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3件の適時開示、それぞれの意味

6月に入ってからこれまで、CBP501臨床第2相試験に関連する適時開示が立て続けに3件ありました。

これらはそれぞれ、
「現在進行中の臨床第2相試験ステージ1の、外形的な進捗の情報」
「ステージ1のあとのスケジュール見通しや臨床第2相試験クリアの可能性に影響を与える情報」
「CBP501の有望さを示しているかもしれない情報」
と、性質や意味の違う情報です。

3件それぞれの情報の意味を、このブログ記事で改めて整理することにします。

現在進行中の臨床第2相試験ステージ1の、外形的な進捗の情報

臨床試験の進捗は、登録症例数と臨床試験実施施設数で外形的に知ることができます。
6月1日公表『CBP501臨床第2相試験 月間進捗状況の公表について』は、この点をお知らせする情報です。

臨床試験にはお金がかかります。
1症例あたりのコストもさることながら、臨床試験を実施し続けるしくみの維持やその間の会社維持費用などには「期間」が効いてしまいます。
始まった臨床試験は可能な限り速く進めて早期にLPI(Last Patient In、最終の被験者登録)やLPO(Last Patient Out、最終症例の最終観察)を目指し、期間を短縮することが重要です。

また、今回の臨床第2相試験はオープンラベル試験で、試験の進捗に伴って日々届くさまざまな情報をもとに今後の展開の意思決定をしていきます。
一つでも多くの情報があるほど、その意思決定の精度は高まります。
逆に言えば、臨床試験の進捗ペースが速ければそのぶん早期に、良いほうも悪いほうも意思決定をすることができます。
内容やデータの良し悪しはさておき、まずは順調に組入れが進捗することがとにかく重要なのです。

これらの理由から、今回の臨床第2相試験の進捗ペースは、投資家の皆様の主要な注目点のひとつだと考えられます。

これを適時にお知らせするために私たちは、まだうまく進捗するかどうかわからないうちから、もしうまく進捗しなかったとしても開示し続ける決意で、今年1月から「登録症例数」と「臨床試験実施施設数」という外形的・客観的な数値の月次開示を続けています。

7月以降も、ステージ1の登録予定数36例に達するまで続けます。

ステージ1のあとのスケジュール見通しや臨床第2相試験クリアの可能性に影響を与える情報

もうひとつ、投資家の皆様の主要な注目点となっているのは
「CBP501はこの臨床第2相試験をクリアできるのか」
「クリアするとしたら、どういう形やスケジュールになるのか」
です。
ひとつめの「外形的な進捗(内容やデータの良し悪しは別)」とは異なるカテゴリーの情報であり、状況に変動があれば適時に開示されねばなりません。

6月20日公表『CBP501臨床第2相試験 3剤併⽤投与群で複数の⻑期無増悪⽣存が確認されました』は、臨床試験で得られたデータに基づき、臨床試験クリアの可能性とスケジュール見通しに影響を及ぼす情報です。

今回の臨床第2相試験は、Fleming’s Two-stage Designという統計解析手法を採用しています。
2つのステージに分かれていて、ステージ1終了時の中間解析で、3ヶ⽉無増悪⽣存(以下、3M-PFS)を指標として、次のように判定します。

  • ステージ1の9例中、4例以上の3M-PFS
    → 早期有効中⽌=その群についてステージ2は不要
  • ステージ1の9例中、3M-PFSが1例以下
    → 早期無効中⽌=その群についてステージ2は実施しない
  • ステージ1の9例中、2〜3例の3M-PFS
    → その群はステージ2以降へ進む価値ありと判断

3剤併用投与群・2剤併用投与群のすべてに、この指標と判定が適用されます。

※この臨床試験を「3剤併用投与群とプラセボ群の群間比較を目的とした臨床試験」としているウェブ記事などが一部にありますが、事実と異なりますのでご注意ください。

これらの判定基準(「1例以下」「4例以上」など)は、事前に統計専⾨家らと議論し、試験開始前に⽶国FDA へ提出済みの統計解析⼿法に則って設定されているものです。当社が勝手に設定した数値ではありません。

6月20日公表資料のとおり、今回、3剤併⽤投与群のひとつで複数の3M-PFS達成が確認されました。
これによって、その3剤併⽤投与群が早期無効中⽌とならず、ステージ2または臨床第3相試験へ進む価値があることが確定しました。

