当社の定時株主総会の終了後は、わざわざ沼津までお越しいただいた株主の皆さんへの御礼を兼ねて、上場以来毎年「株主報告会」を開催しています。
おかげさまで、株主総会にご参加いただいた株主の皆さんのほとんどが、報告会の最後までご参加くださいます。
今回も、ご報告と質疑応答をあわせて2時間にわたる活況でした。
熱心にご質問をいただき、ありがとうございました。
今回のブログ記事では要約を最低限にし、当日の雰囲気そのままを書き起こしています。
いつも長いと定評のあるブログがいつも以上に長くなっていますが、ぜひご一読ください。
加登住:定刻になりましたので、定時株主総会終了後恒例の株主報告会を開催します。
前半は社長の河邊から、研究開発、特に足もとのトピックである臨床開発についてご報告します。具体的には、CBP501の臨床第3相試験の開始申請と準備の状況です。
後半は私から、決算・財務についてご報告します。
今回もご報告終了後に、質疑応答の時間を設けています。
それではよろしくお願いします。
まず、足元のトピックであるCBP501の欧州臨床第3相試験申請の状況です。
この件では、皆さんに一番ご迷惑をおかけしています。

欧州での開始申請に時間とコストがかかった背景には、欧州の薬事規制への対応と、米国との違いがありました。
特に2022年から2024年にかけて、治験薬の製造に関するガイドラインなどの規制が大きく強化されました。
製薬会社から見ればきちんと準備していれば普通のことだったのかもしれませんが、規制が大きく強化される中での申請となった当社では、米国と欧州の違いが課題になりました。
当社がこれまでお願いしていた製造委託先は、臨床試験の初期から一緒に取り組んでいただき、きちんと薬を作ってくれていました。米国では市販薬も製造しており、何も問題なく実績を重ねている会社です。
ところが、その会社の製造では欧州の申請が通りませんでした。
しかも当局とのやり取りでは、ここがダメだからこうしなさいという言い方はしてもらえないため、最初のうちは、通らない理由がわかりませんでした。
指摘された事項を委託先と一緒に改善し、これで大丈夫だろうと当局に再度説明すると、また指摘を受ける。
これを繰り返し、時間を費やしてしまいました。
無駄ではないか、別のところでやればよいではないかというご指摘を皆さんからいただきましたが、当然、当社もそれを考えながら進めてきました。
しかし、薬剤の製造は非常に大きな作業です。
製薬会社は自社で製造設備を持っていたり、大きな会社と長期契約を結んでいたりして、製造枠(スロット)は2年ほど先まで埋まっているのが普通です。
当社の依頼を簡単に引き受けてくれるところはありません。
もう一つは、委託先を移す際の技術的なハードルの高さです。
今まで作っていたものと全く同じものができていることを証明しなければならず、その作業は煩雑という言葉では足りないほど膨大です。
しかも、その結果を当局が認めるかどうかについて、また審査を受けなければなりません。その審査に通るかどうかも、100%大丈夫とは言えません。
こうした事情から、簡単には移せませんでした。
そのためある時期から、元の委託先と新たな委託先の2本立てで進めました。結局、現在は解決に至ったと考えています。
もちろんこのあとも最終的に当局のOKが出るまでは覆る可能性があるので安心はできませんが、それでも、根本的な解決をしたと考えています。
これが、最も時間がかかった理由です。
対応の試行錯誤について、もう少し細かくお話しします。
当初は、過去の米国臨床試験の製造委託先に欧州対応を支援してもらう形で進めようとしていました。
ここで大きなポイントとなったのが、思想レベルの違いです。
どちらかというと米国は、モノができていればよい、きれいにできているからよいという傾向が強いです。もちろん、それだけではありませんが。
一方、欧州では、どういう仕組みで、どういう考えに基づいて製造するのかという点が審査の対象になります。
そこで、最終的には、欧州で実績のある製造委託施設へ切り替えました。
切り替えは、先ほど申し上げた作業が必要なうえ、製造枠が空いていないなどの問題もあり、とても時間のかかる作業でしたが、解決したと思っています。
これは臨床試験そのものにも言えることです。
当社のような創薬ベンチャーは、通常、早期の臨床試験を行ったあとで製薬会社に渡すというのが、従来のビジネスモデルでした。
後期の試験は製薬会社が大勢の人員と費用をかけて実施し、利益の大部分は大手が得る、という話を以前していましたが、なぜ大手が利益の大部分を得るのかを、身に染みて感じました。
早期の臨床試験と最終段階の臨床試験とでは考え方が違い、根本的な品質保証の仕組みや社内体制が厳しく問われるので、そのための体制づくりが必要です。
製薬会社が大勢の人員を抱え、大きな仕組みをつくり、費用をかけている理由を、改めて強く実感しました。
今回のことを経て、おかげさまで、自画自賛になりますが、その仕組みについてはレベルの高いものができたと思っています。

次に、欧州臨床第3相試験の開始申請の準備の状況として、2つの不確実性の現状です。
1つ目の、開始承認獲得の不確実性については、顕在化するおそれは着実に低下しています。
引っかかっていた点は、唯一と言ってよいほど薬剤の部分でした。
ここを根本的に解決したと考えているため、大きな問題はないはずだと思っています。
もっとも、これまでも、解決したと思って再度当局に話しに行くとダメだと言われることを繰り返してきたため、今回もそうだろうと、どうしても思われてしまうと思います。
しかし今回は、解決の仕方が根本的に違います。
これまでは、委託先の不備を改善して持っていこうとしていました。今回は、すでに欧州で実績のある会社に移管しました。移管作業は非常に大変でした。
2つ目の、開始承認の獲得時期の不確実性は、当社ではコントロールできない不確実性です。
当局審査では、多くの人たちが、様々な角度から審査を行い、多くの指摘をしてきます。
いろいろな質問が来て、それに回答するということを繰り返し、期限が来ると、ダメ、あるいはOKという結論になります。
その時間は読めないため、時期の不確実性としてお伝えしています。
当社としては、ダメと言われるようなものはもうなく、小さなこと以外はないと思っていますから、開始承認獲得の不確実性は下がっていますが、時期については不確実であるとお伝えしているわけです。
米国の試験への移行は現時点では考えておらず、このまま欧州で進めるつもりでいます。
ただし「全く」と言い切ってはいけないと思っており、滑り止め、命綱として、第2b相試験を開始する準備はしてあり、いざとなればすぐに始められる状態は保っています。
臨床第3相試験の費用45億〜50億円という見通しに、現時点で変更はありません。一部は、申請準備の中で先行して支出済みです。

