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臨床試験データ比較検討の現場をお見せします(第2回)

2019年12月12日 08:30

河邊 拓己

短期集中連載の第2回です。
前回は、具体例を示して
「きちんと比較するならば、比較しようとする臨床試験が有している特徴のひとつひとつに留意しながら、類似の臨床試験のデータと比べるしかない」
ということをご説明しました。
今回はその続きで、キャンバスが現在進めているCBP501フェーズ1b試験データと他の臨床試験データとを比較する際に検討するべき主要なポイントを見ていきます。

※お願い
本連載の初回に、本連載をお読みいただくにあたってご留意いただきたい点をまとめてあります。お手数ですが初回から順にお読みくださるようお願いします。

試験の特徴を踏まえた他試験との比較(前回の続き)

前回の続きで今回は、CBP501フェーズ1b試験のデータと他の臨床試験データとを比較する際に検討するべき主要なポイントをひとつずつ説明していきます。

なお、以下の説明の中に出てくる「部分奏効」「病勢安定」などの用語については、この項ではとりあえず簡単な説明にとどめます。この連載の後半で、少し詳しくご説明するつもりです。

(1) 既治療歴

癌治療については、(特に欧米では、)癌の種類・進行度合い(ステージ)・何回目の治療かに分けて、さまざまな薬剤や組み合わせによる標準治療法が公表されています。
そして、薬剤の承認の際にも、事実上何回目の治療として使う薬かが示されて承認されます。
それを踏まえて、抗癌剤の臨床試験は「何回目の治療として使う薬として承認されようとしているか」の戦略をあらかじめ立て、それに沿った試験を設計し実施されます。

一般的に癌は初回治療に最も良く反応(奏効)し、2回目、3回目となるにしたがって、さまざまな抵抗性を獲得して反応(奏効)しにくくなります。
特に、「初回」、「2回目」、「3回目以降」と、奏効率、病勢安定化率、無増悪生存期間、そして当然ですが、全生存期間が大きく変わることがわかっています。

CBP501のフェーズ1b試験は、既治療歴のある(初回治療で効果がなかった/効果がなくなった)患者さんを対象としています。
さらに、実際に組入れられているのは、3回目以降治療の患者さんが大部分です。
したがって、CBP501臨床試験と単純に比較することができるのは
「3回目以降の治療という『既治療歴の多い』部類の臨床試験」
ということになります。

しかし、たとえば膵臓癌は特に進行が早いので、臨床試験に関する文献などの情報は初回治療か2回目治療のものが大部分で、それ以降のものはとても少なく、十分な比較に用いるための数を揃えることが困難です。
そのため便宜的に、2回目治療の臨床試験に関する情報や文献をもとに、それよりも奏効率や病勢安定化率がガクンと下がることなどを加味し推定しながら、比較検討することもあります。

(2) ヒストリカルデータ(過去の多数の臨床試験で判明している情報)

一般に、試験の対象である薬剤(この場合はCBP501)が効いているかどうかを統計的に証明するためには、投与した群と投与しない群に振り分けてそれらの差を見る試験(比較対照試験)が必要です。
しかし、今回の臨床試験のように同一試験内に比較対照群を置かない場合は、「過去に実施されたさまざまな臨床試験の中で登場した被験者群」の中で、自分たちの臨床試験の被験者群と条件のできるだけ似ている試験の結果と比較をします。

CBP501のフェーズ1b試験は、用量漸増相を経て、現在は「拡大相」として「既治療の膵臓癌」と「既治療のMSS直腸大腸癌」という、いずれもオプジーボ(抗PD-1抗体)のような免疫チェックポイント阻害抗体が単独ではほぼ効かないという強固なヒストリカルデータのある癌に絞って実施しています。

(3) 投与方法

CBP501フェーズ1b試験は現在、前半部分(用量漸増相)17症例に関する主要なデータがほぼ出揃い、拡大相についても初期に入っていただいた被験者に関するデータが集まり始めているところです。

この用量漸増相のデータの取扱いにも、比較検討にあたって留意が必要です。

用量漸増相では、ヒトで初めて組み合わせを行うこの3剤併用における適切な個々の薬剤量を決定するために、4種類の異なった投与量の組み合わせを試しています。
ですから、拡大相や次相以降の臨床試験で用いられるような「最適な投与量の組み合わせ」を受けられた被験者は、4群中の1群だけであり、他の3群は効果が異なるかもしれないということになります。
この4種類の間で期待される効果の違いは軽微だとは思われますが、頭の隅には置きつつデータを取り扱う必要があります。

(4) 試験の規模(小規模な試験であること)

一般に臨床試験では、早期の小規模な試験ほど効果の兆候(奏効率や病勢安定化率、無増悪生存期間など)が高く出やすく、それを真に受けて多額のコストをかけて規模の大きな試験をしてみたら効果の兆候が下がり、市販後はもっと下がるものと考えられています。
したがって、小規模な試験のデータだというだけで、ある程度のディスカウントをして大規模な臨床試験のデータと比較する必要があります。

こうなる背景にはさまざまな事情が考えられますが、この時点では単純に
「小規模な試験のデータは良さげに見えやすいと考えられている」
とだけ覚えておいてください。
この連載の後半で、背景事情についてやや詳しく触れるつもりです。

また、用量漸増相はさまざまな種類の癌の患者さんに入っていただいており、ひとつひとつの種類の癌の患者さんは少数(最大のものでも5人)です。
そのため、将来の比較的大きな規模の臨床試験でも同様に特定の癌に効くデータが得られ統計的に証明できるかどうかに関する情報は限定的です。

これは単純な統計学の「大数の法則」(簡単にいうと、サイコロを12回振ったときに1の出る回数は2回(12の1/6)ではないかもしれないけれど、12万回振れば約2万回になり、さらにたくさんの回数振れば振るほど本来の確率1/6に近づくという法則。逆に言えば、少ない回数だと本来の確率どおりではないかもしれないということです)によるものです。

以上が、CBP501フェーズ1b試験データを他の臨床試験データと比較するときの主要ポイントです。

前置きがずいぶん長くなりましたが、次回はいよいよ、実際の比較検討内容をご説明します。

(第3回に続く)

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