つまり、現在の臨床第2相試験が早々とステージ1で失敗終了してしまう懸念がなくなりました。

もし逆のケース(ステージ1での失敗が決定)だったとしたらもちろん公表しなければならないことから、この適時開示の必要性は容易にご理解いただけると思います。

なお、本臨床第2相試験のステージ2をスキップして臨床第3相試験を開始するシナリオ(会社紹介資料で「⾦メダルシナリオ」と呼んでいます)については、今後どのようなデータが出てくるかによるので、未だ確定はしていません。
変動があり次第、適時開示で公表していきます。

CBP501の有望さを示しているかもしれない情報

6月15日公表『CBP501臨床第2相試験 3剤併⽤投与群で奏効(がんの縮⼩)が確認されました』は、ここまで書いた2つ
「現在進行中の臨床第2相試験ステージ1の外形的な進捗の情報」
「ステージ1のあとのスケジュール見通しや臨床第2相試験クリアの可能性に影響を与える情報」
のどちらにも該当しません、

今回のCBP501臨床第2相試験の対象となっている膵臓がん3次治療(効果の期待できる治療選択肢を既に2つ済ませた状態への次の治療)の領域には、現在までに承認された医薬品や治療がありません。
新薬候補や既存治療の併⽤による多数の臨床試験が実施されていますが、多くの試験結果は残念ながら芳しくなく、全⽣存期間の中央値は約3ヶ⽉、無増悪⽣存期間の中央値は約1.5ヶ⽉です。

また、これらの臨床試験における奏効の出現率は低いことが知られています。
治療の効果は、治療が進むほど低下します。1次治療や2次治療の数字を持ち出して比較しても意味がありません。
3次治療のみを抜き出した数値としては、過去最も⾼いもので3.1%(1/32)、2次治療を含む他の臨床試験でも0〜9%という数値が報告されています。

今回、3剤併⽤投与群のひとつ(⽤量の異なる2つの3剤併⽤投与群が設定されています)で1例の部分奏効が確認されたことは、それひとつでニュース価値のある情報です。

1例なので、偶然の産物であるおそれはもちろん未だ否定できません。
とはいえ、⼗分に間隔を空けた複数回の測定による慎重な確認であること、測定を進めるにつれて縮⼩が進んでいる状況などを踏まえ、CBP501の有望さを⽰している可能性があると判断しています。

なお、「複数の⻑期無増悪⽣存が確認された」という6月20日公表のニュースを、これの2例めだと誤解しておられるかたが散見されますが、現時点でも未だ部分奏効の2例めは確認されていません。
その確認ができた場合には、改めてお知らせします。

適時開示の方針

最後に、いくつかお寄せいただいている「このような適時開示は見たことがない」「どういう基準や方針で適時開示をしているのか」というご指摘やお問合せにご回答します。

これらの適時開示は、臨床試験で発生した事象の中から都合の良いものをピックアップして実施しているものではありません。

私たちが今回実施しているCBP501臨床第2相試験は、オープンラベル試験であり、試験の進捗に伴ってさまざまな情報が当社に届いています。
それらのうち、将来の論文・学会発表の妨げとなるものや、医療倫理面で現時点での公表ができないものを除き、証券取引所の定める適時開示ルール「投資家の投資判断に重要な影響を与える情報」に該当するものを、開示義務に従って開示しています。
今回の3件
「現在進行中の臨床第2相試験ステージ1の外形的な進捗の情報」
「ステージ1のあとのスケジュール見通しや臨床第2相試験クリアの可能性に影響を与える情報」
「CBP501の有望さを示しているかもしれない情報」
は、いずれも「投資家の投資判断に重要な影響を与える情報」に該当する情報です。

もちろん、その文面については、過度に期待感を煽ったりミスリーディングなものになったりしないよう、関係当局と十分に吟味して作成しています。

取引所の定める適時開示ルールは、つづめて言うと
「投資家の投資判断に重要な影響を与える事実を決定したりそういう事実が発生したりした場合には、適時に開示しなければならない」
というものです。
このような義務が課せられている背景にはさまざまな要素がありますが、たとえば、投資判断に重要な影響を与える情報が適時適切に公表されていないと、何らかの方法でその情報を入手した者によるインサイダー取引の温床になるおそれがあるというのもそのひとつです。

今回はたまたま、臨床試験の順調な進捗やCBP501の有望さの兆候かもしれない情報など、当社にとって良いニュースが続きました。
当社の情報開示方針は、仮に悪いニュース(たとえば、臨床試験の進捗が遅れそうな兆候など)があった場合でも、もちろん変わることはありません。
投資家の投資判断に重要な影響を与える情報が発生・決定するたびに、すみやかに公表します。