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事業計画及び成長可能性に関するご説明資料 2025年8月版を公表しました

2025年6月期決算短信の発表と併せて、東証グロース市場上場企業が毎年提出している「事業計画及び成長可能性に関するご説明資料」2025年8月版を公表しました。
そのダイジェスト版である会社プレゼンテーション資料(不定期更新)も、8月版へ更新しています。
今回のブログでは、この「事業計画及び成長可能性に関するご説明資料」(以下「ご説明資料」)の更新箇所に沿って、近況などをおしらせします。

CBS9106

当社が創出し米国Stemline社に導出していた可逆的XPO1阻害剤CBS9106は、2025年6⽉のライセンス契約解消に伴い、開発及び商品化に関するすべての権利が当社に返還されました。(→ 2025年6月30日適時開示

「ご説明資料」P.46に記載しているCBS9106の特徴や優位性は基本的に変わっていないので、概ねこの路線を踏襲することになると考えていますが、具体的にどのように育てていくかは、「創薬パイプライン型」「創薬基盤技術型」の選択も含めて現時点で確定していません。
現在私たちは、CBS9106の具体的な開発方針を検討するための基礎研究や周辺調査を実施しており、この研究調査の成果や会社の財務状況を踏まえて、随時意思決定していく予定です。
なお、この基礎研究は通常の研究費予算の範囲で実施するので、短期的な業績への影響はありません。

「ご説明資料」P.8のパイプライン表とP.9「各パイプラインの歩み・現状・⽬標」では、CBT005との並び順が異なっています。
これは意図したもので、パイプライン表は各パイプラインの現状を示すものなので臨床第1相試験を終了しているCBS9106を上に掲載し、目標を含むP.9の図では具体的な開発進行の決まっているCBT005を上に掲載しているものです。

CBP501

「ご説明資料」P.35に記載しているのが、CBP501欧州臨床第3相試験開始申請・準備の今日時点の状況です。
臨床第3相試験開始承認取得の「時期の不確実性」については、相変わらず当社のみではコントロール不能な不確実性があり、時期の目処などをお伝えすることができません。
一方で、「時期以外の不確実性」、すなわち臨床第3相試験を始められないようなリスクは、顕在化のおそれが低下しています。
また、たとえば臨床試験実施予定施設とのコミュニケーションなど、ひとたび開始承認を取得してから実際の臨床試験開始に向かうまでの期間を短縮するための活動も、並行して進めでいます。

時期の不確実性

これまでたくさんの当局対応を済ませてきたと考えており(済ませたつもりでもあとからひっくり返ることがあるのは経験したので油断はしていませんが)、時期の不確実性について残っている変動要因はかなり限られてきています。

限られている中で大きなテーマのひとつは、昨年2024年中の開始承認取得ができない旨をお伝えした際にも障害となった、CBP501の製造・製剤化プロセス等に関するものです。
薬剤に関する話は、単に今回の臨床試験開始承認を得るための規制対応にとどまりません。
ここでその場しのぎの対応で済ませると、目先の臨床試験だけ見ると前へ進むのですが、先々の各段階(臨床試験開始後や新薬承認時)に時間のかかりかねない不確実性を残してしまうことになります。
CBP501のゴールは新薬として承認され上市されることであり、私たちがやるべき最優先のしごとはその実現に至る期間の短縮です。
そこで私たちは、この段階で手間と時間をかけてでも、先々の不確実性を潰すことも含めた対応を実施してきました。
薬剤周辺は、規制当局からも当社からも独立した第三者監査人の判断で検証試験(すぐに終わるものから数週間かかるものまでさまざまです)の要否が決まるなど、時期を左右する不確実性が大きいのが特徴です。

