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年末所感

2015年12月29日 12:15

河邊 拓己

(今回は、前回の話題からの続きでもあります。)


ある抗癌剤候補化合物を評価する際に大事なことは、比較的単純なマウスの癌を治療する実験結果だけではなく、また、わかりやすい単純なシグナル伝達系の阻害実験結果だけでもなく、実験結果の全貌を注意深く観察理解し、まだわからないことへの想像も含めて、科学的評価をすることだと、私は考えています。
そして、さらに重要なことは、ヒトでの臨床試験でのあらゆる事象を注意深く観察・解析し、そこから、どれだけたくさんの事を学ぶかということだと思います。
近年の細胞生物学や分子生物学が発達する以前には、良い薬を見いだすうえで、この臨床的観察がもっとも大切なことの一つだったはずです。

臨床試験の「後解析」と言った時点で、話を聞かなくなる人が大勢います。

臨床試験をする際には、試験前に決めたこと以外は、統計的評価の対象にならないからです。
これは、統計学的には、正しい考え方なのでしょう。
しかし、それはあくまで、臨床試験の最終段階で、市販承認を受けるための確認試験の話です。

わかっていないことのほうが多い人体と、これまた未知の部分の多い新規化合物の関わり合いを、初めてヒトで観察する場合には、当然、予想外のこともたくさんあります。
それらを注意深く調べて、これまでわかっていなかったことを発見するのは、通常の科学的手法の一つです。
もちろん、発見したと思ったことが正しいかどうかを証明するためには、臨床試験をして確認する必要があります。
キャンバスがCBP501の追加臨床試験実施を目指しているのは、その価値がある(と私たちが信じるに足る)発見があったからです。


「臨床試験に時間をかけていると、特許寿命が短くなるので事業として成り立たない」という声もよく聞きます。

特許とは無関係に、市販承認を得さえすれば、独占権が得られるデータ保護期間という制度もあります。
これは、圧倒的に市場規模の大きな米国では抗体薬などの生物製剤ならば12年もある(TPP交渉で、これが8年になるという話が最近ありましたよね)のに、通常の低分子化合物だと5年しかありません。
ですから、高価な抗体薬などの生物製剤を短期間の臨床試験で仕上げるのが一番事業効率がよい、という考えがはびこります。
抗体薬などの生物製剤は、特許などの市場独占期間が経過しても、低分子のような全く同一分子のジェネリック薬品が出回るのではなく、バイオシミラーといって同じ作用のある別の生物製剤を開発しなければならず、薬価もそれなりに高く、医療費負担が大きいので、患者さんや国にとっては不都合ですが、製薬会社には魅力があります。
ですから、ますます、抗体薬などの生物製剤の開発に彼らの興味は傾いてゆきます。
実際、数年前に欧米の有名な新薬専門の大手製薬会社が、低分子化合物の抗癌剤開発から撤退すると宣言したこともあります。

私は、製薬会社の短期的なビジネス判断としてはそれがたぶん正解なのだろうなと思う半面、そうした高医療費負担を前提としたビジネスモデルにはおのずから限界があるだろうとも考えています。
また、製薬会社には魅力が薄いかもしれないけれど、これまで最も多く患者さんを助けてきた、いわゆる「古いタイプ」の抗癌剤(細胞障害性抗癌剤)には今後改めてスポットライトが当たると思っています。
このことはいずれ、稿を改めて詳しくお話しするつもりです。


余談ですが、低分子化合物やペプチド製剤(CBP501はとても短い非天然のペプチドで、これらの中間的な存在です)のデータ保護期間が生物製剤に比べて短いのは、少し不公平だし楽ではないけれど、それもまあいいじゃないかとも思っています。全ての癌を完治する理想の薬たちが整うまでは、さまざまなアプローチによる不断の改良が必要なはずです。
生まれた新薬がどんどんジェネリックになってより多くの人が使えるようになるとともに、企業として生き延びてさらに良い抗癌剤の開発を続けるためにも、次から次へと新薬を生むしかないというのは、全体としてみれば、良いことではないでしょうか。
(もちろん、努力にも限度はありますから、保護期間の長さと、研究開発の難しさや開発期間の長さの関係はとても重要ですが。)


キャンバスには今、CBP501やCBS9106に続いてより良い抗癌剤候補となるシード(種)やアイディアがたくさんあります。
先行する2つが前に進んで収益基盤となり、財務基盤が厚くなればなるほど、これらの候補品の研究開発を前進させるスピードを上げることが出来ます。
そのためにも、先行する2つのパイプラインには、たくさんのハードルを乗り越えて行ってもらいたい。
それをサポートするための基礎研究と臨床開発は、これまでも、そしてこれからも、私たちの重要な仕事です。


昨年に続いて今年も、年末の押し詰まった時期に良いニュースをお届けすることが出来ました。
「終わりよければ」ではありませんが、一昨年よりも昨年、昨年よりも今年と、過去の蓄積が少しずつ成果として積み上がり始めています。
今年よりも来年を、キャンバスにとってもさらに良い年にしたい。
今回のCBS9106IND申請完了のニュースで、その思いを新たにしたところです。

皆様どうぞ良いお年をお迎えください。


※キャンバスの2015年内通常業務は12月29日まで(IR等の業務は30日まで)、2016年の業務は1月4日からです。

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