いつもの会社概要です。
当社は、自社で創出した複数の臨床開発パイプラインを持ち、新規抗がん剤を研究開発している創薬企業です。
今回のスライドには、ブロックバスターを狙えるという表現を入れています。
お金を目的にしているわけではないとずっと主張してきたつもりですが、皆さんに多くのご支援をいただきたくさんのお金を使っている以上、経済的なことも、きちんとお伝えしなければならないと考えています。
社員は19名で、昨年より4名増えました。
最少人数にも限度があること、そして先ほどお話しした品質保証の仕組みをつくるのにどうしても必要だったことから、管理も研究開発も、人員が徐々に増えています。
開発パイプラインの状況は相変わらずで、CBP501は、いよいよ第3相試験の開始です。「いよいよ」と、ずっと言い続けていますが。

次のパイプラインで、私が個人的に特に有望だと思っているのは、CBT005です。
CBS9106は臨床第1相試験の前に導出し、導出先のステムライン社は、その後メナリーニ社に買収されました。
臨床第1相試験の結果は、比較的良好だったと思います。
ただ、抗がん剤の治療環境は、この10年ほどで劇的に変わり、今は日々変わるような状態です。
20〜30年前までは、40年経っても抗がん剤の治療は何も変わらない、抗がん剤専門の内科医には覚えることがなく、ワンパターンのことをするだけだ、というような状態だったと思います。
それが過去10〜20年で劇的に変わり、今は専門の臨床内科医でも、新しい薬の名前を覚えるだけで大変なほど、次々と新薬が開発されています。
CBS9106も、その波に飲み込まれた形で、優先順位が下がったことがありました。
しかし、先行しているカリオファーマという会社の薬は、もともと血液がんの治療薬として承認を受けており、子宮がんで第3相試験が終了し、そろそろ結果が発表されます。再び脚光を浴びる可能性もあると思っています。
CBP-A08はCBP501の後継で、そのほかに免疫系抗がん剤のパイプラインがあります。

CBP501は、当社の創業時から研究を進めてきました。
2013年頃までは、抗がん剤の副作用を強めないことを目指して臨床開発を行いましたが、一番大きな規模の試験で、残念ながら全体として結果が出ませんでした。
白血球の高い人ではむしろ悪さをしてしまうことが判明し、その人たちを除けば、とても良い結果だったのではないか、という見方もありました。
同じ頃、抗がん剤開発の時代が、免疫系抗がん剤へと大きく変わりました。
CBP501がなぜ白血球の多い人ではむしろ悪さをするのかを研究する中で、CBP501そのものが免疫系の細胞に作用していることを発見しました。
もともとは抗がん剤の作用を強める薬だと思って開発していましたが、それに加えて免疫系にも働くことが分かり、そこでリスタートとなりました。
大きな話題になったオプジーボのような免疫系抗がん剤と組み合わせるのがベストではないか、ということです。
その後、臨床第1相試験、第2相試験を行いました。
米国で行った臨床第2b相試験で、思い描いたとおりの結果が出ました。
患者さんの数は少なく、本来は1群あたり23人の試験でしたが、9人の時点で中間解析を行いました。
すごく良ければコールド勝ち、すごく悪ければコールド負けという、統計的に認められたデザインで、結果としてコールド勝ちしました。
たった9人では意味がないと思われがちですが、膵臓がん3次治療を狙ったのは、データのばらつきが少ないからです。
たとえば乳がんの1次治療であれば、3〜4か月で亡くなる方もいれば、12年、20年生きられる方もいて、データがまとまりません。
ところが膵臓がん、特に3次治療は非常に厳しく、何をやっても長生きできない方が95%です。
ばらつきの少ないところを狙った試験で、私個人としては、きちんと効くというデータが得られたと思っています。
ただ、承認を得るためには本当にそうであることを証明しなければならず、それが、今やろうとしている第3相試験です。
CBT005については、2013〜14年頃から、当社は、抗がん剤の作用を強めることを狙っていた会社から、免疫に働くものへと大きくシフトして、基礎研究を行ってきました。
免疫系のものが効く可能性があるとは、私が医者になった約45年前からみんなが思っていましたが、研究をやってもやっても効果が出ませんでした。
それが、オプジーボ、本庶先生のおかげで時代が変わり、今はみんなが免疫と言っています。
そういう流れの中で、大昔に目指したかったものが具現化されつつあるのが、CBT005です。

創薬企業の事業モデルには、大きく2つあります。
「創薬基盤技術型」は、比較的早期に製薬企業へ導出し、リスクを持っていただく代わりに、将来の収益はそれほど大きくありません。
「創薬パイプライン型」は、自社で上市近くまで開発するため、とても大きなお金と時間がかかりますが、将来のリターンも大きくなります。
キャンバスは、パイプラインごとにこれを選択できる状態になっています。
皆さんのおかげで、CBP501は、「創薬パイプライン型」で臨床第3相試験を目指せるところまで来ることができました。

免疫系抗がん剤の基礎研究・創出から後期臨床開発まで自社で進めた実績を生かし、開発段階、成功確率、費用の見込みなどに応じて、各パイプラインの特徴に沿った柔軟な開発方針を想定しています。
夢のような話ですが、最初から十分な資金を有していて、最後まで自分たちでやるつもりで走っていたのであれば、これまでに費やした時間の多くを削れたと思います。
ただ、その代わりに、早く失敗という結論が出て、とっくの昔に消えていたかもしれません。
現状では、CBP501がうまくいくかどうかが最も大きなことだというのは変わりません。
CBP501は創薬パイプライン型で開発しています。
CBS9106は、一旦導出しましたが戻ってきたため、戦略を考え、データを出して、次の一手を考えているところです。
後継はCBT005などです。
CBP501について簡単にご説明します。

