8月21日のX(旧Twitter)で、個人投資家の方から欧州の複数医療機関ウェブサイトに公表された臨床試験準備中の掲載事項について
「CBP501臨床第3相試験が準備中とされているように見えるが、その理解で正しいか」
とご質問があり、
「当社の責任や権限の及ぶところでないのですが、ウェブサイトを読む限り、ご理解のとおりの内容と思います」
「こういった予告的な公表のタイミングや内容は臨床試験を実施する各施設の判断に委ねられています」
と回答しました。
https://x.com/canbas4575/status/1958380095808118798
この質疑応答のあと、お問合せフォームやお電話で多数のお問合せをいただきました。
その多くは、当社からの発信ではなく、SNSや匿名掲示板などに多数投稿された「この質疑応答に関する投稿者の解説」に関するお問合せです。
当社は基本的にSNSや匿名掲示板の情報に関する「こう書かれていたが本当か」というお問合せには対応しないことにしているのですが、おそらく生成AIの使用によるものと思われる「解説」や、その誤った解説内容を前提としてしまっているお問合せが、今回はかなりの数に及んでいます。
現時点ではこうした誤った「解説」の流通範囲は限定されていることや、実際に企業価値評価に影響を及ぼす情報ではあることなどから、直近数日間の短期的な株価変動については後述のとおり特に問題視していません。
しかし、誤った「解説」をこのまま放置すると、投資家の皆様の適切な投資判断形成に強い悪影響を及ぼし、ひいては中長期の健全な投資家リレーションや企業価値向上にも支障を来しかねません。
そこで、この機会に、適時開示やIR情報に関してSNS等で共有される誤った「解説」に依拠した投資ご判断への注意喚起も含めて、お問合せの前提が誤っていた事例の中から特に目立ったものをいくつかご紹介し、誤りの内容をご説明します。
準備中にもかかわらず医療機関が公表したということは、CBP501に対する医療機関の期待の表れだ
私たちは、臨床第3相試験開始承認を獲得したあと円滑かつ迅速にFPI(最初の被験者への投与開始)に至るために、臨床試験実施施設との実施契約締結を先行し、医療機関ごとの判断でそれぞれの準備を進めていただいています。
この準備の中のどの段階で「準備中」と表示するか(あるいは開始承認がおりるまで何も表示しないか)、表示する際に内容をどのように記載するかは、いずれも各医療機関の判断に委ねられており、私たちや規制当局の関与するものではありません。
もちろん、開始承認されていないものを承認済み・募集中であるかのように表示するような虚偽は認められませんが、「準備中」と記載されている限りは基本的に問題ありません。
現在の準備中の段階でわざわざ「準備中」と掲載する事例は他にも見受けられます。
したがって、準備中として掲載されたことだけを材料として期待の表れだと断じることはできません。
ただ一般論として、現在承認されている治療法のない膵臓がん3次治療領域の数少ない臨床試験でありもともとご期待が高いことは事実であり、既に公表されている臨床第2相試験のデータなどをもとに臨床医師らから特にご期待の声をいただいているのも事実ですから、事前の「準備中」掲載も何らかのご期待の表れであろうと主観的には感じています。
医療機関が公表したということは、CBP501の臨床第3相試験開始承認がほぼ確実というキャンバスが未だ公表していない情報を医療機関が知っているのだ
臨床第3相試験開始承認の確実性については、私たちが公表しているとおり、
・時期の不確実性:当社でコントロール不能な不確実性が存在している
・時期以外の不確実性:予断はできないものの顕在化のおそれは低下している
という状況であり、これ以外の情報を医療機関が持っていることはありません。
ただ、臨床第2相試験データや、契約に記載されている開始申請の内容などを読んだ医療機関が、独自の判断で「ほぼ確実だろう」と考えることはあるでしょう。
記載されているCBP501の臨床試験番号は、開始承認の際に付されるものである。番号が記載されているということは、開始承認がほぼ確実になったということだ
プロトコルが明記されているのは、試験内容がこれで確定しているということだ
臨床試験管理番号は、規制当局に最初に申請した際に自動的に付されるものです。
臨床試験実施の契約にあたって「キャンバスが実施するあらゆる臨床試験の実施」などと規定することは当然できませんから、契約の段階では開始申請中の臨床試験内容(プロトコルなど)を使って規定します。
また、あとで開始承認の段階までに内容の修正があったとしても対応可能なように、一般に臨床試験管理番号も記載します。
前述のとおり、ウェブサイトへの予告的な公表のタイミングや内容は虚偽でない限り基本的に各医療機関の判断に委ねられていますから、医療機関の判断として、実施契約書に記載されている情報を記載したものと考えられます。
つまり、医療機関ウェブサイトに公表された臨床試験準備中の掲載事項は
「キャンバスが欧州規制当局に開始申請した内容と、当該申請の臨床試験管理番号」
であって、そのままの内容で開始承認される見通しなどを特段に示すものではありません。
ただし、臨床第2相試験データなどを読んだ医療機関が、独自の判断で「この内容でほぼ確実だろう」と考えることはあり得ます。
これらの誤った前提がどこから生じたのかを遡ったところ、「私たちの適時開示やX投稿の内容を生成AIに読ませた回答に含まれる解説の誤り」が強く影響していることが判明しました。
よく知られているように生成AIは、理路整然とした文章の中に間違った情報が入る、つまり、まことしやかな回答の中にさらりと間違いをまじえるので、警戒が必要です。
この間違いのことをハルシネーション(幻覚:Hallucination)」といいます。
SNSや匿名掲示板への人間の投稿にハルシネーション解説が混じっていると、あたかも専門知識を持った人が語っているような説得力を持ってしまいます。
私たち発行会社が適時開示などの投資家リレーションでどんなに正確を期していても、それを生成AIに読ませた回答のハルシネーション解説のほうを真に受けられてしまうと、意味を失ってしまいます。
他社のIR責任者や担当者と日常的に情報交換していると、どの会社もこのハルシネーションに悩まされているようです。
とはいえ生成AIには、手軽に情報の要点を把握できるなど、便利な面も多数あります。
賢明な投資家の皆様におかれては、たとえば生成AIに要約・解説をさせたものは要点の把握目的だけにとどめ、詳細は原典を確認(投資家リレーションの場合はIR窓口へのお問合せ)したうえで、投資判断材料としてご利用いただくことを強くお勧めします。
私たちがXでこまめに質疑応答をしている理由のひとつでもあります。
では今回のことは企業価値評価に影響しないただの空騒ぎだったのかというと、そんなことはありません。
今回のことで、私たちが欧州での臨床第3相試験の開始申請をしているという事実や、開始承認を得たあとを迅速円滑に進めるための準備を実施施設との間で進めているという事実を、私たちの発信のみでない客観的な形で投資家の皆様に知っていただくことができました。
また、欧州の複数の医療機関の医師らという独立した第三者専門家がCBP501臨床第3相試験の開始へ期待を寄せていることを示唆する情報でもあります。
これらの事実は、当社のさまざまな不確実性に関する投資家の皆様のご懸念をかなり軽減するものであり、当社の企業価値評価が高まって当然のものだと考えています。
当社や周辺情報に平素からご注目いただきご評価いただいていることに、改めて感謝を申し上げます。
今後も適時適切な情報開示と投資家リレーションを心掛けます。
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