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CBP501フェーズ1b試験拡大相の対象癌腫選定の背景

2018年10月12日 15:40

河邊 拓己

昨日、「CBP501フェーズ1b試験拡大相の対象癌腫選定のお知らせ」を公表しました。

対象癌腫として選定した「膵臓癌」と「直腸大腸癌」はいずれも、免疫チェックポイント阻害抗体単独で効く比率が低いことが知られています。
キャンバスはCBP501・シスプラチン・ニボルマブ(オプジーボ)の併用でこの領域に挑みます。

なぜこの2つの癌腫を選定したのか。
今年8月に行われた決算説明会や9月末の株主総会後の報告会では、対象癌腫選定の際に考慮する要素として以下の5つの項目を挙げました。

1. 用量漸増相でのレスポンス・データ・手応え
2. CBP501の過去データ(細胞株・動物での非臨床データ、臨床試験のデータ)
3. 免疫チェックポイント抗体単独での奏効率
4. 併用発見レースの競合環境・製薬企業等各社の状況
5. 患者集団規模

そこで今日のブログでは、この5項目に沿ってご説明します。

1. 用量漸増相でのレスポンス・データ・手応え

現在行なっている用量漸増相には、これまで19名の患者さんに参加していただいています。
いずれも、既に進行してしまって複数の臓器に転移があるステージIVで、複数の標準治療(や臨床試験)を経て、既に効果が期待できる治療法がない患者さんです。

癌の種類は、甲状腺癌1名、膵臓癌5名、卵巣癌3名、大腸・直腸癌5名、乳癌2名、胆管癌2名、胃食道接合部癌1名です。

最初の患者さんは昨年10月治療開始なので、初期の患者さんでは安全性や有効性についてしっかり観察させていただいていますが、直近になって投与の始まった患者さんも多く、十分に評価できていない方も多数おられます。
それでも、ここでの感触が対象癌腫決定にとても大きな役割をしました。

また、試験はいわゆるオールカマー(来た人は誰でも)手法で行われているので、ここで複数入られた癌については、そのアンメットニーズが高いことが伺われます。

2. CBP501の過去データ(細胞株・動物での非臨床データ、臨床試験のデータ)

既に何度もお話ししているので耳にタコができているかもしれませんが、改めて。

CBP501は、細胞株での試験では、とても幅広い癌腫に感受性のある細胞がありました。
動物実験でも、胸膜中皮腫・肺癌・大腸癌・膵臓癌・白血病など多数の癌移植モデルで効果が見られました。
過去の臨床試験では、プラチナ抵抗性卵巣癌・悪性胸膜中皮腫・肺癌などで効果がある可能性が見られました。

免疫チェックポイント抗体単独での奏効率

免疫チェックポイント抗体(ここでは、オプジーボ、キイトルーダ、テセントリクなど抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体を指す)単独での奏効率は、次のように言われています。

肺癌: 20%程度。
卵巣癌: 5~15%。
乳癌: 乳癌全般ではあまり感受性がないものの、ホルモン受容体や成長因子受容体が発現しておらず悪性度の高いトリプルネガティブ乳癌では5から25%程度。
大腸癌: 遺伝子変異を蓄積しやすいような特殊な遺伝子異常のある大腸癌(大腸癌全体15%程度)では30%程度、特殊な遺伝子変異のない大腸癌(大腸癌全体の85%程度)では5%未満(ゼロに近い)。
膵臓癌: 特殊な遺伝子変異のない膵臓癌(膵臓癌全体の95%以上)で5%未満(ゼロに近い)。
胆管癌の情報は少ないのですが、PD-L1発現が多い患者さんでは17%程度の奏効率だったとの報告があります。

