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適時開示「CBP501用途特許 米国特許庁より特許査定受領」

珍しい月曜朝一番の適時開示でびっくりさせてしまったかもしれません。
当社は本日(10月5日)、「CBP501用途特許 米国特許庁より特許査定受領のお知らせ」を公表しました。

米国のパテントロイヤー事務所からこの特許査定の連絡(Notice of Allowance)が当社に届いたのが、土曜の午前中。現地の金曜午後です。
情報管理の観点から、日本の平日を経過させることのないよう、月曜朝一番・市場が開く前に公表することになりました。
週末返上、月曜も早朝出勤。
ご対応いただいた東証上場部様、ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

今日のブログでは、この適時開示の「深掘り」解説をお届けします。

特許査定って?

特許庁の審査で特許権を与える価値がある出願発明であると判断されたことを示すものです。
この後に特許料を納付することによって特許権の効力が発生します。
(ちなみに、正しい文書タイトルは “Notice of Allowance and Fee(s) Due”、つまり「特許査定及び特許料等納付期限の通知」です。)
特許として確実に(特許料さえ納付すれば)許諾されることを示す最初の正式文書なので、この「特許査定」を受領した時点で適時開示をするのが普通です。
当社の今回の開示も、この慣習に沿っています。

用途特許って?

医薬品の特許の主なものには、「物質特許」「用途特許」「製造特許」などがあり、一般的に、これらを組み合わせることによって医薬品の権利が保護されます。
ごく簡単に言ってしまうと、
物質特許:新規の物質自体に与えられる特許
用途特許:既存の化合物に発見された新しい特徴が新しい用途に用い得るとき、その用途に対して与えられる特許
です。
(より詳しく知りたい方は、リンク先「コトバンク」の解説をご参照ください。)
CBP501について当社は既に、2003年に出願し既に日米欧など主要国で成立済みの特許を有しています。この特許は、CBP501を含む類縁の化合物(似たようなものを出されて特許を破られないために一般に類縁化合物群をまとめて特許化します)の「物質特許」であり、抗癌剤という「用途」、「製法」、「製剤」等の要素が含まれています。
今回の用途特許査定は、CBP501の投与対象を白血球数で絞り込むことによってCBP501の効果をより強く引き出せるという「用途」に特許性(新規性、進歩性)が認められたものです。

用途特許にはどんな価値がある?

CBP501について当社がこれまで保有していた特許は、2003年に出願したものです。
一般に特許による保護期間は20年ですから、2023年に特許が切れます。
医薬品については臨床試験を経て規制当局の承認を得ねばならないことなどが勘案され、国によって異なりますが概ね5年の「保護期間延長」が認められています。
しかしそれでも、2028年頃までということになります。
CBP501が成功裏に上市に至るとしても、そこまでに必要な臨床試験や承認審査にかかる年数を考えると、実質的な特許有効期間は10年足らずになってしまいます。

この実質的な保護期間は、残り期間が長ければ長いほどさまざまな戦略を選択できますから、理論的にも現実的にも、化合物の開発魅力(提携を持ちかけている先の製薬企業等にとっては「導入魅力」)に大きく影響します。
このため、製薬企業も創薬バイオベンチャーも、追加的な用途特許の獲得などによって実質的な特許有効期間を延ばす特許戦略を展開するものです。(物質特許の期間が切れても、用途特許を押さえていれば、実質的な権利保護が得られます。)
今回特許査定を得た用途特許によって、当社のCBP501について、特許によって保護される実質的な期間が大きく延長されると期待されます。
このため、CBP501の開発が成功し上市に至った場合の期待収益予想値、すなわち「CBP501の開発魅力/導入魅力」も、この特許査定受領によって大幅に増大しました。

キャンバスの展開への大きな意味

当社はこれからも、今回の用途特許獲得を皮切りに、開発中の抗癌剤候補化合物CBP501・CBS9106について、さまざまな特許戦略展開をおこなっていきます。
そのひとつめの成功例ということで、今回の用途特許査定受領には当社の展開上きわめて大きな意味があります。

また、かりにも特許ですから、「CBP501の投与対象を白血球数で絞り込むことによってCBP501の効果をより強く引き出せる」と認められるために、それを主張するさまざまな基礎研究成果(現在は非公表)を当社は米国特許庁に示してきました。
今回の特許査定受領は、この基礎研究成果が米国特許庁に認められたことを示しています。
今後当社は、学術論文発表や学会発表でこの基礎研究成果を公表していきます。

かねてから公表しているCBP501フェーズ2b試験計画との関連でも、これには重要な意味があります。
当社は現在、今回特許査定を得た白血球数による被験者の絞り込みや、投与方法の改良など、新たな設計を盛り込んだ小規模の追加試験臨床試験(フェーズ2b試験)の実施を目指して準備を進めています。
このフェーズ2b試験での被験者絞り込み手法の正当性は、成功確率を予測する要素のひとつでもあります。
もちろん成功が約束されているわけではありませんが、私たちはこれまで以上に強い自信を持って、次の臨床試験に向かっていくことができます。