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今回の学会発表の意義

2015年10月27日 15:15

河邊 拓己

今日の適時開示でお知らせしたとおり、11月5日から米国ボストンで開催される第27回AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics(米国癌学会・米国国立癌研究所・欧州癌研究治療機構共催の「分子標的と癌治療に関する国際学会」)で、CBP501に見つかった新しい作用機序3つそれぞれについて、学会発表をします。

この学会は、研究主体の米国癌学会(AACR)と臨床主体の米国臨床癌学会(ASCO)の中間的存在で、新しい抗癌剤のタネを求めている人々にとっては、比較的コンパクトで中身が濃いと定評があります。
抗癌剤開発に特化した米国人コンサルタントが
「この学会に行けば、会いたい人全部に一度に会える」
と言うぐらい、新規の抗癌剤開発に関わる主要人物たちが集まる学会です。

CBP501は、プラチナ系抗癌剤の作用を癌細胞に特異的に高める薬剤として開発をしてきましたが、既にお知らせのとおり、肺癌臨床試験結果の解析を介して、今まで気づいていなかったとても有望な作用がある可能性(仮説)が見いだされました。
しかも大きく分けて3つも。
そしてそれらは、今まさに流行のまっただ中のテーマに関わるものです。

おそらく、今回の発表の中で科学者でない方にもわかりやすいデータは、今一番もてはやされている免疫チェックポイント阻害抗体PD-1とCBP501との併用効果が期待できると考えられ、そして実際にマウスの実験でそうなったというデータでしょう。
これももちろん大きな成果です。

ただ、私たちの今回の発表の意味はそれだけではありません。
CBP501が「癌免疫」「癌微小環境」「癌幹細胞」というどれひとつをとっても抗癌剤開発の最前線のテーマに同時に広く関わるという実験結果を示せたことは、肺癌臨床試験で観察されたCBP501の効果(生存期間の延長)が生じた理由を上手に説明できるだけでなく、CBP501の持つ大きな潜在的可能性も示しています。

(なお、前回のブログ記事「株主報告会ピックアップ」の前半で、これらテーマのご説明をしています)


ある抗癌剤候補化合物がどのような作用を持っているかは、科学的な証明をしなければ他人は信じませんし、たとえ人に信じさせることができたとしても、事実でなければ癌とは戦えません。
医学・生物学の世界では、多くの場合、さまざまな実験を積み重ねて、その仮説が正しいという主張をします。
もちろん、正しくないという根拠が見つかってしまう場合も多々あります。

正しいと思われる根拠を他の科学者の目で吟味してもらえる主な場は、学会発表と論文発表です。
学会も論文誌も今はとてもたくさんありますが、それぞれ、どこで発表したかによって「お墨付き」のレベル感が異なります。
今回の学会は、「お墨付き」レベルの高い学会です。
(因みに、質の高い学会では、発表させてもらうのに審査があります。そうでない学会には、学会費用を支払いさえすれば何でも発表できてしまうものもあります。)

もちろん、論文誌としてはトップクラスのNature誌に掲載された論文の内容が再現できないというのは案外よくあることで、時には、スキャンダル的な「事件」のような出来事になることもあります。

論文を通すのには、文筆家としてそれなりの技術が要求されるので、素晴らしい結果でも、なかなか論文が通らないなんてこともあります。
(STAP細胞の論文についても、初めの頃、そんなことが言われていましたよね。)
一方、とてつもない大発見が、小さな学会や有名でない雑誌に掲載される場合もありますが、多くの場合それは「まゆつば」だったりします。


抗癌剤(候補)の場合、最終的に患者さんに効果があれば理屈なんてどうでも良いのですが、倫理的にも経済的にも訳のわからないものをかたっぱしから患者さんで調べる(臨床試験をする)ことはできません。
そこで、効果の得られる可能性をできるだけ高めるために、科学的根拠の積み上げが必要になります。
しかし、残念ながらもちろん、人類の科学的知識は、まだまだ不完全です。


さて、「科学が根拠だから、公平に可能性の高い順番に臨床試験に入ることができる」と思いがちですが、実際は相当複雑です。
臨床試験には莫大な費用がかかりますので、最終的には、お金を持っている(あるいは動員できる)人(や組織)が、最終判断をすることになります。
多くの場合、決定権を握っているのは現役の科学者ではありません。その為、その人(あるいはその組織)を上手に説得する必要があります。
そして、説得に必要なのは、必ずしも科学的なことばかりではありません(論文を通すのに技術が要るように)。
科学の部分だけに限っても、極端でわかりやすい例でいうと、コペルニクスがそれなりの根拠を持って地球が回っていると言っても誰も信じてくれなかったように、現在の科学でも、しばしば多数の常識が間違っていることがあります。
また、多数の常識ではなく、声の大きい人の常識が多くを支配してしまうことも多々あります。
そんな中で、声の小さなベンチャー企業の我々にできることは、可能な限り主要な学会や論文誌で発表をするということになります。
時間がかかることですが、しかたがありません。
(いつの日か、キャンバスが成長して、自ら最終判断を下せるようにしたいものです!)


そういう意味で、我々にとって今回の3本の学会発表は、とても重要なものなのです。

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