マネジメントブログ

候補化合物の最適化

今年8月の決算説明会で私たちは、「CBP501臨床試験」「後続パイプライン創出」と2つの中長期活動計画を公表し、その初年度の目標としてそれぞれ「臨床試験開始」「少なくとも1つの開発候補化合物を確定」を掲げました。

これらのうち「CBP501臨床試験開始」については、このブログでお伝えしてきたとおりです。
関連するあらゆることが最も理想的(費用支出の面では前倒しになるので、業績予想を保守的なものにするためキャンバスでは最も理想的な進行を前提として業績見通しを策定しています)に進行しているわけではないものの、当初想定されたペースで準備が進んでおり、目標に掲げた「今期中の開始」を実現するべく取り組んでいます。

今日は、もうひとつの「後続パイプライン創出」について。

現在キャンバスが最適化を進めている後続パイプラン候補には、ペプチド型化合物「CBP-A」「CBP-B」、低分子化合物「IDO/TDO阻害剤」があります。
https://www.canbas.co.jp/pipeline/

CBP-Aシリーズは、キャンバス創業の出発点となったペプチドTAT-S216とそれを最適化し創出したCBP501の系譜に属する、ペプチド型抗癌剤です。

CBP-Bシリーズはそれと異なり、CBP-Aシリーズとまったく別の発想から作製したペプチド型抗癌剤候補です。
その特徴は、免疫抑制を解除するメカニズムの抗癌剤であること。
キャンバスがこれまでの臨床試験で得たデータをもとに積み上げてきた癌免疫・癌微小環境にかかる知見を盛り込んだものです。

・・・このような説明では、わかったようなわからないような感じですよね。実は、こんなに奥歯に物の挟まったような説明になっているのは、あとほんの少し踏み込んで説明するだけで、これら化合物の特許性に影響してしまうからなのです。
そのため、これ以上のご説明は現段階で難しいです。ごめんなさい。

私たちは、これらふたつのアプローチで、キャンバスの得意領域である「癌」「ペプチド」「免疫」の領域での新規化合物創出を目指しています。
(ただ、直近ではさらにCBP-AとCBP-Bのアプローチを組み合わせた化合物も検討しているので、いずれこれらのシリーズ分類は意味のないものになってしまうかもしれません。)

ところで、この説明の中に何度も出てくる「最適化」。

最適化とは、細胞レベルでの実験や動物試験、あるいはコンピュータを用いて、候補化合物の分子構造を少しずつ変化させ、より最適なもの(抗癌活性の強いもの、癌特異的な作用の強いものなど)に改良することです。

そういう通り一遍の説明だけではわかりづらいかと思うので、この機会にもう少し詳しく、基礎研究チームの活躍をご紹介することにします。

キャンバスのペプチド型化合物の最適化は、概ね次のような手順で進められます。

1. 設計
意図した効果を発揮するよう、ペプチド型化合物を設計します。

2.作製(委託)
設計された構造のペプチドがた化合物の作製は外部の専門業者(もちろん厳密な守秘義務契約を結びます)に外注します。
ひとつのペプチド化合物をひととおり実験するために必要な量だけ作るのに、簡単に製造できる場合で一桁万円、製造の難しいものでは数百万円前半くらいかかります。
また、場合によっては、理論上は作れるはずのペプチドが実際には作れないといったケースもあります。
作製に要する期間もまちまちで、簡単なもので4週間程度、製造の難しいものでは6ヶ月ほどかかることがあります。

3.実験
作製され届いたペプチド型化合物を使って、自社研究所での実験や簡易動物実験(キャンバスは本社に簡易動物実験施設があります)を実施します。
投与量などいくつかの条件を振ったグループでひととおりのデータを得て確認・検証するために、概ね3ヶ月くらいかかります。

4.設計改良
実験の結果をもとに、化合物の分子構造の一部を改変します。

5.改良したペプチドの作製(委託)
2.と同じです。
以後、より良いペプチド型化合物ができるまで、2.~5.のループを繰り返します。

6.開発候補化合物確定
納得いくまで2.~5.のループを繰り返し、医薬品として開発するに値すると判断できる化合物を確定します。

こうして最適化されたあとに続くGLP/TOX前臨床試験の準備については、長くなるのでまたいずれ。

現在、CBP-A・CBP-Bの化合物は、既に2.~5.のループを複数回繰り返して改良が進み、6.に進む化合物を絞り込む段階にあります。

1回の改良ループに数ヶ月かかるので確実な約束は難しいのですが、今期(2017年6月まで)の目標として掲げた「少なくとも1つの開発候補化合物確定」を実現するべく、引き続き少数精鋭が一丸となって取り組んでいます。