免疫系抗がん剤は、一部の患者さんに劇的に効きます。
生存率を縦軸、生存期間を横軸にしたグラフで、100名の患者さんが時間とともに減っていくのが、無処置の灰色のラインです。
従来型の抗がん剤やいわゆる分子標的薬は、多くの患者さんに作用し、余命3か月と言われた方が半年に、1年と言われた方が1年半に、というように時間を延ばしますが、結局はいずれ効かなくなります。
一方、免疫チェックポイント阻害剤は、大部分の患者さんには効きませんが、効くタイプのがん(肺がんでは2割ぐらい、悪性黒色腫では4割ぐらい)の患者さんでは、年単位で余命が伸び、場合によっては治っているのではないかという状態になります。
今はステージIVの肺がんでも、5年以上生きておられる方が多数おられます。

免疫チェックポイント阻害剤でみんな効けばよいのですが、効かない患者さんでは、大きな原因の一つとして「免疫コールド」が起きています。
がん細胞を殺すCD8T細胞がそもそもいない「免疫砂漠」と、近くまで来ているのに周りにとどまり中に入っていけない「免疫排除」があります。
T細胞ががんの中に入っている「免疫ホット」であれば、免疫チェックポイント抗体が非常によく効きます。

今回の臨床試験は、CBP501、シスプラチン、免疫系抗がん剤ニボルマブ(オプジーボ)の3剤併用です。
膵臓がんでは、がん細胞の周囲に免疫抑制的なマクロファージなどがいて、T細胞にブレーキがかかっています。
また、がん細胞が死ぬときにも、免疫を起こさせないような死に方(アポトーシス)をします。
この状態で、オプジーボのような免疫のブレーキを外す薬を使っても、T細胞の数が少ないことに加え、免疫抑制的なマクロファージなどが「攻撃するな」と言ってしまいます。
実際、膵臓がんに対しては、免疫チェックポイント抗体の臨床試験が、過去10年ほど欧米でたくさん行われましたが、単独では効果がないというのが欧米の結論です。
そこで、免疫着火剤であるCBP501にシスプラチンを組み合わせます。
もともと目指していたようにCBP501がシスプラチンの作用を強めることで、がんの死に方が変わります。
免疫を抑制する死に方ではなく、免疫を刺激する「免疫原性細胞死」という死に方で、けがをしたときに赤く腫れるようなものです。
さらに、2013年頃の失敗から見つけた、CBP501が免疫細胞にも作用しているという点のうちの一つが、マクロファージの抑制作用を抑える、つまりブレーキを外すことです。
こうして、CD8T細胞ががんの中に入ってくる状態をつくり、ここにブレーキを外すオプジーボを加えると、T細胞が活性化して、がんを殺してくれます。
これが、私たちの想定している理屈です。
少なくともマウスでは想定どおりのことが起きており、一部の患者さんの生検でもこれを思わせるデータが取れています。

臨床第2相試験の良いデータは、4群の患者さんのうち、今回の臨床第3相試験で行おうとしている薬剤の組み合わせ・投与量のものです。
スイマープロットは、横軸が月数です。
患者さん9名のうち上の3名は先端がとがっていますが、これは臨床試験の終了時点でまだご存命の状態です。
ウォーターフォールプロットは、治療開始後に、がんが最も小さくなったときの大きさを示しています。
赤の患者さんは、一度も小さくならず大きくなり続けた方で、水色の方は小さくなりました。
長径で30%以上小さくなることを部分奏効と言いますが、膵臓がんの3次治療では、ほぼ起きません(5%未満と言われています)。
その中で、9人中2人に私たちの薬剤で部分奏効が起き、他の組み合わせでは起きていません。

生存曲線では、赤が今回の臨床試験で行う薬剤の組み合わせ、薄い赤がCBP501とシスプラチンのみです。
薄い赤は、現在行われている治療に近い数字だろうと思っています。
この差を証明するのが第3相試験です。
証明のポイントは、生存期間が9か月、12か月、15か月へと伸びている患者さんの割合です。
チェックポイント抗体が効かないと言われる膵臓がんで、効く患者さんを1割でも2割でも出せれば、すごいことです。
5%の方は奇跡のように5年生きられますが、それを10%、15%にできれば、大変素晴らしいことです。

CBT005は、免疫系抗がん剤の中でも、自然免疫の最初のところを活性化する薬で、免疫スイッチ作動薬と呼んでいます。
免疫には自然免疫と獲得免疫があり、悪いものを見つけたら、まず自然免疫が対処し、それを獲得免疫(T細胞、B細胞)に伝えて、やっつけます。
がんの患者さんの体には、がん細胞も免疫細胞もたくさんいるのに、なぜがんが治らないのか。
それは、免疫細胞ががん細胞を食べた後、本来は「攻撃しろ」とT細胞やB細胞に伝えるべきところを、「攻撃しなくていい」と伝えてしまっているからです。
長くがんを持っておられる患者さんの中では、そういうことが起きています。
これは免疫寛容という、自分の体を攻撃しないようにする仕組みと同じです。
ずっとがんがいるので、「こいつは仲間だ、攻撃してはいけない」という命令を出してしまうのです。
それを「攻撃しろ」という命令に変えるのが、CBT005が目指している作用機序です。

CBS9106は、全権利を導出して第1相試験を行っていただいたあとで戻ってきたXPO1阻害剤です。
細胞の核の中には、がん細胞にとって都合の悪いがん抑制因子などのタンパクがたくさんあります。
それを一所懸命に核から排出することで生き延びているがんが多く、その排出をしているのがXPO1というタンパクで、このタンパクを阻害するのがXPO1阻害剤です。
先ほどご紹介したカリオファーマの薬剤はすでに米国で承認を獲得していますが、当社の薬剤はこれと異なり薬剤を取り除けばすぐに作用を消せる点が、差別化要因だと考えています。
XPO1は正常な細胞の中でもどうしても必要なタンパクで、その作用をずっと打ち消し続けると、正常な細胞も死んでしまいます。
そのため、適度にオンにしたりオフにしたりしなければならず、それがCBS9106ではしやすいというのが、私たちの主張する特長です。
続いて、決算・財務の状況について、私からご報告します。

