ウェブサイトリニューアルをお知らせしてから2ヶ月余り、ブログ開設以来最大のご無沙汰になってしまいました。
その間にいただいた各方面からのお叱りやお励ましに、この場を借りてまずお詫びと御礼を申し上げます。
決算期末を控えていることもあり、各部門の活動がとても活発になっています。
その調整や次のアクションの準備、案件によっては直接の担当者としても動いている私の時間の確保もそれにつれて難しく、なかなかブログ記事作成に着手できない日々が続いてしまいました。
今日は運良く面談やミーティングが途切れるので、思い切って数時間をこのブログ作成に充てることにします。
ご無沙汰の間にいただいたご質問やお問い合わせに大項目ごとにまとめてお答えしつつ、近況をご報告する形で進めます。
ご質問そのものをご紹介していると必要以上に長くなるので、今回は文章の中に回答が含まれている形式を採用し、元の「Q」を表示していません。あしからずご了承ください。
また、「質問を送ったのに回答がない」とお感じのものがありましたら、いずれブログやツイッターで回答するか、あるいは会社として(少なくとも現時点で)回答しないことにしたのだとご理解ください。
当社を含む創薬企業の企業価値の源泉は、プロダクトに合致した適応疾患領域における開発の進捗です。
プロダクト(CBP501)や適応疾患領域についてはさんざんご紹介していますので、今回最初にご報告するのは臨床開発の進捗です。
おかげさまで、CBP501フェーズ2臨床試験(対象:膵臓がん3次治療)の準備は順調です。
以前公表した「2021年央FPI(最初の症例への投与)予定」 も、実現できる見通しのまま変わっていません。
「年央とはいつまでか」とのご質問を最近いただきました。
年央は「年のなかばあたり」という曖昧な時期を指す言葉で、当社もそれに沿って本来の曖昧さを含めた6〜8月頃の意味で使っています。
ですが、ご質問をいただいて改めてウェブ検索をしてみると使う人によってかなりさまざまに使われていて、「7月1日のことだ」と狭めたものから「6〜9月を指すものだ」と拡げたものまでさまざまでした。
今回改めて、「2021年6〜8月にFPIに至る予定」と表現し直すことにします。
こういったミスコミュニケーションはできるだけなくそうと努めていますが、発信する側だけの努力にはおのずから限界があります。
お気づきの点はぜひ遠慮なくご質問ください。
「いつまでも曖昧な見通しでなく具体的な日付を公表せよ」というリクエストが来ることがありますが、FPIの最終的な日付まで当社はコントロールできません。
当社にできるのは、すべての準備を整えるところまでです。
今回も、たとえば7月初めに受入医療機関などすべての準備が整っていてもFPIまでの時間がかかり8月におさまらない場合もあり得ます(その場合には必要な開示をします)。
準備を整えるという意味では、今回のフェーズ2試験の準備について当社は現在まで万全です。
当社の努力で早められることはすべて事前に手を打てています。
外部関係者の不手際や不運で遅れそうになったものをキャンバス臨床開発チームのファインプレーで阻止し、むしろ早めたものもあります。
これまで自前で臨床開発をしてきた経験の蓄積を、強みとして遺憾なく発揮できていると自負しています。
CBP501フェーズ1b試験は、近々最終報告書を入手し「試験終了」となりそうです。
臨床試験パイプライン紹介のページでCBP501第1相がもうすぐ終わる表示のままになっているのは、この入手完了を待っているという趣旨です。
その状態のまま第2相の矢印が始まっているのも、表示ミスではありません。
CBS9106についても、フェーズ1試験の終盤の開発が続いています。
Stemlineとの提携について「今期で終わる」と勘違いしておられるご質問もよく来ますが、技術コンサルティングフィーの受領期間が終了するのみです。
このあとの開発進展に伴うマイルストーン受領や(上市された場合の)ロイヤルティ受領などの契約が終了するわけではありません。
提携の獲得については何度も似たような説明になってしまいますが、改めて。
キャンバスには現在、「CBP501」「抗がん剤感受性予測」という2つのアライアンスシーズがあります。
(「ひとつだ」と思っておられるかたは、是非この機会に認識を改めてくださいね。)
現在、そのどちらについても、話の規模や条件やその他もろもろの違いこそあれ、具体的な提携交渉相手とのやりとりを毎日のように重ねています。
そうしたやり取りの中から交渉相手やアライアンス市場全体の需要ポイントを探りつつ、その情報をたとえばフェーズ2臨床試験の設計などに生かしています。
昨日まで何の音沙汰もなかったところから1日2日で話が盛り上がったり、もう交渉終盤かと思えるところまで辿り着いたものがあっという間に白紙になったり、状況はめまぐるしく変化しますから、時期や規模や進捗状況について対外的にお知らせすることは(仮にやりたくても)できません。