そういった対応をかなり進めてきて、時期の不確実性も減りつつあると私たち自身は感じています。
どんなに時間をかけても対応・回答できないようなものはこれまでなく、今後もおそらくないと見込んでいます。
とはいえ、「この検証試験が済めば最終」と言ってくれるわけではなく、私たち(私たちと協働してくれている経験豊富な専門家たちも含めて)が「さすがにこれで終わりだろう」と思っていてもまだ続くことがたびたびありましたから、現在も相変わらず予断は許されないし、油断もしていません。

時期以外の不確実性

前回4月のブログでお伝えしたとおり、時間をかけても回復できないような、または、回復にかなりの長期間を要するような事態が発生するかもしれない不確実性は現在まで発生しておらず、それが顕在化してしまうような兆候もありません。
時期は不確実とはいえ、臨床第3相試験の開始承認が得られるであろう状態が続いているという感触・認識です。
臨床試験のプロトコルについても、私たちが想定したきっかりそのとおりではないものの、概ね計画に沿ったもので決着するだろうという感触を得ています。
ただ、あくまでも私たちの感触の話であって、今後も絶対にないとお約束できるものではないことにご留意ください。

米国臨床第2b相試験のペンディング

「ご説明資料」P.36にあるように、欧州臨床試験が始められないようなケースに備えて、念のため米国臨床第2b相試験はペンディング状態を続けています。
ただ、欧州申請の感触・認識は上記のとおり今のところ良好(時期の不確実性があるだけ)であり、現時点では、⽶国臨床第2b相試験への移⾏検討は不要な状況と考えています。

米国から欧州へ開発をシフトした選択との関係については、先日のXでの質疑応答をご紹介します。

米国臨床第2b相試験を2024年から始めていれば今頃は中間解析だったはずだが、このまま欧州臨床試験が始まらなかったら米国シナリオが追い越すことにならないか。

 

あのとき米国臨床第2b相試験開始を選択していればご指摘のように今頃は…ではあるものの、それでも「第2b相後半」「第3相申請」「第3相試験」という不確実性を抱えた状態にとどまる上に、資金も時間もより多く必要になります。
現状の私たちは、「時期の不確実性」はあるものの欧州で臨床第3相試験を実施できないような「時期以外の不確実性」はほぼ抱えておらず、米国試験を選択していれば獲得していたかもしれない状態よりもかなり良い状況にあると考えています。

CBT005など

CBT005をはじめとする臨床開発段階以前のパイプラインについては、今のところ公表できるような進捗がなく、記載の変更もありません。
CBT005に関しては、前臨床試験をできるだけ早期に開始できるよう準備を進めており、その見込み時期などを公表できる段階まで早く進めたいものです。

その他の事業活動

この機会に、各種資料や適時開示に載らない、水面下で最近進めている事業活動をひとつご紹介します。
それは、CBP501臨床試験の成功後に備えた活動です。

「まだ臨床第3相試験が始まってもいないのに」
「CBP501が効くかどうかも最終証明できていないのに」
と笑われてしまいそうですが、この準備には数年を要するので、臨床試験開始や終了を待っているわけにはいきません。

2000年の創業からこれまでに私たちは、
・抗がん剤のタネのさらにそのモトを生み出す研究
・抗がん剤候補化合物の創出
・早期臨床試験
・後期臨床試験
という、それぞれ要求される専門性の大きく異なるステップを、紆余曲折はありつつもこなしてきました。

次のステップは市販承認です。
このステップは、CBP501が「薬剤候補化合物」から「市販薬」に変わるに値する品質保証を伴う、とても大きな変化です。
これまでとは全く異なる専門性やそれを持つ人材が必要になります。
また、たとえ大手製薬企業との提携を獲得できたとしても、私たちに必要になるものです。

その意味だけで見ると今のキャンバスは、芋虫が蛹になったくらいの段階です。
外からは見えないけれども会社の中では、立派な成虫になるための大きな構造変革が起きています。
CBP501の臨床試験最終結果が決まる前に大きな構造変革を進めていくために、これまでとは桁違いに大きな(しかし表には出てこない)意思決定が続きます。
身の引き締まる思いで、この活動にも邁進しています。