2026年6月期の決算、損益計算書です。
事業収益は、今期もありませんでした。
CBP501の臨床開発に関する費用が出ており、経常損失は1,307百万円となりました。

費用の内訳を、例年どおり四半期ごとにご覧いただいています。
基礎研究費と管理費は、四半期ごとにほとんどぶれることがありません。
臨床開発費は、臨床開発のテーマがあるときに多くなります。
このオレンジ色の部分の増減は、損益計算書を悪化させる一方で、開発が進捗しているあるいは開発の準備がきちんとなされている証拠でもある、という両面があるという見方をしていただきたいと思います。

バランスシートは、単純に小さくなりました。
キャッシュを使ったということですが、その中で、特に不健全なことは起きていません。
2026年6月期は、途中で前渡金が増え、最終的には少し減ったという経緯があり、四半期決算などでお伝えしたとおりです。

今後の必要資金は、CBP501が営業キャッシュフローに貢献するまでの資金需要として見ています。
CBT005、CBP-A08、CBS9106が収益に貢献するシナリオももちろんありますが、最も保守的に、また当社の現在の企業価値の中心として見ていただいているCBP501に依存すると仮定した場合です。
その間は、エクイティ、借入れ、提携による収入、補助金、助成金といった形で調達しなければなりません。
その必要な資金を、図にしてみました。
基礎的な費用(基礎研究費用と販管費)は、四半期あたり100〜150百万円かかります。
CBP501の臨床第3相試験は、試験開始については現有資金で問題ありませんが、完遂までには資金不足が想定されます。
45億〜50億円かかると申し上げているので、当然のことです。
さらにその後、新薬申請に追加の資金需要が発生します。
これが、今後数年間の、順調にいった場合の流れです。
これにも、直感と異なる両側面があります。
順調にいくと、資金が必要になります。
逆に、何かで転けた場合には、資金需要がなくなって財務的に安定します。
決算書だけを見ている人にとっては、どちらでもよい、何なら後者のほうが良いという話になってしまいますが、リスクに見合うリターンを見越して投資していただいている株主の皆さんにとっては、資金需要が旺盛であるほう、つまり、資金を使いながら開発が進捗しているほうが良いことだと信じて動いています。
追加の資本政策に関しては、私が責任者として、それこそ四六時中そればかり検討しています。
補助金・助成金、提携等、そして株式市場からの調達が、大きな3本柱です。
皆様の注目が集まりやすい株式市場からの調達を検討する場合も、既存株主の皆さんの株主価値の毀損や、むやみな希薄化が起きないよう、できるだけ回避・抑制するタイミングと方法を追求していきます。
今後資金調達はありませんと申し上げるつもりはありません。
それをできるだけ抑制した形で実現できるかどうかが当社のキーポイントであり、腕の見せ所だと考えています。

臨床第3相試験の45億〜50億円は、大きな金額です。
そこで、皆様にこれまでご覧いただいたことのない図を用意しました。
CBP501の開発に必要だった資金だけを、2004年6月期から2026年6月期までグラフにしたものです。
山が2つあることにお気づきと思います。
1つ目の山は、2005年6月期にCBP501の最初の第1相試験が始まり、当時は製薬企業との提携もあった時期に、悪性胸膜中皮腫と非小細胞肺がんを対象に、ペメトレキセド、シスプラチンとの3剤併用で行った試験にかかった費用です。
河邊もお話ししたとおり、これは一度失敗しました。
正確には、悪性胸膜中皮腫では主要評価項目を達成しましたが、残念ながら継続して開発する判断には至りませんでした。
その後、研究費は使ったものの開発費がかからない時期が、2014年から2016年頃まで、2〜3年続きました。
現在行っている免疫抗がん剤との組み合わせの臨床試験は、ここから再立ち上げしたもので、約10年の歴史ということになります。
今の組み合わせに向けて走り始めたのが、2016〜17年頃でした。
そこで再び、製造・製剤化のコストがかかり始め、その後、第1相試験、第2相試験に成功し、米国で第3相試験を行おうとして準備にお金がかかりました。
この図では、お金をかけたけれども失敗・断念したものを紫系の色で示しています。
濃いオレンジ色が、まさに今、欧州で臨床第3相試験を行おうとしてかかっている費用です。
ここまでのトータルは、約89億円です。
ひとつのお薬を世に出すための費用として世の中の統計と比較すればずいぶん小さな金額ですが、私たちにとってはとても大きな金額であり、株主の皆様に支えていただいたおかげだと考えています。
ここから先に、あと45億〜50億円、うまくいった場合には新薬申請の費用がかかります。
1つ目の山では第3相試験を行わなかったため発生しなかった大きな資金需要が、2つ目の山の右上に控えているのだと、歴史を踏まえてご理解いただくと分かりやすいと思い、この図を用意した次第です。
しっかりと結果を出すために、資金需要を正直にお知らせしています。
調達した資金以上の価値をつくることが、我々のような企業の使命だと考えています。
以前ブログに書いたことがありますが、その考えに変化はありません。
株式市場から調達するにしても、提携をするにしても、会社の時価総額は当然意識されます。
公式X(旧ツイッター)などでもお話ししているとおり、短期的な株価の上下に責任を負うものではなく、中長期的な時価総額水準には責任を負うというのが、私たち経営の考えです。
その「水準」の推移をご覧いただくため、2020年以降の、株価ではなく時価総額の推移を、チャートで示しました。

2021年頃まで、当社の株価は泣かず飛ばずで、つぶれるのではないかと思われていましたし、私たち自身も頭の片隅でそれを意識していたのが正直なところです。
ただ、臨床試験が順調に進んでいることが、気持ちの支え、行動の支えになっていたのが、2022年前半までの状況でした。
この頃の時価総額は最低で約16億円まで沈みました。
その後2022年半ば、臨床第2相試験でどうやらいい結果が出そうだという情報を開示して、皆様にご理解いただき株価に反映することができました。
それに先立つ2022年の頭ぐらいから「こういう情報が出てきたらいい兆候だ」ということをブログ等を駆使した投資家リレーションでお伝えしていたからこそ、きちんとご反応いただけたと思っており、これからもその手法を続けていこうと考えています。