以上の数字は、2018年米国臨床癌学会(ASCO)総会で発表されたり講演の中で語られた数字を基にしています。

この免疫チェックポイント抗体単剤の奏効率との比較で検討するにあたっては、他に考慮すべき要素がいくつかあります。

一つは、キャンバスのような(大規模臨床開発を行うほどの)資金力の乏しいベンチャー企業にとって、臨床第1b相では、10~20人の試験を行うのが最も戦略的に適しているということです。
過去に肺癌で免疫チェックポイント抗体を使わない200人規模の試験をやらせていただきましたが、今回は、免疫チェックポイント抗体の費用を負担しているので、それだけで、患者さん一人あたりの費用が倍くらいになってしまっています。
したがって、免疫チェックポイント抗体単独での薬効との違いの手応えを確認するために何十人何百人規模の試験を行わねばならない癌腫はフェーズ1b拡大相試験の対象癌腫として選びづらいことになります。

純粋統計的には、例えば単剤での奏効率が20%あると、それに15%上乗せして35%の奏効率が期待できると考えられるかどうかを判断するためには、22名以上の規模の試験が必要です。
一方で、単剤の奏効率が5%の場合には、10名規模の試験で1人の奏効でも、有意に有効な可能性があることになります。
(このあたりについて詳しくお知りになりたい方は Simon two-stage optimal design などをお調べください。ここでは説明を省略します。)
そういうわけで、単剤での奏効率が低ければ低いほど、小規模な試験の結果をもって次のステップへ進む価値を主張しやすくなります。

これらの要素からは、単剤での奏効率の低い癌腫で小規模の試験を実施するのが今回の状況に適していることになります。

一方で、あまり小さな規模の臨床試験では説得力が減るという要素もあります。統計的には、10人の試験でも1000人の試験でも奏効の出る確率は同じはずです。
しかしながら、癌の臨床試験では、10~20人の臨床試験で20%の奏効があったのに600人規模の試験で確認したところ5%であった、などということがよくあります。
ですから、小さな試験ではより大きな奏効率が(提携候補先から)求められます。
(このアンバランスの一因は、小さな規模の臨床試験の場合、結果が良ければ論文になるけれど悪い場合は論文になりにくいので、報告バイアスがあるためだろうと思います。)

さらにもう一つ重要な要素は、臨床試験に組入れられる患者さんがそれまでにどれだけ抗癌剤治療を受けられてきたかです。

抗癌剤一般にそうなのですが、免疫チェックポイント抗体も(少なくとも癌腫によっては)初回治療に比べ後の治療になればなるほど奏効が出にくくなります。
フェーズ1b拡大相に入っていただく患者さんはそれまでに何種類かの治療や他の臨床試験を受けていて、そのぶん奏効が押し下げられることになります。
これに関しては、提携候補先が導入検討で我々のデータを評価する際にそれを勘案してくれるかどうかという、純粋科学とは別の問題もあります。

4. 併用発見レースの競合環境・製薬企業等各社の状況

免疫チェックポイント抗体との併用に関しては現在、さまざまな癌に対して、たくさんの(数千の)臨床試験が行われています。
その中で、現在有効あるいは有望な新薬が多い(=開発競争が激しい)と私が感じているのは、肺癌・卵巣癌・トリプルネガティブ乳癌、そして、意外かもしれませんが悪性胸膜中皮腫です。
一方、膵臓癌は、とても多数の試みがなされていますが、まだ、頭一つ抜けてくるものがいないと言う印象を持っています。

5. 患者集団規模

多くの方がご存知のとおり、患者さんの総数で言えば、多いのは肺癌・前立腺癌・乳癌・大腸癌です。
但し、私たちが現在治療対象と考えている「ステージIVで標準治療法が限られている癌」となると、少し様相が変わって、肺癌・大腸癌、そして、米国で今後増加していずれ近い将来癌による死因の2位になる可能性が指摘されている膵臓癌が患者総数の割に多いことになります。

 

・・・以上のようなことを総合的に考慮した結果、キャンバスはCBP501フェーズ1b試験拡大相の対象癌腫として、膵臓癌と、マイクロサテライト不安定性(遺伝子変異を蓄積しやすいような特殊な遺伝子異常のうちの最大集団)のない大腸癌を選定したのです。

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