マネジメントブログ

2022年9月27日の質疑応答(2)株主報告会

昨日のブログで公表した株主総会中の質疑応答に続いて、今日は総会後の株主報告会での質疑応答をお届けします。
回答者は河邊と加登住です。

株主報告会で投影された資料動画もぜひご覧ください。

最近の会社説明資料から、承認・上市後の市場規模や利益規模のイメージの説明が減っている。せっかく第2相試験の成功や第3相試験への進行、そして上市も見えてきている時期なので、そういった説明も増やしてほしい。

(加登住)ご指摘ありがとうございます。
総会中の質疑にもあったとおり、現時点での当社のような企業価値評価は「将来実現する利益」が「成功確率」「時間」などで割り戻されたものですから、ご指摘いただいた点は掛け算のもとになる数値でありとても重要です。
全体の分量の中でのバランスもありますが、会社説明資料の改善に努めます。

身内の医師にヒアリングしてみたところ「有望だね」「しかし今後の開発の資金手当は大変だよ」という回答があった。その点を考えるとやはり大手との提携は必須なのではないか。

(加登住)株主総会中の質疑応答にもあったとおり、最も速く開発を進めるために一番良い方法は何か、一所懸命に考えながら進めていきます。

提携等の獲得にも一長一短があり、提携をしたばかりにスピードが落ちた・方向性を変えられてしまったなどの話も跡を絶ちません。
提携をするにしても、どのような主導権の握り方・握り合い方が良いのか、その条件はどうするのか、など、そう簡単に一筋縄にいかないものであり、私たちとしてもあまりシンプルに「提携が最善です」とは言えない状況です。

最適な方法が何なのか、今後も常に考え、その決定を公表したときには株主の皆様からどう突っ込まれても「これがベストです」と胸を張ってご報告できるような選択をしたいと思っています。

質問というより要望。少人数で広告宣伝というわけにも行かないのだろうし、広報はよくやっていると思う。一方で、まだわかりづらい。適時開示や投資家リレーションに難解な専門用語が多く、もっと子供でもわかるような説明を心がけてほしい。また、インフルエンサーを活用するなども検討してほしい。

(加登住)国内で臨床試験をやっているわけではないこともあって、いわゆる広告宣伝というのはやらず、証券市場での株主・投資家の皆様との対話という範囲でリレーションを進めています。

現状の株価は、実際に開発が進んだ事実がそのリレーションと噛み合ってご評価いただいたのだと考えていますが、個人的には満足できる水準とは思っておらず、しっかりとご評価いただけるように、これまで以上に徹底していきます。

また、用語が難しいというご指摘ありがとうございます。
今後もさまざまな工夫を続けてみます。

インフルエンサーの活用というお話がありましたが、実は株式系Youtuberの方から対談等で出演するお誘いをいくつかいただいています。
興味を持っていただく範囲を拡げる面もある一方で、表面的・短期的な情報で動く投資家の方々中心になるのもあまり健全ではありません。
今日お集まりいただいて熱心にご質問いただいている皆様と同じようにリスクもしっかり把握した上で、皆様と同じ目線で投資していただける株主様を増やすことにつながるよう、留意しつつ進めていきます。

さきほどの説明で、第3相試験を盲検試験でなくオープンラベル試験とするつもりというお話だったが、用語も含めてもう少し詳しく説明してほしい。

(河邊)オープンラベル試験というのは、患者様も医師もどの薬剤が投与されているかわかっているタイプの試験です。
今回、将来の第3相試験はその方法を考えています。

最終試験なので、対照群(コントロール群)はあります。
現時点で想定しているのは、「医師の最適選択」です。
Physician’s Best Choiceと英語で言うのですが、医師が選ぶ最適の現存治療との比較です。

群数は、最少の場合は「医師の最適選択」と私たちの3剤併用投与の2群、ひょっとしたら3群になるかもしれないことを、先日公表しました。

そのPhysician’s Best Choiceというのは、費用は誰が負担するのか。

(河邊)臨床試験特有の検査項目などについては私たちの負担ですが、そうでない標準の治療で使われる部分の費用については原則として私たちの負担ではありません。

現在進行中の臨床試験もそうなのですが、たとえばCT検査で言うと、私たちの試験の設定は6週に1度です。
それと同じ6週間隔でのCT検査をスタンダードとしている施設の場合には、私たちはCT検査費用を負担していません。
ところが「当施設のスタンダードは8週に1度だ」という施設の場合には、私たちの設定に合わせて6週に1度にしていただく代わりに、私たちがCT検査費用を負担します。

