マネジメントブログ

第2四半期決算を公表しました

昨日、2018年6月期第2四半期決算短信を公表しました。
1日遅れてしまいましたが、今回のブログはこれにまつわる補足ご説明を。

第2四半期決算トピックス

ご覧のとおり、昨年8月10日に公表した業績予想(第2四半期累計事業収益55百万円・営業損失264百万円・経常損失264百万円・当期純損失264百万円)とほとんど一致する結果となりました。

事業収益(売上高)はこれまでどおりStemline社からの技術アドバイザリーフィーです。
この収益がほぼ安定的に計上されるのは2018年12月までとなっており、次の安定的収益の確保はキャンバスの当面最大の急務です。

前年同期よりも営業費用が増加しているのは、ほぼ全額が、昨年10月に始まったCBP501と免疫チェックポイント阻害抗体の併用によるフェーズ1b試験に伴うものです。
期首の段階で予想していたとおりに臨床試験が始まり、ここまでのところ想定どおりの進捗となっています。

「臨床試験の順調な進捗」について

ここで念のため…
フェーズ1b試験はおかげさまで順調に進捗していますが、「順調な進捗」と言っても、最初から予定症例数42名が一気に進むということではありません。
今回の試験の最初の18例(最大)は、CBP501・シスプラチン・抗PD-1免疫チェックポイント阻害抗体ニボルマブの3剤を併用するときの推奨投与量を決める「用量設定フェーズ」です。
用量設定フェーズでは、3例1グループ(コホートといいます)への投与と経過観察で安全性を確認した上で、用量を上げた次のコホートの組入れを実施します。
これを最大6回繰り返すことになっています。
また、その繰り返しも、次から次へとポンポンと進むものではありません。
たとえば、組入れの際には各種検査が実施され(スクリーニングといいます)、その結果が「組入れ基準」に合致していない患者さんは残念ながら臨床試験に参加していただけません。
その場合にはまた新たな患者さんの組入れを実施することになり、各種検査の結果待ちなどでスケジュールが長引きます。
キャンバスの事業計画は、そういった遅延もある程度想定に入れたスケジュールにしてあります。

「それならば、あらかじめ多めにスクリーニングしておけばいいのでは?」
と思われるかもしれません。
はい、ルール上は可能です。
ですが、現実問題として、組入れ基準を充たす患者さんが予定数よりも多かった場合に、臨床試験に参加するために貴重な時間と手間を掛けていただいた末に『予定数がほかで充足されたので』とお断りすることになってしまいます。
道義上の問題があるので、そのような方法は一般に採られないのです。

前回のブログで河邊の書いている

はたからご覧になって「遅い」と感じられることと思います

の背景に、こんな事情もあることをご理解いただければ幸いです。

特別利益「新株予約権戻入益」

今回、特別利益「新株予約権戻入益」16,254千円を計上したため、経常損失よりも四半期純損失のほうが小さな値になりました。
この「新株予約権戻入益」は、ストック・オプション目的で2010年11月に発行した第7回新株予約権の行使期限が2017年11月に満了し、53,300株分が行使されず失効となったため、純資産に計上していた「新株予約権」を特別利益勘定に振り替えたものです。

「継続企業の前提に関する重要事象等」

最後にご説明するのは、「継続企業の前提に関する重要事象等」です。
「継続企業の前提? GC注記? 『注記には記載しておりません』とはどういう意味?」
と混乱しやすい話題です。

会社が財務諸表を作成するときには、その会社が将来にわたって継続して事業活動を行うことを前提としています。
このことを「継続企業の前提」といいます。
その前提があるとないとでは、財務諸表の数値が変わります。
たとえば500万円の機械設備を購入したとして、企業が将来にわたって継続して事業活動する前提で考えればその機械の帳簿上の価値は500万円を減価償却したものですが、もうすぐ事業をやめる前提で考えるなら、機械を売却処分したときの想定手取り金額を表示するほうが適切ということになります。
そのため、この前提が成立しているかどうかは財務諸表の作成上とても重要な話です。

事業運営が思わしくない状態が続くと、その前提が成立しているかどうかを疑わねばならない局面に至ります。
その状況のことを
「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況」
といい、一般に『継続企業の前提に関する重要事象等』と略称されています。

具体的には、
「売上高の著しい減少」
「継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュフローのマイナス」
などが見られる場合には、会社は『継続企業の前提に関する重要事象等』が存在することを表明し、有価証券報告書の「事業等のリスク」などにその内容を具体的にわかりやすく開示することになっています。

キャンバスは、研究開発段階のベンチャー企業であり、研究開発支出が先行することから、現時点では営業損失や営業キャッシュフローのマイナスが生じることは回避しづらく、この『継続企業の前提に関する重要事象等』を記載しています。

さて、この『継続企業の前提に関する重要事象等』が存在する場合、次の段階として、
「その状況を解消・改善できる見通しがあるかどうか」
を判断することになっています。

解消・改善できる見通しがなかったり、解消・改善のための対応をしてもまだ重要な不確実性が存在すると考えられる場合には、「継続企業の前提」に関する不確実性を財務諸表に反映しなければなりません。
そのときは、財務諸表をすべて「継続企業の前提」なしで作り直すわけではなく、作り直す代わりに、財務諸表に「注記」を記載します。
一般に「GC注記」と呼ばれるもので、具体的には
《なお、財務諸表は継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性を財務諸表に反映しておりません。》
といった記載になります。
つまり、平たく言うと
「継続企業の前提が成立していないおそれがあるけれど、その不確実性は反映せずに作った財務諸表ですよ」
という注意書きなのです。

キャンバスは現在、『継続企業の前提に関する重要事象等』は存在するものの、その状況を解消・改善できる見通しがあり、重要な不確実性はないと判断しています。
そのため、財務諸表に「注記」を記載していません。

昨日公表した四半期報告書には、

これらの対応策の実施に加え、財務面では、現在の事業見通しにおいて当面の支出予定を充たす現預金を有しているほか、単独で黒字の計上には至らないもののCBS9106提携にかかるStemline社からの概ね安定的な収益も見込まれているため、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しており、四半期財務諸表の注記には記載しておりません。

の一節があります。
わかりにくい日本語ですが(定型なのでしかたないのです…)、このブログ記事で少しでもご理解が進めば幸いです。

今回の第2四半期決算に関する機関投資家・アナリスト向け説明会は、2月22日を予定しています。