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CBP501用途特許に関するご質問にお答えします

2020年02月05日 12:00

加登住 眞

キャンバスでは、インベスター・リレーションズ(IR)の一環として2019年4月から公式ツイッターアカウントを運用しています。
(実はツイッターアカウント @canbas4575 を確保したのはちょうど9年前の2011年2月なのですが、試験的運用を始めようとした矢先の3月に東日本大震災が発生してツイッターの雰囲気が一変し、そのまま長きにわたって立ち上げが遅れていました。)
おかげさまで、適時開示のお知らせや追加解説、マネジメントブログ更新のお知らせなどで、地道にフォロワー様が増えつつあります。

質疑応答もいくつか投稿していますが、残念ながら従来はもっぱら電話やメールでIR窓口に届いたご質問への回答にとどまっていました。
最近になってようやく、ツイッターで直接ご質問をいただいて質疑応答のやりとりが始まったところです。

そんな中で今回、このようなご質問をツイッターでいただきました。

キャンバスが有しているCBP501の物質特許(2003年出願)が5年の延長を含めても2028年までの有効期間で、それよりも長い排他性を追求して用途特許(2014年出願)を持っていることを踏まえたご質問です。
今回のブログでは、このツイートへのご回答と併せて、CBP501用途特許について解説します。

用途特許の一般論 〜「用途特許は弱い」といわれる背景

回答の前にまず、「用途特許」についての基本情報と一般論を。

用途特許というのは、医薬品をはじめとする化学物質に特有の特許です。
化合物自体は新しくない(既知の)ものであっても、最初の特許で想定していなかった適応疾患での薬効など、その化合物について新たな用途を見つけることができれば、用途特許として成り立ちます。

このマネジメントブログでも、CBP501用途特許が米国で成立した際の公表資料に関連して少しご説明していますので、ご参照ください。

さて、医薬品の「用途特許」と言ったとき、多くの人が最初に思い浮かべるのは
「既知の、しかも他の疾患で既に医薬品として承認されている化合物に、元の物質特許でカバーされていない新しい適応疾患を付加するもの」
です。
用途特許の例として、とてもわかりやすいですから。
(CBP501の用途特許はこれとは異なり、だから一般論の「弱い」は当てはまらないと考えているのですが、それはあとで詳しくお話しします。)

一般に、用途特許と比較すると、物質特許の効力の及ぶ範囲は広く、特許侵害行為に対する力は強大です。
特許の対象となっている化合物の使用はもちろん、生産や流通、さらにその準備まで、幅広く侵害行為を差し止めることができます。

一方、用途特許の効力の及ぶ範囲は「その用途での使用」だけです。
つまり、物質特許がなく用途特許しかない状態だと、他の会社がその物質を製造することや、用途特許でカバーしている以外の既知の適応と称してジェネリック医薬品の承認を獲得することや、それを流通させることを、差し止めることができません。
差し止めができるのは「使用している現場」の侵害行為だけですが、医療の世界には「適応外使用」というものがあり、医師や薬剤師が医療行為として適応以外の用途(用途特許がカバーしている用途も含めて)で使うのを用途特許の効力で止めるのは困難です。

一般に用途特許が物質特許に比べて「弱い」と言われる理由は、この点にあります。

(弱いからまったく役に立たないというわけではもちろんなくて、実際に製薬企業等は用途特許を含むあの手この手を駆使して排他的権利を確保しようと努力しています。長くなるのでこの話題はまた別の機会に。)

CBP501の用途特許は「弱い」のか

ただ、CBP501の用途特許は、上記とは少し様相が異なります。

企業秘密の領域に差し掛かる話なので全部を書いてしまうわけにはいきませんが、公表済みの情報や外部の人でも想像できる範囲に限ってご説明します。
(正直なところ、この部分の検討と作成に時間がかかってしまうことが予想されたので、ツイッターでの即答を控えました。案の定、この項の推敲に原稿作成時間の大半を割くことになりました…。)

CBP501の用途特許は、「CBP501という化合物の医療用途での投与対象を白血球数で絞り込むこと」です。
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4575/tdnet/1289262/00.pdf

留意していただきたいのは、上記でご紹介した
「新しい適応疾患を付加するもの」
とはちょうど逆で、用途の縮小特定である点です。

したがって、物質特許がなくなったあとの防御の形も一般とは異なります。

物質特許の有効期間が終わり用途特許しかない状態になると、他の会社がCBP501と同等の物(ここでは仮に「ジェネリック501」と呼びます)を製造するのは止められません。
しかし、その次の「用途特許でカバーしている以外の適応でジェネリック医薬品の承認を獲得すること」が非常に困難だと考えられます。

というのも、もし現在進めている戦略どおりにCBP501が承認されたとすると、その添付文書には

「白血球数異常高値の患者さんには投与してはならない」

という趣旨の、禁忌の記載が入るだろうと考えられるからです。

もしCBP501の添付文書にその禁忌記載が入ると、ジェネリック501を作った会社がこの禁忌に触れない(これまで承認されていない白血球数異常高値の患者群を対象に含む形で)承認を獲得するときには、適応拡大と同様の手続きが必要になります。
つまり、CBP501で禁忌になっている白血球異常高値の症例を対象とする臨床試験が求められるはずです。
そんな臨床試験は、簡単には治験開始申請が通りません。
それを実現するためにはかなりの基礎研究や非臨床試験に基づく裏付けデータが必要で、あまり現実的とは言えません。

