今回の坂口志文先生のノーベル生理学・医学賞ご受賞を、心からお祝い申し上げます。
これに関連して、キャンバスの研究開発やCBP501との繋がりに関するお問合せを多数いただいています。
このブログで、歴史的背景のご説明も含めてお答えします。
現在でこそ免疫は、単純な攻撃システムではなく多様な細胞の働きによる複雑な制御システムであることが広く理解されています。
しかし、制御性T細胞(以下Treg細胞と書きます)のようなサプレッサーT細胞の存在がはじめに提唱された50年ほど前の免疫学では
「免疫とは免疫刺激→活性化→攻撃終了という攻撃システムであり、T細胞はそのアクセルだ」
と大雑把に把握する人が多かったので、T細胞なのにブレーキの役割をするTreg細胞の存在には懐疑的でな人たちがいました。
坂口先生らが1995年にTreg細胞を特定し、「免疫を抑制するT細胞」の存在が証明され再評価されたことは、免疫の理解が「攻撃」から「制御」に変わる大きな転機のきっかけとなりました。
このことが、現在の免疫学、ひいては医学・生物学、バイオテクノロジーの隆盛と発展にも繋がっています。
私たちキャンバスももちろん、その多大なご貢献の恩恵に与っており、感謝に堪えません。
免疫が強く働きすぎている自己免疫疾患においては、Treg細胞に活躍してもらうことが、治療や医薬品の研究開発の方向です。
抗がん剤の研究開発においては、Treg細胞をはじめとした免疫抑制的細胞群をがん周辺で働かせないこともターゲットになります。
ちなみに、Treg細胞も抑制している可能性の高い抗CTLA-4抗体は、抗PD-1抗体に比べて、自己免疫に関わるような副作用が強いことが知られています。
私たちの開発しているCBP501は、Treg細胞のような1つの種類の免疫抑制的細胞だけに作用するのではなく、多様な免疫抑制的細胞に働きかけて「免疫コールド」ながんを「免疫ホット」にしていることが、大きな特徴だと考えています。
1つの場所に強く選択的に働きかけるか、あるいは多くの場所に穏やかに働きかけるか。
免疫システムに働きかけるという方向は同じですが、プロジェクトごとに違いがあります。
がんは手強い病気で、多くの知恵と方法の総掛かりで取り組まないと撲滅できません。
ひとつの発見から多様なプロジェクトが生まれ、互いに影響し合いながら競争するのは、とても健全なことだと考えています。
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