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CBS9106を巡る最近のできごと

今朝のプレスリリースのとおり、キャンバスが創出した抗癌剤候補化合物CBS9106(SL-801)について、Stemline社が米国臨床癌学会(ASCO)でポスター発表をすることになりました。

Stemline社がASCOで途中経過を報告する臨床試験は、SL-801を初めてヒトに投与している試験です。
動物実験などから計算された安全と考えられる低い投与量から少しづつ投与量を増やしていき、薬剤の安全性(毒性)を見極めながら、治療に適当と思われる投与量を探索します。

投与の対象は、手術適応でない局所固形癌や転移のある固形癌、標準療法を受けたものの再発した固形癌の患者さんです。
他の抗癌剤とは併用しない、単剤の試験です。

最初は、
「5mg/日を4日間投与して3日間休薬というスケジュールを2週間続けた後、1週間休む」
が1サイクルというものでした。
その後少しずつ投与量を増やし、現在は第9集団(コホート)55mg/日が、同じスケジュールで投与されています。

今年1月6日時点では、安全性に問題なく29%の患者さんに病状安定(SD)がみられたと報告されています。
6月4日の発表では、もう少し進んだ途中経過が報告されるでしょう。
私は、これまでのところ順調な進捗であると考えています。

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CBS9106に関連して、もうひとつニュースがあります。

つい2週間ほど前のことですが、去る5月1日、SL-801と同じ標的(XPO1)に作用するSelinectorの臨床開発をしているカリオファーマ社が、STORMと名付けた臨床試験第2相の結果を速報しました。
勝利宣言のような発表でした。

この試験は、多発性骨髄腫で、かつ、Lenalidomaide・Pomalidomide・Bortezomib・Carfilzomib・Dartumumab という5種類の比較的新しい抗癌剤のすべてに抵抗性の患者さん122名に対し、SelinectorとDexamethasoneの2剤併用療法を行ったものです。

この結果、25.4%の患者さんに奏功が見られ、うち2名は完全奏功だったそうです。
また、奏功期間は現時点で4.4ヶ月で、まだ伸びる可能性があるといいます。

カリオファーマ社によると、Calfilzomibが承認された際には2種類の抗癌剤に抵抗性の多発性骨髄腫患者さん(今回の臨床試験の対象である「5種類抵抗性」よりも治療に反応しやすいと考えられる)で奏功率22.9%という試験結果をもとにFDAの迅速承認を獲得したので、このSTORMの結果をもとにFDAから迅速承認を得られる可能性は高いと思う、とのことです。
同社は、今年の後半にFDAに、そして来年早々EMAに、それぞれ迅速承認の申請をする予定としています。
ちなみにSelinectorの投与量は80mg/日を週に2回だそうです。

カリオファーマ社はこの試験以外にも、この試験と同様のデザインの第3相試験、複数の抗癌剤との併用試験や固形癌に対する試験など、数多くの臨床試験を行っています。
この試験によって最初の承認が見えて来たのは、彼らにとってとても嬉しいことに違いありません。

この話は、同じ標的に作用する競争相手であるCBS9106(SL-801)にとっても、良い話です。
XPO1がヒトの癌の治療のための標的として意味があると確定するからです。

一番を走るのはもちろん素晴らしいのですが、これまでに薬剤ができたことがない標的を追いかけている間は、「それで薬になるという保証はないね」と言われてしまいます。
カリオファーマ社が莫大な資金と労力をかけて、多くの試行錯誤を積み重ねてここまで進んだことに、敬意を表したいと思います。

お陰様でCBS9106(SL-801)は、カリオファーマ社のたくさんの臨床試験のデータも参考にしながら、より効率の良い臨床開発が出来ることになります。
また、CBS9106の日本・中国・台湾・韓国における権利に関する提携獲得活動にも好影響が期待できます。