私が「水準」とお話ししているのは、このチャートに重ねた黄色いバンドのことです。
短期的な株式市場の動きやオーバーシュートにとらわれずに、当社の企業価値を見ていく上で基準になるのはここだろうと、私の目線が追っているのが、この黄色いバンドです。
この後、市場環境の影響や資金調達などによって株価が短期的には上下することはあると思いますが、きちんと第3相試験に入り、その中で結果を出していくことが、中長期的には何よりの株主の皆様へのお返しだと思っています。
現在のバンドの中に3年以上、4年近くいた結果になりましたが、現在進めている準備を踏み台に、今後はこのバンドから上へ上げていきたいと考えています。

当社の成長可能性の源泉は、CBP501と後続パイプラインの2つです。
足もとではCBP501に一番ご期待をいただいていますが、本来的には、その後ろに後続のパイプラインまでを含めたご評価をいただくべきものです。
新規パイプラインを創出する体制の中に、太字で「がん免疫」と書きました。
直近のNHKスペシャルで、がんとの戦いを扱った番組が放送されていましたが、ご覧になった方はおられますか。
NHKは私たちよりお金をかけているのできれいな絵でしたが(笑)、ご覧になった皆さんはおそらく、「キャンバスが言ってきたのと同じことを、いまNHKが言っている」とお感じになったと思います。
最終的には免疫でがんを叩く、ということです。
免疫抗がん剤がいろいろな方法でがん細胞にブロックされていて効かないという説明も、同じだったでしょう。
私たちは、確かに時間はかかっていますが、きっと間違っていないところを攻めていると、日々確信を深めています。
この後も波瀾万丈はあると思いますが、我々自身にとっても、株主の皆様にとっても、中長期でしっかりと当社の価値を上げていくという、この成長可能性の源泉は、間違っていないと考えています。
質問者:上場時点からの推移を、時価総額ではなく、実際に持っている100株の株価として見たい。日経平均との比較のグラフも見せてほしい。
加登住:時価総額で見ているのは、株価だけでは株数の変動が反映されないからです。株価の図からは、説明できることがあまり多くありません。
皆さんは株価に注目されるのが当然ですが、私たち経営の目線は、調達した資金よりも大きな企業価値をつくっているかどうかです。
その見方のご紹介として、時価総額の図を使っています。
株価で見るとすれば、上場直後には3,700円ほどまで上がったかと思いますので、現状は、そこから7割程度下がった水準ということになるのですが、長い目で見ればあれはオーバーシュートの部類だったのでしょう。
少なくとも、上場時に私たちが公開価格としてお示しし公募で買っていただいた、私たちに直接関係のある株価2,100円については、中長期では確実に取り戻していきたいと思っています。
質問者:前回の株主総会から1年、「時期の不確実性」という言葉に逃げているような印象が強く、もう少し丁寧に説明してほしかった。
質問は3点で、第3相試験が承認されて始まった場合に上市までベストでどれくらいの期間か。
CBP501について、これから懸念されるリスクや懸念点はあるか。
これだけ魅力的な会社なら買収されてもおかしくないが、買収を検討する側から見てどこか懸念点があるのではないか。
河邊:去年の時点で実際に起きていたのは、先ほど申し上げた米国の製造委託先について、作れているものは問題ないが、作るためのコンセプトや会社の体制、考え方、書類についての指摘でした。
書類の話だから比較的簡単に済むだろう、今回出したものでOKと言われるだろう、と思って、毎回書類を出していました。
ところが、そのたびに新しい指摘が来ます。
モノは作っているし、指摘されたところもきちんと直したのに、なぜまた別の指摘が来るのか、当時の私たちには理解できませんでした。
そのため、ずっとはっきりしたことを申し上げられませんでした。これは反省点です。しばらくは、通らないわけがないと思っていたのです。
それが根本的な考え方、思想の違いだと気づいたのは、少し後になってからです。
欧州に慣れた会社に移すというリスクとも天秤にかけながらでしたが、金額的にも製造枠の空きの面でも、なかなか移れませんでした。
移る覚悟を決めたのは、問題にはっきり気づいてからです。
できるだけガラス張りにしたいと常々思っていますし、これからも気をつけたいと思います。
上市までの期間については、現在申請しているプロトコル、つまり試験の人数などがそのまま受け入れられ、十分な資金を投入できれば、試験が始まってから最短で2年ぐらいと思っています。
プロトコルに関してはこれまで問題になっていないので、そのまま受け入れられる可能性が高いと思っていますが、確定ではありません。
当局から追加で何かを求められる可能性もありますし、前回は何も言われなかったデザインが、改めて見たらダメだと言われる可能性も常にあります。
ベストという意味では、試験開始から2年程度が一般的ですが、患者数をもっと増やせという話になれば、さらに長くなります。
買収については、私もずっと前から、なぜ買収しないのかと思っています(会場笑)。
ただ、この20年の経験で分かったのは、研究者はみんな、これでいける、素晴らしいと言うものの、実際に臨床試験をやってうまくいったものはほとんどなく、9割は失敗しているということです。
最近は成功確率が上がっていますが、それは、うまくいくことが分かっているものをやっているからです。
ある抗がん剤がうまくいくと、それに似たものを皆がこぞってやります。
たとえば子宮体がんは、比較的患者数の少ないがんですが、抗体に抗がん剤を結合させたADC(抗体薬物複合体)の米国の臨床試験が、現時点で200種類も行われているそうです。
恩恵を受ける患者さんは同じなのに、臨床試験は200も行われ、メジャーな製薬会社はみなそのパイプラインを持ち、中国を中心にベンチャーも100社ほどできています。
うまくいったと確定した時点から、皆が一気に広げるのです。
そういう状態になるまでは、うまくいく確率はせいぜい1割です。
持ち込まれたものを何も考えずにすべて断るだけで9割正解という世界なので、私が製薬会社の導入担当だったとしてもそうするでしょう。
しかも大きな製薬会社では、毎年、あの会社でうまくいっているからこういうものを取って来ようという方針が示されていることが多く、うまくいっていることが証明されていないものは、導入する人のリスクが非常に大きいのです。