つまり、将来承認を得た後のCBP501の独占的権利は、
・物質特許(2003年出願)の有効期間中は物質特許でブロックできる
・物質特許が切れた後も、ジェネリック501の承認ステップでブロックされる
・その裏付けとして用途特許がある
という構造になり、長期間にわたって物質特許に劣らない排他性が構築できると、キャンバスは考えています。

そもそも医薬品の独占を守る方法は特許だけではない

ここで少しだけ話題を変えて。
医薬品の独占性(排他性)を議論するときには特許の残存期間ばかりがクローズアップされがちですが、実のところ、医薬品の独占性を守るのは特許ばかりではありません。

実は、承認時点で実質特許有効期間が10年も15年も残っているような薬は少数派です。
少し古い資料になりますが、1989~2008年に日本で承認された新規有効成分含有医薬品の日本国特許の状況を調査した資料によると、調査対象となった113件の実質特許有効期間(承認から特許満了まで)の平均値は10.76年。
実質特許有効期間が14年以上残っていた薬は16件(14.2%)に過ぎません。
逆に、実質特許有効期間が8年未満ととても短いものが22件(19.4%)あります。
(データ出所: 医薬産業政策研究所『日米における医薬品の特許期間』http://www.jpma.or.jp/about/issue/gratis/newsletter/archive_until2014/pdf/2009_133_12.pdf

一方で、各国の規制当局は、特許とは別に、新しく承認された医薬品に独占的な権利を付与する制度を持っています。

たとえば日本には「再審査制度」があり、再審査期間中は実質的に後発医薬品の市場参入は制限されます。
新たな有効成分を含有する医薬品(CBP501が承認されるとすればこれに該当します)の再審査期間は8年、希少疾病用医薬品では10年です。
米国にも同様の制度があり、後発医薬品の申請を受け付けない「データ保護期間」(新有効成分含有で5年、オーファンで7年)の間は排他的先発販売権が与えられ、後発医薬品の市場参入は制限されます。
もちろん欧州にも同様の制度があり、新有効成分含有医薬品では10年です。

このように、新有効成分含有医薬品が承認されるときには、実質特許有効期間が終わった後であっても、それまで医薬品として承認されていないものであれば、承認から一定の年数は排他的な権利が規制当局から付与されるのです。

このため、経営判断としてこの排他的な期間で十分な利益が見込めるなどの場合には、実質特許有効期間が短くても承認を獲得することがあります。
先ほど22件あると書いた「実質特許有効期間が8年未満」(中には5年未満のものもあります)のようなものが承認されている背景にはこうした事情があります。

つまり(CBP501に話を戻します)、仮にCBP501の用途特許が通用せず物質特許しかない状態になったとしても、再審査制度やデータ保護期間の制度によってある程度の期間にわたる独占的権利は確保できますから、魅力が大きく損なわれることはないと考えています。
さらにキャンバスの目論見どおり用途特許が通用すれば、より長い期間の実質的な独占的権利が確保できることになります。

ご質問へのお答え

さて、元のツイートのご質問は

用途特許で係争を経ずに大型のライセンス契約をすることはできるのでしょうか

https://twitter.com/stocksosesanb/status/1222924638860148737

でした。

特許についてはどんな特許であっても「係争のおそれがゼロ」とは言い切れないのですが、現時点で当社が知ることのできる情報に基づく限り、CBP501に関する物質特許や用途特許はいずれも、他社との提携において支障となるような問題はないと考えています。
また、ここまで長々とご説明してきたとおり、一般に言われる
『用途特許だから物質特許よりも弱い』
といった状況とは異なると考えています。

ただし、「大型のライセンス契約をすることができるのか」については、少しだけニュアンスの違う回答をしなければなりません。
それは、内容に関係なく「用途特許だ」というだけの理由で足切り的な判断材料に使っている製薬企業が、残念ながら少なからずあるからです。
足切りされずに交渉のテーブルに辿り着ける数が少ないわけですから、『提携獲得のためには用途特許は物質特許よりも弱い』と申し上げざるを得ません。

とは言え、そうした足切り判断をしていない製薬企業等ももちろん多数あり、私たちは現在、そのような企業との交渉を重ねています。

以上が、ご質問へのお答えです。

この回答を引き出していただいた stockinformation @stocksosesanb 様、ありがとうございました。

最後に少しだけ近況お知らせ

オリゴヌクレオチド治療薬・ペプチド治療薬に関して基礎研究から臨床開発までカバーするアジア唯一の学会イベントAsiaTIDES 2020(2月24〜26日、京都市)に、キャンバス代表取締役河邊が登壇することになりました。https://www.giievent.jp/kne913828/

今回は、最終日26日に開催されるPeptides in the Clinic(臨床試験段階のペプチド)のセッションで、
『CBP501 Clinical Trials: Twists, Turns and Updates
(CBP501の臨床試験:これまでの曲折と最新情報)』
と題した講演を予定しています。

2年前のAsiaTIDESに登壇することになったときの河邊のブログ投稿も併せてお読みください。
キャンバスと「ペプチド」 https://www.canbas.co.jp/2018/01/11/peptide/

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