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【IR対談】いちよし経済研山崎氏(第1回)「こだわることがベンチャーの存在意義です」

2019年03月22日 15:00

河邊 拓己

長年にわたり一貫してバイオベンチャー業界のトップアナリストとしてご活躍中のいちよし経済研究所首席研究員山崎清一氏とキャンバス河邊の対談を、3回の短期集中連載でお届けします。

山崎清一氏

《山崎清一氏プロフィール》
安田生命(現明治安田生命)の投資部門で医薬品セクターを中心にアナリスト業務に携わった後、2000年いちよし経済研究所入社。同年から一貫して、バイオベンチャーを専門に調査する証券アナリストとして活動中。
日経BP社『バイオベンチャー大全』「株式上場直前・上場後に気を付けるべきこと」
日本経済新聞社連載『目からウロコの投資塾』「変わるバイオ銘柄」「バイオ業界の新潮流」
日本経済新聞社連載『なるほど投資講座』「検証バイオVB株」
毎日新聞出版『がんは薬で治る』(2016年10月10日発行)「免疫療法薬の進化を後押し 日本のベンチャーの創薬技術」
ほか、バイオベンチャーをテーマとした講演、テレビ出演、雑誌原稿執筆など多数。

逆境でもブレなかったキャンバス

(キャンバス河邊(以下河邊))
本日は貴重な機会をありがとうございます。

(いちよし経済研究所山崎氏(以下山崎))
こちらこそありがとうございます。
今回この企画のお誘いをお受けして、私自身も過去を思い返して「いろいろあったなあ」などと改めて考えていました(笑)

(河邊)
本当に長いお付き合いになりますね(笑)
おかげさまでキャンバスは今年で上場10年になるのですが、山崎さんにはその前から大変お世話になってきました。
まだキャンバスが上場はおろか武田薬品さんとの提携もできていない2005年に大規模なVCファイナンスを実行したとき、いちよし証券さんに山崎さんというかたがおられるということでお引き合わせいただいたのが確か最初のきっかけですから、もうかれこれ15年になります。
そんな経緯の中で、ずっと業界のトップアナリストとして続けておられる山崎さんの目からご覧になって、キャンバスという会社はどのように映っているのでしょう。
他のベンチャーとの比較なども含めて、ぜひ忌憚なく。

(山崎)
ここはヨイショする話でもないと思いますから(笑)、正直ベースで語らせていただきますね。

(河邊)
はい、ぜひ(笑)

(山崎)
上場前からのお付き合いの中では何と言っても、2007年の武田薬品さんとの提携、あれはやはり凄いインパクトがあったのを今でも覚えています。
ある面、感動ものだったと言っても良いくらいです。
私がずっと統計をとっている日本のバイオベンチャーの提携件数にも現れているのですが、だいたい提携が盛り上がってくるのが2008年以降なんです。
その前というのは、年間1件あるかないか、そんな状態でした。
その中で、しかもその当時G2チェックポイント阻害剤という呼び方だったと思うんですが、非常に新規のメカニズムの抗癌剤で、なおかつ日本トップの製薬会社である武田薬品さんとの提携と、非常にピカピカでした。
「でした」というのは語弊がありますが(笑)

(河邊)
いえ、おっしゃるとおりです。

(山崎)
その意味で、大いに期待をした次第です。
やっとこういう日本のトップ製薬会社から認められる日本の創薬ベンチャーが出てきたかと、そんな印象が強かったのは事実です。
ただ残念なことに上場後、武田薬品さんとのまさかの提携解消というのがあって、正直言ってショックでした。
「あちゃー」という感じを持ったのを今もはっきり覚えています。
その後も、臨床第2相試験の結果が出る段階では、まず悪性胸膜中皮腫が上手く行ったものの、期待された非小細胞肺癌のほうは今ひとつという結果でした。
その後なかなか武田薬品さんに代わる新たな提携が思うように獲得できずということで、大変苦戦された。
そこから今日までCBP501の提携ができていないというのは残念というか、歯がゆく思っています。
さらに資金的な面で、本当に事業の継続が大丈夫かなという不安・心配もありました。

