マネジメントブログ

決算説明会などでのご質問とお答え

今日、欧州規制当局である欧州医薬品庁(EMA: European Medicines Agency)からの膵臓がんに対するオーファンドラッグ指定受領を適時開示しました。
(右上の日付は間違っており、正しくは8月23日です。訂正開示はこちら

ですが、今日のブログでは、このニュースに関するお話は後回しにさせていただいて、未だお知らせできていなかった2024年6月期決算説明会(2024年8月20日)での質疑応答をまとめてお届けします。

決算説明会の動画とテキストはLogmiで配信しています。ぜひご覧ください。

説明会質疑応答

説明会でアナリスト・報道機関からお受けしたご質問とその回答は次のとおりです。

欧州臨床第3相試験開始を待ち遠しく期待している。
前回の貴社臨床第2相試験では、早期に結果を出していただいたり、途中でニュースを出していただいたと記憶しているが、P3開始後の貴社の発表やニュースはどのような形になると考えておけば良いか。

《河邊》
臨床第3相試験は最終証明の臨床試験なので、バイアスがかからないようにすることが求められるため、途中で効果を匂わせるような話というのはできなくなります。
その制約の中でこのあとどのようにニュース等を出せるのか未だ確定していませんが、臨床試験の進捗している度合いを表す情報として組入状況の公表などが考えられます。
一方で、安全性に問題があるなど悪いニュースは即座に出るので、「臨床試験が続いていること自体が良いニュース」ということになります。

また、臨床第3相試験では中間解析を計画しており、中間解析の実施やその通過については、その都度公表することになると思います。
解析のデータや結果自体は(バイアスになるので)公表できないものの、見込みがあるから続くわけなので、中間解析を通過したというニュースから間接的に見込みを知っていただけることになります。

《加登住》
前回の臨床第2相試験は比較対照試験でなく、(3ヶ月無増悪生存を達成した)症例数をカウントアップすることで主要評価項目達成可能性の上昇をお伝えできる、ある意味で特殊な形の臨床試験だったので、あのような形での開示がたまたまできたものです。
河邊からの回答のとおり、首尾良く臨床第3相試験を開始した後はニュースの頻度などが変わりますが、開示姿勢の後退というわけでは決してないことをご理解いただきたいところです。
今後も開示できることはひとつでも多く開示していきます。

資金について。
欧州臨床第3相試験の実施に要する費用が45〜50億となっている。
(既発行の第19回・第20回新株予約権の)下限行使価額971.4円を下回る株価水準の中、今後の資金繰りや資金調達計画についてどのように考えているか。

《加登住》
7月初頭のキャッシュは20億円超の残高があり、欧州臨床第3相試験の内容が未確定なので確実なことは言えないものの概ね中間解析手前くらいまでの資金に相当することから、臨床第3相試験突入については躊躇う必要がないと考えています。
その後の資金をどう調達するかという点ですが、そのためにあらかじめ発行済みなのが第19回・第20回新株予約権です。
株価の推移によってはこれらが行使され、新たな希薄化をすることなく資金調達できる可能性を潜在的に確保してあるというのが、現状の当社の資本政策をご評価いただきたいポイントです。

提携等について。
もし欧州規制当局からP3開始承認を得られた場合には製薬企業から見た貴社との提携魅力が高まると考えられるが、その点について考え方の変化等はあるのか。

《加登住》
私たちはCBP501について「創薬パイプライン型開発」を志向していますが、これは「何が何でも最後まで無提携でやる」という趣旨ではなく、「無提携でも進めるけれど、良い提携の話があればお受けしますよ」というスタンスは常に持っています。

ご指摘いただいたとおり、欧州規制当局から臨床第3相試験開始承認を受けることとなれば、製薬企業から見るとリスクがかなり大きく減少して魅力が高まることは十分期待できるし、そのための交渉窓口は開けた状態で進めていきます。
とはいえ、業界全体の流れとして、製薬企業は未だ提携導入活動を積極的に展開しているような状態ではなく、積極的にコストや手間をかけて売り込んでまわるのは効率が悪すぎます。良いお話の兆しがあれば随時協議を進めていくという、現在の姿勢がちょうど良いだろうと考えています。

