マネジメントブログ

臨床試験の開始訪問に行ってまいりました

8月18日、米国アリゾナ州での臨床試験の開始訪問に行ってまいりました。

いよいよ、CBP501・シスプラチン・オプジーボの3剤併用によるフェーズ1b臨床試験の患者さんの登録が始まります。

開始訪問(Site Initiation Visit、SIV)というのは、臨床試験を始めるための大量かつ多様な文書作業を完了(キャンバスの少数精鋭の臨床開発専属担当者も目一杯頑張りました)した段階で臨床試験スポンサーが実施施設を訪問し、施設が患者さんを受け入れるための最終打ち合わせ・キックオフを行うことです。

開始訪問では、実施施設の契約担当者・コーディネーター・医師・薬剤師・看護師・点滴看護師・さまざまな検査の担当者・データ入力担当者などが一堂に会して、試験の全体像をシェアしながら、細かな実務の確認などを行います。

CBP501そのものの性質や、シスプラチン・オプジーボとの3剤併用をする根拠・意味、その際に注意すべき事柄を周知する、大切な場です。
また、治験医をはじめとする鍵となるスタッフほぼ全員と対面して話ができることは、お互いの人間性にも触れ、信頼関係や今後の連絡の緊密さを作り出すための、またとない機会でもあります。

今回は特に、このフェーズ1b試験に対する医師の興味・意欲の高さが感じられ、元気をいただいた会でもありました。

実はこの施設には、まだ海のものとも山のものともわからなかったCBP501が2006年に初めて人に投与された臨床第1相試験のときの点滴看護師や治験医がいます。
とても懐かしく、安心してCBP501を任せられる施設です。

当時ここで治験医から聞いた、こんな話があります。

抗癌剤候補物質が初めて人に投与される試験の、特に初期の患者さんは、
「効果は期待できません。副作用は予想がつかず、命の危険さえあります」
というような説明(インフォームド・コンセント)にご納得いただき投与されます。
誰もそんな治療は受けたくないのが当たり前です。
そんな中、
「私の癌に効く治療法がないのなら、せめて後の人たち、ひょっとすると自分の子や孫が癌になったときに役に立つ可能性のためにこの治験を受けます」
という患者さんが現れるのだそうです。

すべての抗癌剤、抗癌剤候補、もちろんCBP501も、そういう方たちのお陰でここまで進んできています。

私たちは、文字通り「命をかけて」癌治療の進歩に貢献した人たちから託された仕事をしていると思っています。

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現在、免疫系抗癌剤の臨床試験は、1,250社以上の手によって3,000件以上行われているそうです(ASCO2017, Dr. Hamid)。
確率は低いけれど、運が良ければ劇的に余命が伸びるかもしれないので、臨床試験に参加する患者さんも増えています。

これまでは、臨床試験の患者登録スケジュールというのはほぼ必ず、当初の計画や予想より遅れるものでした。
しかし現在は、有望そうな臨床試験では当初の計画や予想を上回るペースで患者登録が進むようになってきています。

それでは、CBP501の今回のフェーズ1b試験は「有望そう」なのかどうか。
これについて、今回ちょっとしたエピソードがあります。

先日、米国で有数の実績と知名度を持つある治験施設の早期臨床試験担当医から、
「CBP501の臨床試験を自分のところでやらないか」
とお誘いの連絡があったのです。

キャンバスが米国で臨床開発を始めてから11年ほどになりますが、キャンバス科学顧問会議メンバーと直接の関係のないいわゆるトップクラスの施設側からお誘いをいただいたのは初めてです(お誘い自体はこれまでもありましたが)。

このような声がかかったのには、地道な研究をひとつひとつ学会発表や論文に仕上げてきたキャンバス基礎研究チームの頑張りが貢献していると思います。
また、仮にCBP501が有望かどうかとは別の理由の連絡だったとしても、現実に進行癌で有効な治療法がなく藁にもすがる思いの患者さんや医師が大勢いることは確かです。

期待どおりの効果が出ますように。

今は、「人事を尽くして天命を待つ」気持ちです。