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決算説明会後の質疑応答を一挙公開します

決算作業、決算後の沈黙期間や決算説明会の準備が続き、久しぶりの〜今年初の〜ブログ更新になってしまいました。
公式ツイッターで即時性のある情報発信をしているのもブログが減った原因のひとつでしょうか。
今後はどちらも更新頻度を上げていきます。

今回も、決算説明会後の質疑応答をこのブログで一挙公開します。
決算説明会直後の質疑応答Zoomセッションでの質疑だけでなく、メディア取材やアナリスト取材での質疑もまとめてお伝えします。

決算説明会は今回からオンライン配信となり、見逃したかたもいつでもご覧いただけます。こちらでもいくつかご質問にお答えしているので、ぜひ併せてご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=xcwAQVd-rNo
↑ クリックするといきなり動画と音声が始まります。

CBP501について

――「免疫に着火する」という言葉で表現しているCBP501の作用機序をもう少し詳しく説明してほしい。

まず、免疫チェックポイント阻害抗体がどうやって効いているか、免疫チェックポイント阻害抗体の効かない癌で起きていることは何か、をご説明する。

PD-1などの免疫チェックポイント分子は、ふだん、T細胞がむやみに他の細胞を攻撃しないようにするブレーキとして働く。
癌細胞はこのしくみを利用して、自分に対するT細胞の攻撃を止めている。

免疫チェックポイント阻害抗体は、選択的にこの分子の働きを阻害してブレーキを効かせなくするため、T細胞が癌細胞への攻撃を再開し、癌治療に効果を示すことができる。

免疫チェックポイント阻害抗体が効かないケースにはいくつかのパターンがあるが、その中のひとつに「免疫コールド」がある。
免疫コールドとは、攻撃部隊であるCD8T細胞が癌微小環境に存在しない、または極めて少ないこと。いくら攻撃のブレーキを解除しても、肝心の攻撃部隊がいなければ攻撃ができない。
そうした中でCBP501は、シスプラチンとの組み合わせによって癌細胞の免疫原性細胞死を増やし、CD8T細胞に癌が異物であることを認識させるとともに、癌微小環境で免疫抑制をしているマクロファージの働きを抑えることによって、CD8発現T細胞の存在しない(または極めて少ない)癌組織に、攻撃部隊であるCD8発現T細胞を誘引して、「免疫ホット」にすることがわかっている。

これによって免疫チェックポイント阻害抗体の効果を高めるのが、今回私たちが「免疫に着火する」と表現している作用メカニズム。

――説明の中で「免疫ホット」「免疫コールド」という語が使われているが、これはキャンバス独自の用語か、それとも業界の共通用語か。

“hot/cold tumor”(熱い癌・冷たい癌)は、学会等で一般に用いられている。immune inflamed/non-inflamed(炎症を起こしている/起こしていない)、excluded(免疫細胞が排除されている)といった語が使われることも多い。
免疫機構に着火する(ignite)という言葉も、癌免疫領域の最新知見を確認している人にはわかりやすい言葉。

――免疫チェックポイント阻害抗体との併用で効果を発揮するということは、そういう医薬品を既に有している製薬企業が欲しがりそうに見えるのだが、それらからの提携が獲得できていないのはなぜか。今後はどのような提携獲得戦略で動くのか。

現時点で提携成立には至っていないが、免疫チェックポイント阻害抗体を有している企業・有していない企業それぞれに興味を持っていただけている。

免疫チェックポイント抗体が臨床的に成功して以来、ほぼ全ての既存抗癌剤や開発中の抗癌剤が併用対象となり、無数の提携が行われ、無数の併用臨床試験が開始された。
残念ながらCBP501はその第一波には乗れなかったが、時間が経つにつれ、多くの併用試験が失敗に終わり、また、免疫チェックポイント抗体が効かない場合の理由についての研究が進んで、①免疫原性細胞死や②マクロファージなど免疫抑制的細胞の制御の重要性が判明し、無数の集団の中でのCBP501の優位性が分かりやすくなってきたと考えている。
一方、相手側から見れば、早期の臨床試験にすぎないという認識や、これから承認までに必要な試験が非常に大規模となり時間や費用が膨大になる危惧、膵臓癌3次治療の市場性などの理由で、半信半疑だったり、リスクを測りかねていたと思う。

今回、承認への道筋が明確になり、今後の開発投資とリターンを計算できる状態まで来たことで、提携獲得活動で訴求するCBP501の魅力はこれまでと大きく変化する。
また、提携とは少し異なるが、金融的な視点から創薬プロジェクトに投資するスタイルも増えており、こうした投資家は製薬企業と同様に開発投資とリターンに着目する。今回、承認までの道筋が見えたことで、臨床開発資金の獲得方法として、製薬企業等との提携ではない方法も選択肢とすることができるようになった。

現在接触の続いている候補先、過去に接触はあったが途切れている候補先、新規候補先に、引き続き幅広く接触しディスカッションを深めていく。

臨床第2相試験について

――今回公表した臨床第2相試験を「承認への道筋が明確になった、その第一歩」と表現しているが、その趣旨を詳しく説明してほしい。

「承認への道筋が明確」とは、
このあと何と何をどういう内容の試験で証明すれば承認されるかがはっきりわかっている
ということ。

これまでキャンバスがやってきたいくつもの臨床試験は、その試験で出たデータを元に「次の試験に進むかどうか」「次の試験をするならどのような内容にするべきか」を考えるために実施したものであり、試験スタート時点はもちろん、試験が終わってデータを見るまで、いわば「手探り」をするためのものだった。

