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”STAND UP TO CANCER”

2016年06月29日 15:10

河邊 拓己

本日、「ファルマバレープロジェクトとのIDO/TDO阻害剤共同研究契約締結のお知らせ」を公表しました。
静岡県が推進するファルマバレープロジェクトの一環として、(公財)静岡県産業振興財団とキャンバスとの間で、静岡県立大学大学院薬学研究院創薬探索センターが有するIDO/TDO阻害剤候補化合物の構造最適化および評価について共同研究を始めることになりました、というお知らせです。

IDO/TDO阻害剤とは

IDOとTDOはいずれも、必須アミノ酸の一つであるトリプトファンを代謝する酵素です。
このトリプトファンの代謝物キヌレニンには、免疫反応を強力に阻害する作用があります。
これが、癌と戦うはずの免疫細胞をも抑制してしまっている。
だから、この抑制を取り外すためにIDOとTDOの働きを阻害しようというものです。

抗癌剤開発のパラダイムシフトを起こした、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体。
これらは、癌と闘うはずの免疫細胞にブレーキを掛ける分子の働きを抑えます。
自己と非自己のわずかな違いを峻別して攻撃する免疫細胞は、一歩間違えると自己をも攻撃してしまう(自己免疫疾患、移植片対宿主病、劇症肝炎など多くの重篤な病気の原因です)ので、そうならないようにたくさんのブレーキ機能が張り巡らされています。

CTLA-4やPD-1の様な細胞表面にある蛋白だけでも、これらの他に、PD-L1、PD-L2、LAG-3、TIM-3、BTLA、VISTAなど多数の分子がありますが、それ以外に、液性因子でブレーキの働きをすることが知られている物もたくさんあります。
例えば、サイトカインのIL-4・IL-10・IL-13、多くのケモカイン、プロスタグランジン、一酸化窒素、アデノシンなど。
そんな中の一つが、キヌレニンです。

この数多くある免疫反応のブレーキや、同じくらいたくさんあるアクセルの一つ一つが、新しい抗癌剤開発の標的の候補として、どの1分子をとっても激しい開発競争が行われています。
もちろん、IDOやTDOの阻害剤もその筆頭格で、欧米では既に複数の会社がIDO阻害剤の臨床試験を実施しています。
今年のASCO(米国臨床癌学会)でも、その早期臨床試験の有望そうな報告(こちら)がありました。

今回の共同研究は、IDOとTDOふたつの酵素を同時に阻害する化合物なので、IDO/TDO阻害剤と表記しています。

STAND UP TO CANCER ~ キャンバスが外部との協働に積極的な背景

キャンバスは最近、最先行開発品CBP501に免疫系抗癌剤との相乗効果が期待出来るような作用があることを発見したことによって、運命のごとく免疫系抗癌剤開発の道に足を踏み入れました。
(何を隠そう、私が京都大学の大学院で研究をしていたのは「免疫」研究所。そのときにある事情で席をお借りしていた教授が、いまPD-1で脚光を浴びている本庶先生なのです。)
そして、これまで社内に蓄積した抗癌剤臨床開発や抗癌剤に関わる基礎研究における様々なノウハウを駆使して、欧米の大きな予算を使った絨毯爆撃的研究開発に引けをとらない開発を目指しています。

つい最近まで、キャンバスは国内の大学や機関と共同で何かをすることは希でした。
それは、CBP501とCBS9106については、社内と科学顧問会議だけでコアの部分に関する科学的な事は完結できたし、臨床試験は欧米で行い、それに関わる事は欧米の方たちとの共同作業だったので、必要性がなかったからです。

今、免疫系抗癌剤の世界を見据えるに至って、状況が変わりました。
キャンバス独自のコンセプトからCBP501やCBS9106を創出したのと異なり、免疫系抗癌剤の領域については外部にたくさんの協働可能性があります。
そのため、自社だけでなく外部の個人や組織と協力することで、より早く良い薬を見いだすことにつながると考えられます。
また、もうひとつ大きなポイントは、設立から16年に及ぶ基礎研究と臨床開発の実績を通じて、外部の方々と協働をするための「しっかりした自分たちのノウハウ(=『軸』)」が蓄積できている自信がついたことです。

思えば、私たちが名古屋市立大学を出て実験する場所に困っていたとき、静岡県立がんセンターが建設途中でその周辺に健康や創薬産業を集積する構想(ファルマバレー構想)が存在することを伺ったのが2000年頃です。
静岡は名古屋や東京に比べて広々としていて、留学や出張先の米国の快適さに似たところがあると思っていましたが、最近、その地元のファルマバレープロジェクトの方々とお話をしていて、欧米のような自由な協働が出来そうな予感がしてワクワクしています。

米国では、STAND UP TO CANCER(スタンドアップトゥキャンサー、癌に向かって立ち上がる)という、臨床・基礎・化学・統計など様々な先端異分野のグループや時には競合関係になるようなグループの共同作業を促す(そして大きな資金援助を伴う)プロジェクトが大々的に行われています。

我々のまわりでも小規模ながら、東京大学との共同研究ファルマバレーの化合物ライブラリー使用、そして、社内の異分野であるコンピュータ化学者との連携作業など、みんなで力を合わせて難治性癌の治療法を見いだす活動が、少しずつ大きくなり始めています。
今回発表したIDO/TDO阻害剤共同研究は、そんな流れの中の大きな一歩です。

我々だって、ずっと前から”STAND UP TO CANCER”しているつもりです。

創薬のさまざまな要素は、皆さんがご想像・ご期待しておられるほど速くは進まないことだらけです。
それでも、適切な協働を展開することによって少しでも早く、かつ着実な、成果を出していきます。
請うご期待!です。

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