マネジメントブログ

株価や株主価値について、私たちが考えていること(2)『長期目線』

国内運用会社医薬品アナリストから、2020年夏にキャンバスチームに加入した日比野敏之です。
前回に続き2回目となる今回のブログ記事では、
「株価の 『長期目線』について」
いわゆる株屋の出身として、今、思うところのものを記します。よろしくお願いいたします。

当社に限らず、会社からはよく

株価については、長期で見てほしい
長い目で見守ってほしい
長期で(株を)保有していただきたい

などと発信されます。

一方で株主側からは、

長期、長期と言うが、いったいいつなんだ
長期など、とても待てない
すぐに結果を出せ

などの厳しい声も当然あります。

私の第1回ブログ(2020年10月07日)では、株価や株主価値について一般的に、
当社のようなバイオベンチャーの場合

本当の株主価値 [本当の株価]
= 開発品への評価 × 何かしらの割引・何かしらの過剰期待

としました。

今回は、

株主価値 [株価]
= 保有する現金や不動産などの資産 + 将来の稼ぐ力・将来の利益

のほうを使用し、特に「将来の稼ぐ力・将来の利益」について、どのくらい「長期」の将来利益の可能性がどのくらいの規模で株価に盛り込まれ得るのかを考えてみたいと思います。

医薬品領域で「将来の利益」が株価に織り込まれた事例をいくつか見てみましょう。
皆様のご記憶にあるものも多いと思います。

脳梗塞の最終試験結果の判明前に、その治療薬の発売7年後程度のEPSなどが株価に織り込まれたケース
≒ 発売5~10年後の将来の利益が株価に織り込まれた と試算

アルツハイマー治療薬の米国FDA申請後に、その治療薬の発売10年後程度のEPSなどが株価に織り込まれたケース
≒ 発売7~12年後の将来の利益が株価に織り込まれた と試算

もしくは、同じケースの別の解釈として、

アルツハイマー治療薬AAAの米国FDA申請後に、AAA薬の発売と次に控えるBBB薬の試験成功までもが株価に織り込まれたケース
≒ 発売5~7年後の2つ以上の開発品に関する将来利益が株価に織り込まれた と試算

などなど、多くの例が、過去に存在したと認識しています。

※なお上記の試算はすべて、私の個人的なDCF等を用いた株価計算(5~10年後からは永久成長率0%と仮定)によるものです)。

また、大手医薬品メーカーでも、非常に開発成功確率が高いことを実績で示していれば、前臨床段階の開発品までもが株価に織り込まれるケースもありました。
≒ 開発期間5~7年 + 発売5年後の将来の利益が株価に織り込まれた
= 合計10~12年後までも株価に織り込まれた と試算

一方で、数年前の国内医療機器メーカーなどでは、

「株主価値 [株価]
= 保有する現金や不動産などの資産 + 将来の稼ぐ力・将来の利益

「将来の稼ぐ力・将来の利益」が全く評価されていないケースもありました。
いわゆる「PBR1倍」もしくは「PBR1倍割れ」です。
また、医薬品・バイオ・医療機器セクター以外では、足もとも、PBR1倍割れについて見聞きされること多いと思います。
(PBR: Price Book-value Ratio、株価純資産倍率)

つまり、以上見てきたとおり、12年も先の「将来の稼ぐ力・将来の利益」までもが株価に織り込まれるケースもある一方で、逆に、1年先の利益や将来の稼ぐ力すらも株価が織り込みに行かないケースもあったわけです。

このように、「将来の稼ぐ力・将来の利益」と株価は、密接に関係するものの、分からない部分も多いです。

特に、この「将来の利益」が「いつ」株価に織り込まれるのかは、残念ながらパターンがなく、事前には分かりません。

ただ、当社は、開発品CBP501について、

次相臨床試験(フェーズ2試験もしくはフェーズ2・3ピボタル試験)の内容については、提携パートナー候補先や関連機関等とも協議し、大まかな開発スケジュールとともに、2021年2月〜5月を目処に公表する予定

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4575/tdnet/1884672/00.pdf

とプレスリリースで明示しています。

前回のブログでも書いたように、当社に対する株式市場からの評価について私は、

当社の有する開発品CBP501やCBS9106や前臨床段階の化合物が、高い確率で、すべて(将来)発売できないと思われている(すごく割引されている)

https://www.canbas.co.jp/20201007/

と認識しています。

この認識が正しければ、これから開発品CBP501の後期臨床試験の準備や実施が進むにつれて、「将来の稼ぐ力・将来の利益」が徐々に株価に織り込まれることになります。

その「時期」や「規模」は上記のとおり分かりませんが、比較的近い将来に株価への織り込みが実現する可能性もあるのではないかと、個人的に(あくまでも個人的に)期待しております。