さきほど公表したとおり、キャンバスは静岡県が推進する『ファルマバレープロジェクト』との共同研究を開始しました。
ファルマバレープロジェクト(富士山麓先端健康産業集積プロジェクト)とは、静岡県が県東部の富士山麓地域を中心に産官学+金融の医療健康産業クラスターを形成するべく推進しているものです。
キャンバスが本社を置く沼津市ももちろん、この地域に属しています。
しかしながら、ファルマバレープロジェクトとキャンバスとの接点は、これまであまりありませんでした。
というのも、キャンバスは従来
「起業の契機となった自社創出ペプチド化合物TAT-S216を起点とする創薬」
「正常細胞と癌細胞の細胞周期の違いに着目し、生細胞の挙動を基準とする独自のスクリーニング系」
「米国FDA監督下の臨床試験推進」
といった独自色の強い展開を進めていたため、ファルマバレーに備わっている創薬探索プロジェクトとの接点を作りづらかったのです。
しかしここに来て状況が変化しました。
臨床第2相試験データの詳細解析から、CBP501は当初想定していた作用にとどまらず、癌細胞だけでなく癌微小環境への働きを通じた免疫系への作用機序を持ち、「癌免疫」「癌幹細胞抑制」「浸潤・転移抑制」など、ひとつひとつを取り上げても十分に注目に値するさまざまな作用を有することがわかりました。
この内容は2015年10月27日付当社プレスリリース『CBP501新知見に関する学会発表について』に詳しくご紹介しています。
この知見を踏まえてキャンバスでは昨2015年、「次世代CBPプロジェクト」を立ち上げました。
このプロジェクトは、
(1) CBP501と免疫系抗癌剤の併用等による薬効の検証
(2) CBP501の革新的改造による新たなペプチド型免疫系抗癌剤候補化合物の創出
(3) 最新知見を踏まえた新たな薬剤スクリーニング系の確立とそれを用いたライブラリースクリーニングによる新規免疫系抗癌剤候補化合物の探索創出
などの要素を含むものです。
このウェブサイトの「新規パイプラインの獲得」のページに掲載している「キャンバスのパイプライン展開」図の、赤い円で示した部分にあたります。
2016年2月9日に公表した東京大学との共同研究契約は、上記(1)「CBP501と免疫系抗癌剤の併用等による薬効の検証」の活動のひとつです(ほかにもいくつかの方法で検証を進めています)。
上記(2)「CBP501の革新的改造による新たなペプチド型免疫系抗癌剤候補化合物の創出」については、まだ表立ってお話しできる状況にはありませんが、着実に歩を進めています。
そして、今回のファルマバレープロジェクトとの共同研究は、上記(3)「最新知見を踏まえた新たな薬剤スクリーニング系の確立とそれを用いたライブラリースクリーニングによる新規免疫系抗癌剤候補化合物の探索創出」のひとつです。
次世代CBPプロジェクトの成果として私たちは、これまで用いてきた「正常細胞と癌細胞の細胞周期の違いに着目したスクリーニング」とは異なる、新しい創薬スクリーニング系を確立することができました。
これによって、ファルマバレープロジェクトとの接点の可能性が浮上したのです。
同プロジェクトを推進する中核支援機関であるファルマバレーセンターご担当者様のご尽力もあってきわめて迅速に、今回の化合物ライブラリーご提供を受ける共同研究契約を締結することになりました。
ファルマバレーセンターは、国内外から収集した独自性の高い化合物約120,000化合物を有し、静岡県環境衛生科学研究所で化合物ライブラリーとして運用しています。
今回の共同研究でキャンバスは、化合物ライブラリーの提供を受け、新しく確立した前述の創薬スクリーニング系を用いて、同ライブラリーからの新たな免疫系抗癌剤候補化合物の獲得を目指します。
この共同研究から実際に候補化合物が探索される可能性は未知数ですが、もしここから新規候補化合物を獲得できた場合には、創薬パイプラインの拡充など、キャンバスの中長期的な企業価値の向上に寄与することが期待できます。
なお、本件に限らず例えば先日の東京大学との共同研究なども同様なのですが、共同研究契約に定められている守秘義務に基づき、成果を論文等で公表する場合を除いて、たとえば共同研究期間終了時に成果の有無や内容を公表することはできないことになっています。
いつも開始時の期待だけを公表する形になってしまうのはこうした背景によるものであり、悪しからずご了承ください。
情報を公表する機会が少なくご心配をおかけしてしまいがちですが、キャンバスの創薬はこうして着実に布石を打ち、進展を続けています。
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