マネジメントブログ

今回の資金調達

今日公表したとおりキャンバスは、転換社債型新株予約権付社債と新株予約権による資金調達を実施することを決議しました。
(別紙に1文字だけ誤字があり修正開示も実施しています)

今日のブログでは、この資金調達の狙いや特徴をご説明します。

今回の資金調達の狙い

今回の資金調達のおもな目的は、CBP501臨床試験(フェーズ1b試験)の拡大相試験のための資金を調達することです。

米国での順調な臨床試験進捗をお伝えしているCBS9106の日中台韓地域でのアライアンスや次世代化合物群に関するアライアンスももちろん大切ですが、キャンバスにとって現在最も大切なテーマは、CBP501について製薬企業等との提携を獲得し、後期臨床開発の手立てを整えるとともに財務基盤を強化することです。

そのためには、現在進めているフェーズ1b試験の初期段階で得ている手応えをより確かなものとして示していくことが欠かせません。

抗癌剤の開発においては、第1b相試験の前半で主に安全性を確認しつつ薬効の手応えのある癌腫を選び、その癌腫に絞り込んで薬効を探る「拡大相試験」を第1相試験の後半に実施するという手法が多く採用されています。
CBP501のフェーズ1b試験でもこの手法を計画しています。
(キャンバスがCBS9106をライセンスしているStemlineも同様の手法で臨床第1相試験を進めています。)

そこでキャンバスでは現在、
・フェーズ1b試験前半の安全性確認フェーズをしっかりとクリアすること
・拡大相試験の対象癌腫の選定を判断するために必要なデータを獲得すること
・CBP501の魅力を十分に示す拡大相試験を実施すること
を目下の最大の課題としています。

そのために当面必要な資金を調達するべく、今回の資金調達では総額の1/4ほどに当たる209百万円を社債(転換社債型新株予約権付社債)で調達します。
単純な新株予約権の発行では行使が進捗しなければ入金がありませんが、この社債の払込金額は社債発行日に全額が払い込まれ、当面必要な開発資金に充当することができます。
(その代わりに、この社債に付いている新株予約権が行使されるときには新しい資金が入金されず、社債の残高が減るだけになります。)

総額の3/4ほどに当たる約602百万円分の新株予約権は、株価が行使価額(修正条項についてはあとでご説明します)を上回った状態で行使され、そのときに順次資金が払い込まれます。
このような社債と新株予約権の組み合わせや比率は、当社の今後の資金需要と概ね連動するように設計したものです。

資金調達手法の特徴

今回の資金調達にはいくつかの特徴があります。
今日のブログでは、独特な行使価額修正条項についてご説明します。

まず、行使価額の修正は自動的に発動せず、キャンバスの取締役会の裁量で実施されること。
一般的な行使価額変動型新株予約権は、日々の株価に連動して行使価額が自動的に変動し、発行した会社の裁量の余地がありません。
今回の場合、たとえば株価が下落し過ぎてしまっているときには、会社の裁量によって行使価額の修正を見送ることができます。
低すぎる行使価額での調達は既存株主にとって大きな懸念材料であり、会社の裁量でこれをある程度食い止めることを可能にしています。

その性質をさらに実効性あるものにするために、行使価額の修正頻度に縛りを設けています。
発行から6ヶ月経過した翌日以降にならねば最初の行使価額修正ができず、2回め以降も6ヶ月超の空白期間を空けねばなりません。
これだけの空白期間があると、会社が行使価額の修正をするときにはかなり慎重な判断が求められます。
一方で、(あまり想像したくないケースではありますが)もし株価が低迷を続けてしまった場合に行使価額固定型だと二進も三進も行かなくなりますが、6ヶ月の空白期間を空ければ行使価額の修正ができる今回のしくみであれば、苦渋の決断として行使価額を修正して資金調達を促進することもできます。
つまり、行使価額固定型と行使価額変動型のいいとこ取りを目指した設計となっています。

また、下限行使価額が比較的高いのも特徴のひとつです。
下限行使価額とは、行使価額を下方修正した際に「これ以上は下げられない」というラインです。
一般的には当初の行使価額(今回のであれば634円)の半額をやや上回る程度に設定しますが、今回のキャンバスでは「500円」としました。
つまり、キャンバスがどんなに(希薄化と引き換えに)資金調達をしたくても、行使価額を500円未満にすることができないルールです。
これによって、既存株主の利益を損なうような希薄化への懸念にひとつの姿勢を示しているつもりです。

まだ続きますが…

ご説明したいことはまだまだあるのですが、あまりに長くなりすぎそうなので、公表当日に皆様に知っていただきたいところだけに絞って一旦キーボードを休めます。

これから引き続いてブログでもご説明していきますし、ご質問(ツイッターも歓迎です!)にもお応えしていきたいと思っています。

とにかくお伝えしたいのは、
「今回の資金調達は知恵を絞って設計し、当社にとってベストのタイミングで実施しました」
ということです。
それをお伝えするためにはこれからも字数を惜しまない所存です。

最後にお詫びを。
このファイナンスの準備作業や、行使価額決定への影響への懸念から、6月はブログの更新を控えていました。
これから以前の頻度へ戻しますので、どうか悪しからずご了承ください。