マネジメントブログ

CBP501臨床第3相試験 開始申請審査の状況をお伝えします

ブログ更新がずいぶん久しぶりになってしまいました。

キャンバスが欧州規制当局に申請しているCBP501臨床第3相試験開始申請の最近の状況を、今回は河邊と加登住の共同でお知らせします。

ブログは文字数に余裕があるので、文章の長さ・多少のわかりにくさをあまり気にせず、XやIRセミナーとは異なる表現でお伝えします。
表現が変わると「この表現の変化はそれ以上のニュアンスを暗に伝えたいのではないか」などと探ろうとする方もあると思いますが、今回そういうつもりはありません。
これまでの開示やXでの質疑応答・やりとりと基本的に同じ内容を、違う言葉やこれまで使っていない事例などを使ってご説明するものです。
今回は特に、長い文章の全体でご理解いただけるように書いているので、前後の文脈を無視した一部の表現の切り取り(たとえば「AかもしれないしBかもしれない」という文章から「Aかもしれないと書いてある!」と引用するような)は避けていただくようお願いします。

時期以外の不確実性

時期以外の不確実性とは、時間をかけても回復できないような、または、回復にかなりの長期間を要するような、そういった悪い事態が発生するかもしれない不確実性を指しています。
以前のブログで「時期の不確実性」「時期以外の不確実性」についてやや詳しくご説明しているので、そちらもご参照ください。

米国で起きたような、私たちが実施しようとしていた臨床第3相試験でなく臨床第2b相試験の開始を指示されるのも、この「時期以外の不確実性」のひとつです。
米国では、あの後かなりの長期化を覚悟さえすれば臨床第3相試験開始に向けた協議の継続を選択することもできましたが、それで突破できる見込みが小さい割にコストや年数がかかってしまうことから、欧州への申請シフトという判断になりました。
今回も、そういった事態の発生するおそれはゼロではなく、私たちは細心の注意を払って警戒し、手応えを探っています。

今のところ、そのような事態は発生しておらず、その兆候も生じていません。
時期はとても不確実とはいえ、臨床第2b相試験ではなく臨床第3相試験の開始承認が得られるであろう状態が続いているという感触・認識です。

このあと新たな課題が出てくるかもしれませんが、それでも時間(それも年単位のような長期間ではなく)をかけさえすればクリアできる範囲の課題だろうと見ています。

私たちはそういった感触を、規制当局とのやりとりを通じて得ています。
第3相試験ならではの試験プロトコルについて、その中身に至る具体的な質問や応答を見て、当局が第3相試験を想定して審査をしてくれているのだろうと感じたことは、既にお伝えしました。
最近も、統計解析に関する質疑(第3相試験は統計的に解析した結果によって新薬承認に至るものなので、統計解析の詳細は特別に重要です)を通して、当局が第3相試験を想定して審査してくれていると実感することもありました。
幸いなことに今のところ、その逆の、第3相試験として認めないつもりだろうかと感じられるようなやりとりはひとつもありません。

その他、ここに書くことのできないものも含むたくさんの小さな根拠で、時期以外の不確実性が顕在化してしまうおそれは日々減っていると感じています。
ただ、あくまでも感触の話であって、今後も絶対にないとお約束できるものではないことにご留意ください。

時期の不確実性

時期の不確実性には、(1)やりとりの間隔の不確実性 (2)対応・回答にかかる時間の不確実性 があります。

(1)のやりとりの間隔の不確実性については、とても納得感のある申請審査を受けることができています。
質問や問合せ(Request for information、RFIといいます)に対する回答の繰り返しの中で、たとえば過去に一度もう回答して終わったはずのポイントが形を変えて再度出てくるようなこと(米国では何度かありました)もありません。

ただ、時期の不確実性が減ることはありません。
審査の途中の段階では、個別の論点について明確に「わかりました、この件はこれでOKです」とは言ってはもらえない以上、次のRFIや通知でとんでもない内容が飛んでくるおそれは消えないからです。
やりとりを通じて規制当局が考えているであろうことの感触を掴むことはできますが、それはあくまでも感触ですから、米国で起きたようなことがまた起きないか、現在も常に警戒しています。

(2)の対応・回答にかかる時間の不確実性に関しても、多数のRFIを受けてきましたが、いずれも時間さえかければ対応・回答できて次へ進められるものばかりで、どんなに時間をかけても対応・回答できないようなものは今のところありません。

規制当局の審査期間と申請の関係でよくあるご質問

ところで、時期の不確実性と関連して
「申請日はいつだったのか公表してほしい」
「規制当局の承認の過去事例を検索するとほとんどの申請が規定の日数内で承認または条件付き承認となっているのにキャンバスは時間がかかりすぎていて疑問だ」
といったお問合せを受けることがあります。
この機会に、改めて規制当局の審査のしくみの一部を私たち申請会社の目線でご説明し、このふたつのお問合せをまとめてお答えします。

規制当局の審査には、「申請を受けてから◯日以内に承認/条件付き承認/不承認を決めて申請者に伝える」という審査期限の原則がルールで定められています。
このルールには例外もいくつかあり、私たちのいう時期の不確実性のひとつです。