うまくいくかどうか分からないものに、人生を賭けるほど惚れ込むかどうか、ということです。
裏返せば、私たちはまだ、CBP501に人生を賭けるほど惚れ込んでくれる人を見つけられていない、ということでもあります。
CBP501は非常に独特で、似たものがなく、真似ができません。
分子標的薬は、たとえばRASというタンパクのこの部分にくっつく分子を探せばよいので、臨床でうまくいった途端に、ごまんと参入してきます。
それでも、第2世代、第3世代と副作用が少なく良くなるので、こぞって参入することにも良い面があります。
一方、うまくいった実績がまったくない分子については、基本的にやらないというのが、大手の考え方です。
ですから、ベンチャーをつくるしかなく、起業したい起業家のような人に惚れ込んでもらってやってもらう、というのが、欧米で実際に起きていることです。
加登住:今の話の実例として、先ほどの株主総会でご質問に出たダラクソンラシブがあります。
今年に入ってから、提携のマーケッで抗がん剤の導入を行っている製薬会社のテーマ設定が一斉に「RASなら欲しい」に塗り変わっているというのが現状です。
河邊が申し上げたとおり、私たちのような独自の薬剤は、私たちのようなチームで開発し、成功の事例をつくっていくというのが、世界的にも大きな流れになっています。
ご質問いただいた「時期の不確実性」という言葉についてですが、発信する私たちとしては、時期の不確実性という言葉を「逃げ」のつもりでは使っていません。
私たちのリスクがどこにあるのか、それは時期です、という、リスクの正直な開示のつもりです。
少なくとも今のところ、時期以外の、つまり臨床第3相試験が始まらないような致命的な不確実性は、ほぼありません。
時期の不確実性と言ってさえいればいいと高をくくっているのではないかと思われるのは、確かにそうかもしれません。
ただ、時期についてはお約束できない、すぐかもしれないし、もっと遠いかもしれない、これをどうお伝えするかに心を砕いてきた結果がこの表現だということは、ご理解いただきたいと思います。
質問者:一番不安なのは、1年後の2027年9月の株主総会になっても、まだ開始できていないのではないか、ということです。
もし、1年後にもまだ開始できないということが分かったら、その時点で教えていただきたいです。
分からないことが一番不安です。あと半年、1年かければ開始できると分かれば、待てますし、株価が下がっても、買い増しができると思えます。
もう1点は、FDAで起きたようなことが欧州でも起きる心配です。
世の中は正直だけでは通用しないところもあります。そうなった場合に、根回し、つまり少し違うルートで、政治というわけではありませんが、根回しのようなものをしなければならない場面があるかもしれません。
そういったことはできるのか。答えづらいと思いますが、よろしくお願いします。
加登住:時期が分かれば待てる、というのは、おっしゃるとおりだと思います。
ただその一方で、当社のようなリスクを抱えた会社にご投資いただく際の考え方として、それが分かるほど不確実性が低ければ投資魅力にも欠けるという側面もあります。
「来年の株主総会でもできていないのではないか、その予兆があったら言ってほしい」というリクエストに正面からお答えすると、ゼロではありません。
逆に、割とすぐに、もっと早く承認が出る、これもゼロではありません。
その確率分布がどうなのかという話は誰にも客観的にはわかりません。
その幅の中のどこに賭けるか。まだまだだろうと思う人もいて、すぐかもしれないと思う人もいる、そういった不確実性の高さ(ハイリスク)は、株式投資のリターンの源泉でもあります。
投資銘柄である私たちとしては、分かることはもちろんお伝えし、分からないことについてはどう分からないかを正直にご説明するのが、役割だと思っています。
こんなに時間がかかっていると、FDAのときのように臨床試験が始まらないことが起きるのではないかというご心配が出るのは、そのとおりだと思います。
だからこそ、「時期には不確実性があるけれども、時期以外のところでの不確実性は着実に潰してきています」と分けてお伝えしています。
そこに先回りして区別してお伝えするつもりで使っている表現が「時期の不確実性」「承認獲得の不確実性」なのですが、時期が分からないという一点でまた承認獲得のことにもご不安になってしまうのは、お伝えしている私の不徳のいたすところかもしれません。
改めて申し上げますが、臨床試験が始まりそうにないという兆候は、今ありません。
ただ、いつかという点については、いつまでにはできないとも、いつまでにはできるだろうとも、言えません。
確率分布は時々刻々変わっていると思いますが、大枠としてそういう状況だということを正直にお伝えして、投資家の皆さんのご判断にお任せしています。
河邊:根回しは、実際にはとても難しいです。
欧米の製薬会社の場合は、FDAの担当官だった人を社内に雇ったり、その人がまた戻ったりということがあり、莫大なお金をかけて関係を築いています。
たとえば、アドバイザー1人を雇うのに年間億単位の報酬を払うなど、いろいろな方法でコネクションやパイプをつくっておられます。
それは私たちには真似のできないことです。
しかし、最も意味のある根回しは、臨床試験のデータ、学会発表、そして医師たちの間で世論が盛り上がることだと思っており、それは、やれる限りやっています。
当社の科学顧問をお願いしている米国の先生方は、抗がん剤開発の中心におられ、FDAとの関係も深く、過去にたくさんの熱いやり取りもあった、業界にとても詳しい方々ですが、FDAは動かせないと毎回言われます。
最近も、米国の臨床内科医のビデオをよく見ますが、自分たちが良いと思った薬の承認が取り下げられ、多発性骨髄腫などで、なぜだと言う医師がたくさんいました。「FDAの考えることは分からないな」と。
当局への根回しは至難の技ですので、科学的な事実を積み上げて、正攻法でいくしかないと思っています。
今のところ、欧州ではフェアに扱われていると思っています。FDAのときのような兆候は、新しい担当者に替わるなどがない限り、今のところありません。
質問者:薬剤に対する規制への対応はかなり大がかりで時間もかかることが確実であり、細かい質問への対応とは違っていたと思う。これまでの期間、そこを分けて説明してほしかった。実際には、承認まで確実に時間がかかる時期もあったのではないか。