欧州臨床試験も膵臓がん3次治療対象ということだが、1次・2次治療での治療内容による制限は考えているか。ゲムシタビン・ナブパクリタキセル併用、FOLFIRINOXなどが前治療で入り得ると考えられる。

《河邊》
治療歴による制限は一切設けていません。

懸念事項として一般に考えられることとしては、たとえば「免疫チェックポイント抗体による治療を先に受けていたら効きにくいのではないか」というのがありますが、膵臓がんに免疫チェックポイント抗体が効かないことはほぼ証明されてしまっているような状況なので、免疫チェックポイント抗体による治療歴のある患者様はほぼいません。
稀に、免疫系抗がん剤の臨床試験に参加したことのある患者様はあり得ますが、その場合でもCBP501を含む3剤併用は効果を示すことができると考えています。

また、私たちの3剤併用にはシスプラチンが含まれるので「プラチナ製剤の治療歴のある人は除外したほうが良いのでは」という考え方もあります。
しかし、過去のCBP501臨床試験では、プラチナ製剤による治療を受け既に効かなくなった卵巣がんでも奏効が見られていたので、プラチナ抵抗性の患者様でも効果を示せると考えています。
実際に、前回のP2ではほぼすべての患者様がプラチナ製剤のひとつオキサリプラチンを含むFOLFIRIINOX(注:5-FU・イリノテカン・オキサリプラチンに5-FU増強剤レボホリナートを加えたレジメン)の治療を受けておられましたが、ご覧のような良い結果を得られました。

 

以上が、決算説明会での質疑応答です。

併せてこの機会に、X(旧ツイッター)やお問合せフォームからいただいているご質問にもまとめてお答えします。

CBP501関連

化学療法+免疫チェックポイント抗体(ICI)、分子標的薬+ICI、ICI+ICIなどさまざまな複合免疫療法のうち、キャンバスが競争相手としてベンチマークする対象は。

レジメンの内容や想定される作用メカニズムにかかわらず、免疫コールドながんに薬効を示すものはひととおり開発競争相手と見ています。

とはいえ、他の治療には作用メカニズムとして辻褄の合っていないと感じるものやあまりに多額の治療費を要するものもあります。
また、多くの試みがなされている「単一分子・単一経路を狙う方法」では、複雑な免疫環境を改善するには限界があります。
カルモジュリンを経由して多数の経路に都合よく作用すると考えられるCBP501はその点を克服する可能性があり、そこが開発競争上の優位と考えています。

他の療法にはない、CBP501併用療法に固有の強みとそれを生み出すメカニズムは何だと考えているか。

前の回答のとおり、一剤で多数経路に”都合よく”作用すると考えられることと、そうなっていることを示唆する臨床データが存在することが、CBP501併用療法固有の強みです。

学会発表のConclusionにあるように、CBP501を含む3剤併用投与は、膵臓がん3次治療として稀な「持続的な奏効と臨床的に意義のある改善」をもたらし、同時に「忍容性のある安全性」を示しました。
こうしたデータは過去の臨床試験から一貫しており、臨床第3相試験でこれらを明確に証明したいと考えています。

膵臓がんの3次治療は、免疫コールドながんの中でも、免疫ホットながんへの変換が難しいがん種・治療ラインなのか。
免疫ホットながんへの変換の難易度を示す指標や数値等の根拠はあるか。

膵臓がんに限らず他のがんでも、ステージIからII、III、IVと進むにつれ、また1次・2次治療とと進むにつれて、免疫がよりコールドになることが知られています。
また、もともと免疫コールドな膵臓がんが3次治療の段階でとてもコールドであることは、多くの論文からも読み取れます。

CBT005関連

CBT005の前臨床試験準備の進捗はどのような状況か。

CBT005の前臨床試験向け原薬製造は概ね予定どおり進捗していて、2024年内か年明け早々には前臨床試験開始可能な状況になると見込んでいます。

一方で、前臨床試験には約2億円の費用を要します。
財務的な状況から当面はCBP501欧州臨床第3相試験に向けた活動に経営資源を集中すべきと考えられることから、CBT005前臨床試験開始のタイミングや内容については慎重に検討しているところです。