一方、ルールの原則どおりに進んだ場合でも、時期の不確実性は残ります。
そのひとつとしてわかりやすいのが、取下げ再申請です。

審査が進む中で規制当局が確認したい点の中には、対応や回答に日数のかかるものもあります。
その場合、当然ですが審査期限に間に合いません。
そういうケースで申請会社は、「その課題を臨床試験開始までに解消する旨の条件付きの承認を目指す」か、「いったん申請を取り下げてその課題を解消し、再申請して条件の付かない承認を目指す」のどちらかを選択することになります。
どちらを選ぶかは課題の内容次第ですが、多くの場合は、いったん申請を取り下げ再申請します。

規制当局が公表する「不承認」は、最終審査の結果として規制当局が承認しなかったものだけです。
取り下げやその後の再申請に関しては公表されません。
それに合わせて申請会社も、再申請するのであれば取り下げを公表しないのが通例で、当社もそれにならっています。

取り下げ再申請の場合、形式上は申請が中断し、新たな申請をすることになります。
正式な「申請日」はこの再申請を出した日になり、それがのちに規制当局から公表されます。
このように、申請日が後から変更になることもあるので、却って誤解や混乱の元になることから、申請日は(最初のものも、再申請も)非公表とするのが一般的で、多くの企業と同様に当社も非公表としています。
「申請日はいつだったのか」というお問合せに非公表とお答えしているのはこういう理由からです。

また、もうひとつのよくあるお問合せである「当局発表の審査結果との感覚的なズレ」については、上記のご説明した中にある
[規制当局が公表する「不承認」は、最終審査の結果として規制当局が承認しなかったものだけ]
というのが回答になります。
先ほど書いたとおり、不承認や条件付き承認になりそうなものは取り下げ再申請するのが一般的なので、最終審査結果として不承認と公表されるのはレアケースなのです。
同様に、申請から最終審査結果決定まで規定以上の期間を要したと公表されることも稀です。
したがって、規制当局の承認の公表情報をもとに、申請から承認の日数を推定したり逆算したり、申請の承認比率を求めたりするのは、投資ご判断の材料としては意義が薄いといえます。

なお、そうは言っても、当社が申請を取り下げてそのまま再申請もしないようなことがもし起きたら、それは臨床試験継続を断念したのとほぼ同義であり、投資家の皆さんへお知らせしなければなりません。
当社では、もし万一、再申請を想定できない状態で申請を取り下げた場合や、取り下げ後に再申請が予定どおりできなかった場合、すなわち、臨床試験開始申請自体を断念または中断した場合には、重要な意思決定として適時に開示します。

今のところ、そのような申請断念または中断につながるような予兆はありません。

2027年承認・上市の目標

私たちは以前から、2027年承認・上市の目標を掲げています。
この目標の実現可能性は、開始承認獲得の時期だけでなく、開始承認される試験の内容、実際の試験開始(FPI)の時期、組入れのペースなど、さまざまな要因によって変動します。
それらにはすべて、私たちだけでは如何ともし難い不確実性があります。
早まる不確実性も長引く不確実性も両方あるので、固い予定や計画は不可能で、どうしても「幅」を伴う予測になってしまいます。

とはいえ、その幅について、現実的かどうかという話は無視できません。
たとえば、複数実施施設での組入れがどんなにロケットスタートしたとしても、1ヶ月で全部の組入れが終わるかもしれないと強弁するのは(理屈上はあり得ますが)さすがに現実的でありません。

私たちは、現実的な幅の中で最も早い2027年を「目標」としてお伝えしており、それは現在も変わりありません。
この目標を掲げることが現実的でないと判断したときには、これまでと同様にすみやかにお知らせします。

この1年の前進

第3相試験開始に向けた協議を欧州規制当局と開始したことを皆さんにお伝えしてから、1年以上が経過しました。

この1年の進捗を通じて感じたものは、良い新薬を世に送り出す責任と臨床試験の安全性確保責任の両方を負っている規制当局のバランス感覚です。
欧州規制当局との協議や申請審査は、そのバランスにおいて十分で必要不可欠な内容と期間と考えており、私たちは納得しながら対応しています。
米国と欧州の規制の違いや欧州の規制の変更などへの対応に時間がかかり、私たちの想定していたうち最も速い進行であった2024年中の開始承認が実現できなかったのはとても残念でしたが、着実に、かつ、所与の状況の中では最速に近いペースで、前進できた1年でした。

またいつもの言い回しかと呆れられそうなので、今回は「前進できた」を少しだけ言葉を変えてお伝えします。

臨床第3相試験開始承認獲得の良いお知らせを皆さんへお届けできるのがもうすぐなのか、まだ先までお待たせするのか(時期の不確実性)は、今も私たち自身にも周囲の専門家たちにもわかりません。
しかし、臨床第3相試験を開始できない悪い知らせをお届けせざるを得ないおそれ(時期以外の不確実性)は、未だ予断は許さないものの、着実に減っています。

今回の記事のおわりに

いま私たちが目指している臨床第3相試験開始承認獲得は、比較的短期の通過点ではありますが、CBP501のゴールではありません。
結果が良いものであれ悪いものであれ、ゴールである臨床試験終了には辿り着くつもりですし、そのためにこの通過点を何としても突破する考えです。

時期の不確実性は大きい一方で公表できる情報は少ないという状況で大変なご心配とご不安をおかけしてしまっていますが、投資家の皆さんには、通過点まで、ゴールまで、あるいはもっと先まで、それぞれの投資スタンスでぜひ引き続き応援をお願いいたします。