今回は、直前に実施したフェーズ1b試験の良好な結果を元にFDAとディスカッションし、CBP501がシスプラチン・オプジーボとの併用で膵臓癌の3次治療薬として米国で承認を得るためにどのような第3相試験が必要かについて、双方の認識の擦り合わせが出来た。
今回計画している内容の第2相試験を実施することによって、承認に至るために必要な要件を満たす第3相試験を最も経済的で効果的に実施できる。
つまり、第2相試験スタートの時点で既に、この試験が終わったら次になにをすればよいか見えている。

さらに、このあとの試験で獲得できるデータがどのような内容になるかについてもこれまでの臨床試験や非臨床試験から概ね想定でき、今後の開発投資とリターンを概算できる状態まで来たと考えている。

――FDAとの合意があるということか。それはどのような内容か。

書面での合意ではないが、承認までに証明が必要と考えられる事項について科学的な基盤に立ったフェアなディスカッションができている。私たちが合理的と考える主張については、多くの点で認識を擦り合わせることができているし、私たちの主張と異なる指摘をFDAから受けたポイントについてはそれらをカバーする内容で第2相試験を設計できた。

開発戦略の内容にかかるものなのであまり詳しくは説明できないが一例だけ挙げると、CBP501の目指す3剤併用など多剤併用のピボタル試験では、予め各薬剤が単独や併用でどのような貢献をしているか明確でないと対照群の設定の妥当性が問題になりやすいが、今回は予めFDAとのディスカッションで妥当な対照群が明らかになっている。

財務基盤で大手に劣る創薬ベンチャーの臨床開発においてとても大事なのは、
承認のために必要な試験をやり残さずきちんとやること、
不必要な試験をやらないこと。

その見極めについてFDAとの間で認識の擦り合せができており、その価値は大きいと考えている。

――今後の開発投資とリターンを計算できるとはどういう意味か。

今回発表した第2相試験の各アームが勝ち抜け/通過/脱落する確率は過去のデータから概ね推定でき、それらの結果によって、その後承認までにどんな試験をするべきか半自動的に決まる。
パターンごとに必要なコストや期間は異なるが、そのパターンはさほど多くなく、2〜3の場合分けで承認までのコストや期間を想定することができる。

――それらパターンと発生確率の見込みについて教えてほしい。

「第2相試験ステージ1で3剤併用投与群いずれかまたは両方の有効性が示され、かつ、2剤併用投与群がいずれも脱落するケース」では、中間解析の結果で早期に比較的小規模(250人程度か)な第3相試験を始めることができ、これを金メダルと呼んでいる。そうなる確率は63〜30%と見込んでいる。

同様に、銀メダルは「第2相試験をステージ2まで実施して2剤投与群がいずれも脱落し、2投与群の第3相試験」で確率30〜40%、銅メダルは「第2相試験をステージ2まで実施しても2剤投与群のいずれかまたは両方が脱落せず、3〜4投与群の第3相試験を実施」で確率5〜8%。

CBP501を含む2投与群がいずれも脱落し第2相試験が失敗に終わるのがメダル不獲得で、その確率は2〜22%未満と見込んでいる。

――発生確率はどのような前提で計算したのか。

フェーズ1b試験で示された効果がCBP501の「真の実力」と想定し、それが臨床第2相試験でも同様に発揮されるという前提で計算したのが前の数字(金メダル63%・銀メダル30%・銅メダル5%・失敗2%)。
「真の実力」がそれより下で、フェーズ1b試験で示された効果の7割しか臨床第2相試験で発揮されないという想定で計算したのが後ろの数字(金メダル30%・銀メダル40%・銅メダル8%・失敗22%)。

――CBP501の用量を減らしたB群の設定の背景を教えてほしい。

従来型の抗癌剤は、死に直結する癌と戦うために多少の犠牲を払ってでも効果を最大限に得るという考え方のもと、患者さんが副作用に耐えられる限界に近い投与量(最大耐用量)で承認されてきた。
しかし、実際には従来型抗癌剤ですら最大耐用量よりも低い投与量の方が良い可能性が指摘されており、ましてや、従来のような細胞傷害型と異なる抗癌剤では、至適投与量が最大耐用量でない可能性が高いと考えられている。
そこで近年FDAは、市販承認前の試験で薬剤の様々な投与量での試験を行うことを推奨している。
この考えに沿ったFDAの薦めに従いCBP501の低投与量群を加えた。

実際、今回のフェーズ1b試験の用量漸増相では、患者数が少なく結論的なことは言えないが、低用量群が良い結果を出していた。このため、我々は、CBP501通常量投与群と低用量投与群は、同程度の結果を出す可能性があると考えている。

投与群が1つ増えるということで資金的なデメリットはあるが、結果として、成功確率計算の数字がとても良い値に落ち着き、この1群追加が開発投資のリスク・リターンの計算上とても良い方向に寄与した。

――臨床第2相試験開始にあたって財務上の懸念はどうか。

昨年発行した第16回新株予約権は、行使価額がやや低調に推移しているものの順調に行使されており、第2相試験ステージ1完了までの資金手当ては概ね問題ないと考えている。