはもう少し見たい、という状況です。

気の早い話になるが、もし承認され上市に至った場合を想定して、CBP501の生産体制はどうなっているか。たしかNEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)との話があったが、その後どうなのか。

NEDOからの補助をいただいて、CBP501の製造法を改良しました。
承認されても大丈夫な製造法を既に確立しています。

CBP501の上市をお待ちになっている国内の患者様も多い。国内臨床試験の計画はどうか。

国内臨床試験については、良いものであれば一日も早くやりたいと思っています。
そのためには臨床第3相を同時に進めるのが良いということになるのですが、一方で、患者様の生存期間は国によってバラつく傾向があります。
小さい規模の試験では、少数例でもバラつきによる影響が大きく、簡単に「一緒に」とは言いづらい側面があります。

それら障害はいくつかあるものの、いろいろな工夫で、日本の患者様にも一日も早く届けたいと考えています。

3剤併用投与群の副作用はどうか。致命的なものはないということだが、膵臓がんの患者様の場合は1次治療2次治療でさんざん副作用に苦しまれているので、少しの副作用でもつらい。一般的な抗がん剤治療に比べて、副作用は軽いのか重いのか。

副作用については、CBP501単独では、点滴中に痒くなるくらいの副作用しかありません。

シスプラチン単体の副作用(吐き気、腎臓障害など)はありますが、シスプラチンの設定投与量が通常より低めであることに加え、さらに減量している患者様でも良いデータが出ている例もあり、一般的な抗がん剤治療に比べて軽めの副作用にとどまっていると考えています。

白血球数の上限を決めたので特許が延命されているという説明だが、それで本当に排他性が維持・延命できるのか疑問。回避する方法はたくさんありそうだが、防ぐ作戦はあるのか。

物質特許が切れるというのは製薬企業等との交渉の足切りにありがちなので、それは必ず受けるご質問です。

白血球数の特許について、我々の目論見としては、「白血球数1万以上の患者様には投与してはいけない」という禁忌ラベルの獲得を考えています。

これを獲得できた場合には、仮に他社がジェネリックで製造できたとしてもその会社はラベルに同様の文言を書かざるを得ず、当社の特許に抵触します。
同じ文言を書かないためには、その会社は改めて上限を変えた臨床試験を実施しなければなりません。
少なくとも米国・欧州では強い排他性があると考えています。

また、新薬の場合には、特許とは別の排他期間が設定されます。

投与群2−1で3M−PFSが2名出ていてステージ2の要否判断に時間がかかるということだが、いつ頃までか。

遅くとも年内目処とお知らせしています。
それまでの間でも、今後開催する安全性委員会の意見、科学顧問会議(SAB)への諮問をもとに当社取締役会で判断するケースも考えています。
なお、SABチェアマンのDr. Von Hoffは、特に膵臓がんが専門です。

今回の臨床試験でCBP501の用量違い投与群が設定されているが、FDAに言われたからと言ってホイホイとやったのはいかがなものか。本当にやる必要があったのか。

FDAに言われて無条件に「はいわかりました」と実施したわけではありません。
実際、FDAに言われてもやっていないことはいくつもあります。

ご質問の用量の異なる投与群の設定は、私たちとしてもFDAの意見に同感で採用したことです。

フェーズ1b試験で、16mgの投与を受けた人の効果がとても良かった事例が1−2例ありました。
そのため、どちらが良いか本当のところはわからないと私たち自身も考えていました。

また、フレミングの2ステージデザインは統計的には確立しているものの、感覚的に「9例だけで早期有効無効中止が決まる」という点への不安定感もあり、CBP501を含む3剤併用投与群が複数あることには意味があると考えました。

CBP501の用量が少ないほうが良いかもしれないわけだが、その場合にはどんな説明があり得るのか。また、仮に良いほうが用量の少ないほうの群だったとしたら、第3相試験は少ないほうの用量で実施するのか。

CBP501の薬効メカニズムであるカルモジュリンへの効果自体は、血中濃度から計算すると7.5mg/m2で十分であることがわかっています。

ただ、用量に応じた効果の上がり方は、多くの薬剤のようなゆるやかな上がり方でなく、途中で急速に立ち上がる特徴があります。
また、血中濃度はわかっても、腫瘍組織の中でどうなのかはわかっていません。
したがって、どちらが良かったとしてもあり得ると考えています。

第3相の用量は、群数の設定も含めて、今回の結果も見ながら総合的に判断します。

CBP501は副作用がわかりやすいという話だが、第3相試験は二重盲検にするのか。

第3相試験はオープンラベルで実施するつもりです。

4つの投与群から出てきている現時点のデータは、理論的に説明がつくのか。

群が特定できないように開示しているので詳細なご説明は差し控えますが、いまのところは理論的に想定される状況に近いと考えています。

生存期間の長い患者様はどういう現状なのか。ずっと入院しておられるのか。

私たちの臨床試験はすべて外来です。
投与(点滴)や検査の日に通院される以外は通常に生活されています。