加登住:先ほど河邊の説明にもありましたが、2本立てで走っていたというのが、この1年ほどの裏話です。
時間をかけずに、これまでの臨床試験で使ってきた米国の会社で規制対応をして通す道と、それに莫大な時間がかかる場合に備えて、欧州での経験のある会社に出す道の2つです。
米国の会社は、欧州への対応は初めてだけれども、これでいけるだろうと、周囲のプロフェッショナルであるCRO(開発業務受託機関)の方々の意見も聞きながら進めてきましたから、すぐかもしれない、というのがまず一つありました。
そして、それでは対応できないかもしれないことに備えて、欧州の会社に出す、これは最初から時間のかかる方法でした。
両方を走らせていたので、すぐかもしれないし、時間がかかるかもしれない、という状況が続いたのです。
時間のかかる方法しかやっていなかったのであれば、そうお伝えしたと思います。
質問者:前渡金の話は、財務的には一時的にはネガティブかもしれませんが、準備資金として、私にはポジティブに見えます。できる範囲で、詳細を説明してほしい。
加登住:前向きというお受け止めで正しいと思います。
薬剤の製造などの仕事は、製造のラインを押さえて実施するので、後でお金を払う段でこちらが倒れていたら困りますから、ラインを開ける以上はちゃんと前にお金を払っておいてください、というタイプのお金が必要です。
半ば保証金のようなもので、実際にできたときに、そこから支払われます。
こうしたお金が必要になる、きちんとしたところを使ったということです。当社が上場企業だから前渡金なしでいい、というような、雑な管理ではないところでやったことの証拠でもあります。
また、前渡金が実際に費用に振り替えられているのは、当社が発注した仕事が進んだあかしでもあります。
前渡金が発生したこと自体もポジティブですし、それがきちんと使われ、途中の第2四半期の時点よりも大きく減っているのは、それだけの仕事を必要に応じてやっていただいた結果です。
費用がかかったのは良いことだという話になってしまいますが、実際、当社のような事業ではそういう性質です。
きちんとしたところにきちんと仕事を出し、きちんとした仕事が返ってきて、前渡金を費用に振り替えた。そういう流れが、2026年6月期にたくさん起こりました。
質問者:欧州の会社に移管されたとのことだが、第2相試験で使った薬剤と、第3相試験で使う薬剤が同じものだという同等性の証明が必要になるのではないか。また、ペプチド製剤の同等性を証明するには、一般的に、どのような実験や時間が必要か。
河邊:同等性の証明は、とても大変です。
ペプチドの場合は、構造や光学異性体など、物理的に全く同じものであることに加え、製造後の不純物が、少なくとも同等かそれ以下であることを証明するのが、一番大きなところです。
もう一つ、臨床的に、患者さんに投与して同等かどうかを証明すべきかどうか、というのが一番のポイントで、これは当局に問い合わせています。
当局は、科学的なことを審査する人と、全体として審査する人の2段階に分かれていますが、科学的な審査を担当する専門家からは「同等性を見る臨床試験までは必要ない」という回答を得ており、物理的には同等というデータを取っています。
今後、別の審査官が出てきて違うことを言い始めるという可能性はありますが、限りなくゼロに近いと思います。
同等性とひとことで言っても、溶ける速さ、粒子の状態など、ありとあらゆることを同等であると証明するのですから、時間がかかります。
そもそも、測定法を確立したという証明が必要で、その証明だけで平気で2〜3か月かかり、実際の試験でまた1か月かかる、というような感じです。
しかも項目がたくさんあります。
大雑把に言うと、物理的な同等、生物学的(臨床)な同等、場合によっては動物実験まで追加しなければならないことがありますが、当社は、専門の審査官から、物理的な同等だけでよいという回答をいただいています。
ただ、最後に出てくる人がダメだと言う可能性は、ゼロではありません。ゼロに近いと思っていますが。
質問者:CTISのシークエンス枝番号は今いくつなのか、教えていただけるのであればお願いしたい。掲示板などを見ると、オーストリア(ウィーンの大学など)で、先生と予算番号が決まった施設に、治験の申請番号が載っていて、申請当初は00だが、一度取り下げて再申請すると01になる、という情報があった。
加登住:枝番号が変わるのは取り下げ・再申請のときだけではありませんから、審査の進行を推察する材料として重要ではなく不適切に近いと考えています。
各臨床試験実施施設が、この臨床試験の準備を進めていますと広報に出すときに、その時点で実施施設が把握している申請番号を記載しているにすぎません。
枝番号が変わっても中身が変わるものではないので、重要であるかのように読まれると、感覚の違いがあるのだろうと思っています。
質問者:公式Xは、投資家とのリレーションで重要な位置づけだとおっしゃっている。掲示板で盛り上がったところで、誰かがAIなどで調べた結果を会社にぶつけ、会社が見解を述べると、株価に連動して下がってしまう。公式Xの位置づけを、もう一度説明してほしい。
加登住:もともと公式Xは、適時開示やこうしたプレゼンテーションでの説明をわかりやすく補うために始めました。
始めた当時は、適時開示だけ読んでも何のことかさっぱり分からない、という声がいろいろなところから上がっていたため、やさしい言葉に言い換えたり、ご質問にお答えしたりする場として設けたものです。
その流れは、今も変わっていません。
掲示板については「見ることもある」とお話ししたことがあると思いますが、全ての議論はもちろん追っていませんから、公式Xもどこ由来の質問かにはいちいち頓着せずに回答している状況です。
ところで、生成AIの登場で、さてどうしたものかと思っています。
ひょっとしたら先ほどの枝番号の件もそうかもしれませんが、枝番は非常に重要だとか、取り下げ・再申請をしたときしか番号が変わらないとか、生成AIは平気で誤ったことを言います。
ハルシネーションと言います。
それを真に受けた質問が直接飛んできたり、その後、掲示板などでたくさん議論されて熟成されているのか、元が何なのか分からないような質問が来たりするのが、最近の困りごとです。
どう対応していくかは、気にしているところです。
一方で、生成AIは、時々嘘をつきますが、時々本当のことも言いますので、そこで質問して詳しくなっていただけるのは、我々としても歓迎すべき面があります。