「目標として◯◯頃までにできるよう頑張っているが、相手もあることだし難しいですね」と言っただけで「◯◯までに提携」と報じられてしまい投資家の皆様を混乱させたこともあり、現在キャンバスはどなたにも(メディアにも、機関投資家にも)提携に関して何も申し上げていません。
また、交渉相手との間で十分な内容の提携ができないときに備えた新規開発などの活動も常に並行しています。
巷には「製薬企業と提携さえできれば企業価値が上がる」「そのあとはなんとかなる」と考えておられるかたも少なくないようです。
もちろんそうなるのがベストですが、製薬企業との提携は必ずしもその後の開発の順調さを保証するものではありません。
提携したことでかえって開発の方向性が迷走したりスピードが下がったりするなど、よくある話です。
また、提携は必ずしも当社の企業価値を上げるものではありません。
リスクシェアとプロフィットシェアのバランス次第では、当社の企業価値を下げるものにもなり得ます。
研究開発段階の上場企業であるキャンバスの責務は中長期的な企業価値の最大化であり、その価値の源泉はプロダクトに合致した適応疾患領域における開発の進捗以外にありません。
その実現に貢献する提携、すなわち、開発の進捗に寄与し当社の企業価値を上げる提携の獲得を、引き続き目指していきます。
なお、実のところは「その他の前臨床試験以前のプロジェクト」という3つめのシーズもあり、提携等につながることももちろんあり得ると考え、そのための活動もしているのですが、それについてはまた何かの機会に。
株価の推移についてコメントせよというご質問を何度か繰り返しいただいています。
これについて直接お答えするのは差し控えますが、代わりにひとつ最近のエピソードを書いておきます。
先日あるアナリストのかたと話していて、
「会社のプレゼンテーション資料に『キャンバスの企業価値』という項目を作っているのは素晴らしい」
とお褒めをいただいたあと、
「ただ、これらをもとにそれぞれが考えてくださいというアプローチは、フェアではあるけれど不親切。直接比べることのできる方法、たとえば『この段階の会社やパイプラインはこのくらいの企業価値評価をされてきた』という目安も示してくれないか」
とリクエストをいただきました。
その際にお示しして「なるほど」とお返事をいただいたのは、次の2つの事例です。
CBP501と同じ膵臓がん3次治療で、主に株式市場からの調達資金で臨床開発を進め、現在フェーズ2・3段階にあるTymeのNASDAQでの時価総額は現在、日本円で250億円。
同じく主に株式市場からの調達資金で臨床開発を進めて上市に至った化合物を持ち、CBS9106でキャンバスと提携しているStemlineは、買収されたときの時価総額は日本円で約700億円。
上市化合物だけの評価額としては大きく、同社の2番手の開発パイプラインであるCBS9106の価値も相応に反映されていると考えられる。
その他、当社と同じくらいの開発ステージとパイプライン構造で、製薬企業との提携のない状態で時価総額日本円換算500億円超の創薬ベンチャーは、NASDAQにはいくつもあります。
彼らは提携のない間、株式市場参加者に技術やプロダクトと開発の進捗をアピールし、市場から100億円単位の資金を調達して開発を進め、十分な価値を認めさせて好条件で製薬企業等との提携に至っていきます。
たとえば、最近グラクソ・スミスクラインとの提携で株価の跳ねたiTeosという会社は、まさに当社と同じくらいの規模と開発ステージの会社ですが、提携発表前の株価低迷期でも時価総額は日本円換算750億円超でした。
日米の株式市場の違いの原因は現時点でさまざまあり、単純な比較はもちろんできません。
そのひとつは、彼らを評価する株式市場参加者の企業価値評価がプロダクトに合致した適応疾患領域における開発の進捗に基づいていることでしょう。
とはいえさすがに差が大きすぎますから、こうした見方(企業価値の考え方の「マーケット・アプローチ」などといいます)などをベースに、いずれ差が縮まっていくと考えています。
発行会社としても、志を同じくする他の国内バイオ企業の代表者やIRご担当との連携等も図りながら、その変化を促すインベスターリレーション活動を進めていきます。
毎月初に適時開示(ルールで定められています)でご報告しているとおり、第16回新株予約権の行使に伴う資金調達は5月末段階で9割近くまで進行し、早晩のうちに完了すると考えています。
おかげさまでキャンバスは、今回の資金調達によってCBP501フェーズ2ステージ1終了までの資金を確保することができました。
この確保が提携先任せでは、提携交渉でも足元を見られてしまいます。
ここで大切なのは、この資金調達が、開発進捗すなわち企業価値増大のためのものであるということです。
言うまでもないことですが、調達させていただいた資金を使ってそれ以上の価値を創出することが、投資家の皆様に対するキャンバスの責務です。
それを全うできるよう、引き続き全力で開発や交渉に邁進していきます。
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