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独自の薬剤スクリーニング

G2チェックポイント阻害の結果(現象)に着目した薬剤スクリーニング法

 生きた細胞で起きる現象の多くは、さまざまな分子群が複雑に絡み合ったシグナル伝達経路を介して現れ、また、そのシグナル伝達経路の多くは未解明です。G2チェックポイントに関連するシグナル伝達経路もそのひとつであり、現在まで、特定の分子の機能を抑制することによってG2チェックポイントの働きを特異的(*1)に阻害し臨床試験によりその有効性を証明できた例は報告されていません。

薬剤のスクリーニングでは多くの場合、最初のステップとして「ハイスループット(*2)スクリーニング」(単一若しくは少数の特定標的分子(*3)に対する化合物の活性を高速に分析する技術)を実施し、大量の候補化合物の中から「外れ」を早期にふるい落とす作業を実施しますが、G2チェックポイント阻害のように標的分子を特定できていない領域では適用しづらい特徴を持っています。

これに対し、当社のスクリーニング法は、特定の標的分子に対する活性ではなく、生きた細胞の細胞周期に係る挙動に着目したものです。

細胞の挙動という最終アウトプットを基準とした当社独自の薬剤スクリーニング法は、標的分子があらかじめ特定されている必要がなく、シグナル伝達経路が複雑・未知でも対応が可能という特色を有しています。当社は、未解明の部分の多いG2チェックポイントの領域においてはこの薬剤スクリーニング法が効果的であると考えており、現在までに当社が保有している薬剤候補化合物パイプラインはいずれも、この薬剤スクリーニング法によって探索・創出されたものです。

このスクリーニング法には、生細胞を用いるので自動化が難しく、そのためスループットを向上し難いという欠点があります。しかし、そのことが逆に、一般に高いスループットを追求する傾向にある他の製薬企業や創薬企業による模倣や追従に対する障壁となっています。なお、この欠点を克服するために当社は、データマイニング(*4)技術等の創薬支援ツールを活用することによって、当社独自のスクリーニング法のスループット向上を図っています。

*1 特異的
ある特定の対象のみに働き、他の対象に影響を及ぼさないこと。ここでは、化合物が特定の作用のみを有することを指す。

*2 スループット
効率。医薬品開発の領域では、高効率スクリーニングを指す「ハイスループットスクリーニング」の形で多く用いられる。

*3 標的分子
生体内の特定の分子の機能を抑えることで効果が期待できる場合、その特定の分子は創薬のターゲットとなり得ることから「標的分子」と呼ばれる。分子標的薬剤開発(標的分子を予め定めて薬剤を創出しようとするもの)によって得られる薬剤に限らず、多くの薬剤には、作用メカニズムを探ると何らかの標的分子が存在する。

*4 データマイニング
蓄積されたデータベースから、統計学、人工知能などの解析手法を用いて有用な情報を抽出する技術。当社においては、多数の測定実験結果から未測定化合物の活性を予測するためにこの技術を利用している。

当社のスクリーニング法で獲得される化合物

上記のとおり当社は、G2チェックポイントを阻害した場合に起きるのと同じ現象(癌細胞を細胞周期G2期にとどまらせず死滅させる一方で正常細胞に影響がないことなど)を起こすことを指標として、化合物の探索・最適化を行っています。

しかしながら、これと同じ現象は、厳密な意味での「G2チェックポイントの阻害」でなくても起きる可能性があります。たとえば、G2チェックポイントの機能は阻害していないにもかかわらずG2期にとどまる時間を短くしている場合などがあり得ます。

したがって、現象だけでは「G2チェックポイントを阻害している」とは言い切れません。
また、一般に、ヒット化合物の多くは活性が低く、そのままでは生体内で薬剤として働くことができないため、生体内で期待どおりの活性を獲得するために、ヒット化合物の構造の一部を改変して「最適化」を行います。この過程で、副作用を増強せず活性を高めるための改良・改変を行ううちに、未知の(したがってG2チェックポイント阻害とは異なるかもしれない)作用メカニズムによる抗癌活性を持つ可能性もあります。
このため当社では、当社のスクリーニング法から獲得されているパイプラインの化合物を「G2チェックポイント阻害剤」とは称していません。

とはいえ、これらのパイプラインはいずれも当社が獲得しようとしている「正常細胞に影響の少ない、副作用の小さい抗癌剤候補」であることには変わりなく、抗癌剤として開発する価値のある化合物であると当社は考えています。

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