何かうまい方法がないか、今後も考えていきたいと思っています。
質問者:第3相試験の承認が得られた後、どれくらいで試験が開始され、その後のスケジュールは、どのようなイメージか。
河邊:欧州から承認が得られた場合は、1〜2か月のうちに、臨床試験施設のオープン(開始訪問)ができると思っています。
ただし、一度に全部の施設を開始できるわけではなく、1日に2つ3つというように、徐々にです。
また、開始訪問を終えた施設で被験者の組入れが始まるまでにも、それぞれ期間がかかります。
当局から試験内容の変更を求められる可能性があるので確定ではありませんが、現在の目論見どおりであれば、最初の被験者への投与が始まってから2年ぐらいと思っています。
中間解析が入っていますが、人数や、どの時点で行うかが変わると、時期が大きくずれます。
また、中間解析をしている間も患者さんの登録を続けてよいのか、止めなければならないのかによっても、3か月ぐらいは変わります。本当のベストであれば、2年ぐらいというイメージです。
質問者:昨年は、中間解析はやらないと聞いたと記憶しているが。
河邊:中間解析は、やるつもりでずっと言っていたと思いますが、やる場合とやらない場合の両方の可能性がある、と申し上げた可能性があります。
少なくとも現時点では、中間解析をやる可能性が高いと思っています。ただ、当局次第です。
加登住:去年も、中間解析はやるつもりで話していましたので、何かのミスコミュニケーションだったかもしれません。その点は申し添えておきます。
なお、株主の皆さんの中に、中間解析で「こんなにいい結果が出た」という発表があると思っていらっしゃる方がおられるとまずいので、早めに申し上げておきたいのですが、現状想定している内容では、中間解析は、赤信号が必要なときにそれが表示されるだけです。
安全性に問題があるとか、これ以上やっても効果の証明ができないというように、私たちから独立した第三者がデータを見て判断し、赤信号をつけるべきだというときに赤信号をつけます。それが中間解析です。
データについては公表されないし、私たちにすら教えてもらえません。
かりにデータが良くても、青信号をつけてくれるわけではないのです。
いいデータが出ていると中間解析結果で報じられるわけではないということを、今のうちからご認識いただければと思います。
質問者:現時点では、ボールは全部こちらから投げ返していて、向こうがボールを持っており、意見の相違はなく、何が起こるか分からないので100%とは言えないが、そんなに時間はかからない、という手応えだと理解しているが、間違いないか。また、承認が出れば1〜2か月で開始とのことだが、その後のIRでは、臨床第3相試験についてどういうことを開示していくのか。FDAのときも、あまり話せなくなるという話をされていたが、EMAの場合はどうなるのか。
河邊:前半のご質問に関して、お答えします。
ボールが向こうから返ってくるスケジュールは、だいたい決まっています。
ただ、スケジュールの中で質問が来て、2〜3日で答えろ、というように来ます。
通常は答えられるのですが、答えられないような質問だった場合、一旦「この質問には答えられません」とすると、時間がグンとかかったりします。
時期が不確実というのは、そういうことです。
質問が来るスケジュールはだいたい決まっていますが、そのスケジュールに全部きれいに答えられない場合には、スケジュールがぐんと伸びる可能性があります。
順調にいった場合の見込みは、当然、内々には持っていますが、それが当てにならない、ということです。
現時点では、来たボールは全部投げ返せています。
加登住:基本的に、投げられては返す、という状況ですので、先日の公式Xで「待ち」という表現ではなく「受け身」という表現に改める、とお伝えしたのが、まさにそのポイントです。
今後のIRについては、順調に進んだ場合にあり得るのは、まず開始承認が取れたというお知らせ、そこからすぐに実施施設の具体的なオープンに向けて進みますので、施設がオープンした・オープンする施設が増えてきた、というお知らせです。
これは、いつもの臨床試験の始まりと同様です。
今回は、欧州の複数の国にまたがってやることになりますから、国の数が徐々に増える、といったことも、一つ一つがニュースになっていきます。
データの話はキーオープンまで我々も見せてもらえませんので、当然何も話せません。
臨床試験の大きなルールとして、スポンサー企業が余計なことを言ったせいで、万が一にもデータが変わってはいけないということで、抑制的なIRが求められるというのは、そのとおりです。
その中で何が言えるかというと、今のところ考えているのは、頻度は分かりませんが、実施できる施設がこれだけに増えました、というのは、言ってよいだろうということです。
組み入れのペースについても、臨床試験中に、組み入れがこれだけ進みましたと出している会社もありますので、それを参考にしながら、進んでいるものは進んでいる、進んでいないものは進んでいない、何が原因だろうかとお考えいただけるような情報を、できるだけ出していきたいと思っています。
質問者:13年ほど前、株価が310円ほどだったとき、この場で社長に、経営者なのか、研究者なのかと質問したことがありました。その後、肺がんは治りますかと質問したところ、治りませんという返答で、治らない薬を作ってどうするのか、と聞いたこともあります。第3相試験を通って、がんが治るような薬を作っていただきたい、というのが、私のお願いです。母は亡くなりましたが、そういう病気が治る薬を作っていただきたいというのが、私の心の内です。
河邊:抗がん剤は、2013年頃を境に、開発の方法が変わりました。
それまでは、末期の患者さんについては、余命の延長しかできず、早期の患者さんについては、抗がん剤そのもので治していました。
末期の患者さんについては、治すことは望めませんでした。
それが、2014年以降、がんの種類によっては、治すことが望めるようになりました。
それが免疫系抗がん剤です。
私たちが今目指しているのは、免疫系抗がん剤との組み合わせや、免疫系抗がん剤そのものですので、治すことを目指して頑張りたいと思います。
今後もご支援のほど、よろしくお願いいたします。
加登住:長時間、ありがとうございました。これをもちまして閉会いたします。今後もよろしくお願いいたします。
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