また、医師の最適選択の場合は既存治療になるので、そこで使われる抗がん剤の費用は基本的に私たちの負担ではありません。

その「医師の最適選択」を、わざわざ3剤併用投与と同じ数やって比較するのか。過去の試験と比較するなどはできないのか。

(河邊)はい。臨床試験というのは、臨床試験ごとの比較をしてはいけないという大原則があります。
理由は、臨床試験には入っていただく要件(組入れ基準など)がいろいろあり、それが少し違うだけで数値が大きく違ってしまうからです。
なので、特に最終試験では、まったく同じ試験にまったく同じ要件で入っていただいて、ただ投与する薬剤だけがくじ引き(ランダマイズ)で決まるような状態で、比較試験をします。

蛇足ですが、今回の臨床第2相試験は、まったく同じ要件で4つの群に入っていただいたので、過去の情報を手元で再確認できたのも収穫のひとつです。

オープンラベル試験の場合、新薬であるCBP501に期待して応募されたのに違う群に当たってしまった患者様には精神的にダメージが有るのではないか。

(河邊)はい、おっしゃるとおりです。
これは患者様や周囲の人たちに臨床試験の基本的な考え方がしっかり根付いていないとできない試験だなと私たち自身も感じています。

基本的な考え方というのは、
「承認されていない薬剤の臨床試験なのだから、どんなに期待されているものであっても投与群と非投与群のどちらが良いか予測できない」
ということです。

どちらが良いかわからないから試験をしているわけです。
実際に、抗がん剤の臨床試験は多くが失敗していますから、それらの試験では非投与群のほうが良かった、あるいは変わらなかったということです。
つまり、試験をしているということは、その複数の群のうちどれが一番いいかは、効果に関しても副作用に関しても決まっていない・わからないということです。

とはいえ、現実には「新薬のほうに当たると期待していたのに」ということで非投与群から離脱する患者様も発生します。
離脱は自由で、別の治療に行かれても良いのです。
その場合、私たちは、その患者様の全生存のデータだけいただくことになります。
その患者様として最善の治療を受けていただいて、その生存期間よりも良ければ、私たちの投与群に効果があったということになります。

第3相試験は、少ない場合で各群何名くらいになるのか。

(河邊)これはとても重要で、試験規模の見積もりの正確さが求められます。

規模を大きくすれば、小さな差も統計的な有意差として証明できます。
差が大きいのであれば、とても小規模な試験でもそれを証明できます。
真実の差がどのくらいあるのかを見積もることで、必要な試験規模が決まります。

たとえば、いま手元にある臨床第2相試験のデータにはとても大きな差がありますから、これをもとに必要な試験規模を算出すると、かなり小さな規模で大丈夫という数字が実際に出てしまいます。

とはいえ、あくまでも少数のデータに基づく計算ですから、その規模で本当に第3相試験をやってしまったら外れてしまうかもしれません。
なので、念のための安全域をどこまで見るかの判断が必要になります。
予算の潤沢な製薬企業等であれば、そのあたりの細かいことを気にせずに600人とか800人の規模の試験にするところですが、私たちの場合そういうわけにはいきません。

また、もうひとつの要素として、副作用のことがあります。
あまりに小さな規模の試験だと、頻度の少ない副作用を見つけることができません。

ということで、具体的な数字はお話しできないのですが、私たちとしては、副作用を見つけることができる規模に留意しつつ、できるだけ小さな試験を組みたいと思っています。

第3相試験で時折、複数回に解析を分けて必要に応じて増やしていくような方法を見かけるが、当社でそのような形を採用する考えはあるか。

(河邊)そのような方法もありますが、ご質問いただいた方法が最善というわけではありません。
たとえば、最後にまとめて一度統計解析をするのであれば有意差のハードルはp<0.05ですが、解析を複数回に分けて有意差が出るまで追加するという方法だとその回数だけチャンスが増えることになってしまうので、それを補うために1回ごとのハードルをかなり高くしなければなりません。
さまざまな方法にそれぞれ一長一短があり、幅広く検討していきます。

第3相試験の規模をたとえば400名としたとき、予算としては40〜50億程度ということになりそうだが、その程度であれば大手製薬企業等との提携などせず増資して自力で進めたほうが、患者様には早く届くのではないか。

