マネジメントブログ

キャンバスの適時開示と創薬ベンチャーの価値評価

10月27日・28日と、たまたま適時開示が続きました。
いずれも今期の業績に直接の影響はありませんが、キャンバスの中長期的な企業価値向上に好影響をもたらす内容でした。

「キャンバスさん、開示2連発とはインパクトを狙いましたね」
そうおっしゃる方がおられます。
冗談とはわかっていますから真顔で否定するのもみっともないかもしれませんが、敢えてこの場で
「とんでもない、そのような意図は一切ありません」
とお応えしておくことにします。

27日の「CBP501新知見に関する学会発表について」は、学会のウェブサイトにアブストラクトが公表された当日のうちに開示したもの。
28日の「抗癌剤候補化合物CBS9106 欧州特許庁より特許査定受領のお知らせ」も、特許査定の情報を受領してすぐその日に開示しました。
少し遡ると10月5日の「CBP501用途特許 米国特許庁より特許査定受領のお知らせ」は異例の朝一番の開示でしたが、当日のブログ記事にも書いたとおり、前週末に受領した情報の重要性に鑑み、情報管理の観点から日本の平日を経過させることのないよう月曜の朝一番・市場が開く前に公表することにしたものです。

合わせると今月これまでに3件の適時開示をしたことになりますが、すべて「たまたま」その日に開示すべきだったから開示したわけです。
言うまでもなく適時開示は、その語のとおり「適時」(タイムリー)に開示するものです。
決定事実であれ発生事実であれ、ポジティブな内容であれネガティブな内容であれ、会社の都合で開示タイミングを操作することはしませんし、できません。


ともあれ、キャンバスがしっかり戦略と長期展望を持って水面下で必要な手を打ち続けていることの現れとなるニュースを相次いでご報告でき、大変嬉しく思っています。
水面下の業務が多すぎるしいちいち時間も掛かりすぎるため、水面上に現れてお知らせできるような出来事がなかなか発生しない業種・業態です。
これからも、こうした機会ひとつひとつを捉えて、しっかりとその意義をお伝えしていきたいと思います。

✽ ✽ ✽


さて、今日は少し毛色の違う話題を。

適時開示をすることが求められる会社情報とは、
《適時開示が求められる会社情報は、有価証券の投資判断に重要な影響を与える上場会社の業務、運営又は業績等に関する情報》
(東京証券取引所『会社情報適時開示ガイドブック』)
のことです。

今回相次いだ「特許成立」や「学会発表」は、これに該当するのでしょうか。
キャンバスでは、いずれも「投資判断に重要な影響を与える」情報だと考えています。

投資家の皆さんがキャンバスへの投資判断をどのようになさっているか、私たちにはうかがい知ることができません。
現時点の当社は事業収益(売上高)も小さく利益も配当もありませんから、一般に用いられる株価収益率(PER)や配当利回りなどの尺度は通用しません。

そこで考えられるのは、
「開発段階で赤字の創薬ベンチャー企業の現時点の企業価値は、
『開発中の化合物が医薬品として承認され上市された場合に実現するであろう価値(利益、キャッシュ・フロー)』を
『医薬品として承認されるに至る可能性』と『時間価値』で割り引いたものである」
とする評価方法です。

(この考え方の詳細については、長くなるのでここでは割愛します。いずれ稿を改めてしっかりとお伝えしたいと思います。)

そのベースで考えると、今回相次いだ「特許成立」や「学会発表」はいずれもこれらの各要素を変動させるものであり、明らかに「投資判断に重要な影響を与える」情報ということになります。

10月5日公表の「CBP501用途特許」は、CBP501が特許で保護される期間を伸長することが期待され、「CBP501の開発が成功し上市された場合の価値」(期待値)を高めます。
10月27日の「CBP501新知見学会発表」は、審査のある学会でCBP501が潜在的に有している可能性の拡がりを発表できることはそれ自体がキャンバスの研究・開発の品質に関する第三者評価の現れであるとともに、これをきっかけとして現下の最重要課題である提携獲得活動に弾みが付くと期待されることから、「CBP501が医薬品として承認されるに至る可能性」や「時間短縮」への期待を高めます。
10月28日の「CBS9106 欧州特許庁より特許査定受領」は、特許の効力が及ぶ地域が拡大することで、「CBS9106の開発が成功し上市された場合の価値」(期待値)を高めます。


投資家のみなさんに、ニュースひとつひとつの「良い」「悪い」だけでなく、このような
「この情報は企業価値をどのくらい上げる(下げる)のだろう」
という観点で、今後のキャンバスや他の創薬ベンチャー企業各社の適時開示をご注目いただけると良いなと思っています。