(河邊)
確かに大変な時期でした。

(山崎)
ただ一方で、キャンバスさんのひとつの特徴がきれいに現れたのが、その後の推移だったと思っています。
自分たちの見出した開発シーズを、大変大事にされている。
ぜんぜんブレずに、そこを頑固に取り組んできている。
そこがひとつ、キャンバスさんの大きな特徴かなと感じてきました。

(河邊)
そこは私たちもとても大切にしているところです。

自社シーズにこだわったベンチャーが成果を見せ始めた

(山崎)
去年でしたか、アルナイラムのsiRNA医薬が世界で初めて承認されました。
最近では、日本でアンジェスさんが20年間も粘りに粘ってきたものが条件付き承認とはいえ承認という形に至った。
ベンチャーが本当に粘ってきたもの・自分たちのこだわってきたものが、ようやく成果を見せ始め、日の目を浴びてきている。
このところ、そういうのが最近目立ってきているように思います。
これがひとつの流れかなと。
遺伝子治療などもそうで、7-8年くらい前は完全に遺伝子治療なんかプロジェクトとして死んでいましたよね。
ところが、遺伝子治療に賭ける皆さんは、ずっとこだわってこられました。
日本ではタカラバイオさんなどもそういうお立場だったと思うんですが、仲尾社長さんと先日話したところ、「以前だったら『なぜこんな変なことやってるの』と皆に思われていたものが、いつの間にかフォローの風が吹いてきました」「やはり粘るだけ粘ってみよう」と。
ですので、本当に良いシーズだと思ったならばとことん粘っていく。
それがいろんな成果を出すというのが、このところ散見される気がします。
ぜひキャンバスさんには、その一社になってほしいなと。
別にこれはヨイショしているわけでなく(笑)、本当にそう思います。

(河邊)
それは「日本のバイオ産業全体のためにも」というエールですね。

(山崎)
おっしゃるとおりです。
今回のアンジェスさんのケースなどは良い例なのですが、自分たちで持っていた「自社シーズ」、これがかつては一度申請したけれど弾かれたなどということが起きながら、あるいは提携が一度は解消されたような大変苦い思いをされながら、なんとか申請にまで漕ぎ着けた。
自前のものをあそこまで持っていったというのは、皆さんにある種の感動を与えました。
さらに、この数年間、日本のバイオベンチャーの開発の失敗が比較的相次いでいたんですよね。
そうすると皆さんとしては、
「日本のバイオベンチャーの持っているシーズは本当に大丈夫かな」
と不安になるわけです。
いわゆるサンバイオショックもあり、皆さんがガクンと来ていました。
けれどその中で、アンジェスが20年踏ん張ったものが成果を見せた。
そのことが、皆さんがガクンと来ていた暗い雰囲気を上手く払拭してくれました。
まさに独自シーズの承認ですから、正直私もホッとしました(笑)
おかげでその後のバイオ各社の株価も、サンバイオショックの影響をクリアしたような形で、全体的に戻しに入ったようなところはありますね。
やはり自前のシーズをモノにするというのは、特に日本のバイオベンチャーの場合は非常に重要な点だろうと思います。
日本人の力で生み出されたものが世に出る、そういう事例をもっとたくさん見たいと思っています。
そんな中、まさにキャンバスさんのシーズはそのド真ん中です。