(加登住)自前で進めたほうが速くなりそうだという点については、まったくおっしゃるとおりです。

少し話が逸れます。
よく「日本のバイオベンチャーの臨床試験の成功率は米国などより低い」と言われるのですが、実はそれは間違いです。
臨床試験の数で見たとき、成功率は日米に大きな違いはなく、どちらかというと日本のほうが、成功率が高いのです。
それなのになぜ日本のバイオベンチャーの成功率が低いという印象を投資家の皆さまが持っておられるかと言うと、それは薬剤候補単位でご覧になっているからです。
言い換えると、ひとつの薬剤候補で承認を取るために何本の臨床試験を組むかの違いです。
要は物量作戦ですね。
ひとつの薬剤候補で3つや4つの臨床試験を実施してその中のひとつが当たれば、承認を獲得でき、そのあとは一点突破全面展開で適応を拡大していくことができます。
その場合、臨床試験単位で見たときの成功確率は25%とか33%ですが、薬剤候補単位で見ると100%の成功です。

当社に限らず日本のバイオベンチャーは一般に資金量が小さく、どうしても「どうやって1本の臨床試験を成功させるか」という発想になりがちです。
提携をしていてもそうだし、ましてや自前の資金調達で進めるとなるとなおさらです。
開発支出で上場後も赤字を10年20年続けている間にも億ドル単位で証券市場からの資金調達を続ける米国のバイオテクが、いま私たちが持っているのと同じデータを持っていたとしたら、大手との提携がなくても、おそらく500〜600人規模の臨床第3相試験を数本やるだろうと思います。

話を戻します。
現状の当社がそういう戦略をとることはできません。
仮に市場から調達させていただけたとしても、やや小規模の臨床第3相試験1本分の資金でしょう。
そういった制約の中で、どの方法が可能性が高くてスピードも速いのかを考えていかねばなりません。

また、昨年もお話ししましたように、会社が得る利益は第一義的に、投資してくださっている株主の皆様のものですから、成功したときの取り分がどうなるのかも十分に考えねばなりません。
たとえば製薬企業等との提携で一時金を受け開発費を全部ご負担いただいて上市後のロイヤリティ25%としたとき、キャンバスすなわち株主の皆様の取り分は、一時金で得る一時的な安心や開発費負担の軽減と引き換えに、初めから1/3や1/4に目減りしていることになります。

こういった点も含め、本当にたくさんの比較軸による検討をこれからしっかりとやっていかねばなりません。
意思決定のたびに株主・投資家の皆様ときちんと情報を共有し、納得性のある選択をしてきたいと考えています。

オーファンドラッグやファストトラックの指定に乗ったりはしないのか。

(河邊)そもそも患者数からして、オーファンドラッグ指定は得られると思います。
ファストトラックについては現状まだわかりません。

FDAで承認された場合、その後PMDAに入るときの時間差などの感触はどのようにお考えか。

(河邊)米国だけで臨床第3相試験を進めたほうが費用も少なくスピーディに進むと考えているのですが、そうやって米国で承認に至った場合、PMDAからは日本の患者様での臨床試験を要求されると予想されます。
その場合の時間軸は現時点ではわかりません。

臨床第3相試験の最初のパートというのはどんなイメージか。

(河邊)たとえば600人規模の試験であれば、おそらくパート1として少人数の試験をすることをFDAから要求されると思われます。
末期がんの患者様に対して安全性も見ずに何百人もの試験をすることはまかりならん、たとえば100人くらいの規模でとりあえず安全性を見ろ、と言われることはありそうです。

ただ、それを必要とするような規模の試験をするかどうか、そこまでの規模は必要ないとデータが言っているかどうかにかかっており、それは現状ではまだわからないところです。

臨床第3相試験に進んだ場合、進捗やイベント情報の開示はどのようになり、我々投資家はどのように情報を得ることが出来るのか、まだ決まっていないとは思うがイメージを知りたい。

(加登住)情報開示や投資家リレーションの責任者として気にかかっているのは、臨床第3相試験となると情報の開示にかなりの制約を受けるであろうことです。
実のところ、おそらく皆様ご想像のとおり、現在ご覧いただいている臨床第2相試験の情報開示はかなりギリギリのやんちゃをしています。
第3相試験でまったく同じようにできるかと言われると、正直なところ懐疑的です。
少なくとも、お約束はできません。

ただ一方で、「第3相試験が始まったのでもう情報は一切出ません」「ひたすら終了までお待ちください」「ご期待だけは維持してください」というのは、株主の皆様にとって大変に酷な話であることも認識しています。
何をどのように情報として出せるのかを、これから真剣に考えていきます。
少なくとも、第2相で実際にやってきたように、株主の皆さんのご不安に応えるために出せるギリギリまで情報を出すつもりであることは、この場で表明しておきます。