大手と同じことをやるなら「ベンチャー」ではない

(河邊)
そこはまさにキャンバスもこだわっているところです。
研究者としてもそうなんですが、研究をしていると壁にぶつかって、そんなときに他の人が割と軽く良い論文を書くのを目にするとついそっちに飛びつきたくなります。
けれども、いま簡単に行っているのはそもそもその領域を以前からやっていた人がやっているのだし、外から簡単に飛びついていくと当然また壁にぶつかります。
だからやはり、自分たちでやってきた領域の壁をしっかり乗り越えるように前にしっかり進めるというのが、研究においても大変重要なことだと思っています。
実際、当社の研究チームの中でも、僕自身もそうですが(笑)、壁にぶつかると他の・・・CAR-TがいいかもしれないとかsiRNAが良さそうだとか、グラグラします。
けれども、軽く良いと思うようなものは自分たちにとってはやはり違っていて、自分たちが突き詰めてきた領域を突き詰めるべきだと考えています。
何と言っても自前のシーズは、良いところも悪いところも一番たくさん知っているのは自分たちです。
たとえばCBP501については、私たちが世界の最先端です。
基礎知識もデータもいちばん持っている。
だから自分たちが正しいと思っているうちは、やはりそれにこだわって行くべきだと思います。
むろん、それにプラスして、視野は常に広く持たねばならないし、必要なときには新しい領域に挑戦するのをためらってはいけないと思うんです。
ただ、軽く飛びつくのはやはり間違っていると思うし、研究者としても経営者としても、そういうつもりでやっています。

(山崎)
まさにそれが「ベンチャーらしさ」ということじゃないかと思います。
既存の製薬会社であれば、どちらかというと切り捨て型・消去法的な開発がよく見られるところです。
ちょっとやってみて失敗しそうだったら「あ、こりゃダメだ」ということで、より不確実性の少ないもの・リスクをなるべく取らないということでやっているわけですけれども。
それと同じことをやっていたら「ベンチャー」じゃないですからね。

(河邊)
そうですよね。

(山崎)
リスクを取っても新しいものをなんとか意地になって成功させていく。
古いところではアバスチンなどもそうでした。
最初の試験はあまりうまく行かなかったけれど、どういう形にしたらこれがうまく使えるものになるのかといろいろ試行錯誤するわけですよね。
結局うまく併用療法という形にたどり着き、今や何千億の売上になっている。
そこがやはり「ベンチャー」でしょう。
たぶん一般的な製薬企業さんだったら、臨床試験がダメでしたということになると「もうこれはいいや」となって次に進んじゃうんでしょうけれど、ベンチャーはそうはいかない。
限られたシーズをなんとかモノにしていきたい。
経営資源も限られていますから、あっちこっちいろんなものに手を出すのも難しい。
ですから、自分たちが一番の強みとする領域をより深く掘り進めることで製薬企業との違いを出していくという、まさにそこが「ベンチャー」の存在意義だと私は思います。

懐疑的に客観視する目も大切

(河邊)
一方で、自分が研究の中心となってやっていると、やはり独りよがりだとか、ドン・キホーテ的な「これが絶対正しい」と思い込んでいるだけで間違っているとか、そういう状況である可能性もあるのですね。
意識して自分なりに検証しているつもりではあるんですけども、どうしても研究チームのメンバーは基本的に自分より年下になるので、彼らは本当に本心を言っているのだろうかと(笑)、それダメだよと本当は思っているけれど渋々従っているんじゃないだろうかと、そういうことは常々気にはなっています。
自分ではこれが正しいと思って今やっているんですが、心のどこかで、本当に自分は間違っていないだろうかと、それはいつも意識するようにしています。

(山崎)
過去20年近くの間たくさんのベンチャーを見てきていますけれども、特に2000年代の最初の段階などはそれで上手くいかなくなるケースが多かったですよ。
大学の研究者だった方がそのまま社長になり適切な牽制もないまま進んでしまったケースなどでは、やはりどうしても自分の研究成果がもう世界一だと思ってらっしゃる。
もちろんそれは自信として良いんですけれど、もう一方で、それを懐疑的に客観視する目というものが組み合わされることが、形として一番良いのだろうと思います。

第2回につづく)

※この対談は2019年3月19日に行われたものです。できる限り正確を期していますが、内容の完全性・正確性を保証するものではありません。また、この対談記事は当社および業界等に関する情報の提供のみを目的としたものであり、売買の勧誘を目的としたものではありません。

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