マネジメントブログ

日経バイオテクONLINEの記事になりました

昨日公表した臨床試験開始承認について、日経バイオテクONLINEさんが記事にしてくださいました。
キャンバスがCBP501で米国でのフェーズIb開始の承認取得』(2017.04.11 00:00)

残念ながら有料の記事なのですが、少しだけ有料部分も含めて、記事全体の要点をご紹介しつつ追加コメントすることにします。

【何も受け取っていませんが宣伝: 全文にご興味のある方は是非この機会にご購読を。なお、無料トライアルでもこの記事の有料部分をお読みいただけます。】

キャンバスは2017年4月10日、米食品医薬品局(FDA)から、抗癌剤CBP501についてフェーズIbの治験開始承認を取得したと発表した。既に同社はCBP501について、米国でフェーズIIまで行っていたが、より導出の可能性が高まる免疫チェックポイント阻害薬との併用薬としての開発にかじを切った形だ。

このシンプルでわかりやすいリードにひとつ付け加えるとすれば、キャンバスが今回免疫チェックポイント阻害剤との併用に舵を切ったのは、流行に乗ったのでも思いつきでも苦し紛れでもなく、科学的にも経済的にも必然であったことです。

フェーズ2試験までに得られたヒトにおけるデータ(動物実験データでないことにはとても重要な意味があります)を踏まえた基礎研究の成果から、免疫原性細胞死の増加とマクロファージの作用の抑制というそれまで私たち自身にもわからなかったCBP501の特性が把握でき、それらの特性が免疫チェックポイント阻害剤との併用に適していると判断した結果の選択が、たまたま現在の抗癌剤開発のメインストリームと合致したものです。
その点も、さすが日経バイオテクさんは続くパラグラフで触れてくださっています。

今回併用する免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)。
試験はオープンラベル(投与される薬剤の内容を患者さんご自身も医療スタッフも知っている状態でおこなわれる試験)です。

組み入れ基準には、前回のフェーズ2試験の知見を踏まえ、白血球数が正常であることも加えています。

組み入れ症例数は、用量設定相(安全に投与できる用量を確認するフェーズ)で最大18症例、その後、拡大相として最大24症例を予定しています。
フェーズ1では健康人を被験者とする他の領域と異なり、抗癌剤の臨床試験では、フェーズ1から癌患者さんに被験者となっていただくので、安全性を確認するのと並行して薬効の手応えを見ることができます。

今回は、用量設定相ではこれまで薬効の兆候のあった悪性胸膜中皮腫や非小細胞肺癌・卵巣癌に限らずさまざまな種類の癌の患者さんに被験者となっていただき、その後の拡大相で、今回の併用による薬効の兆候が明確に現れる種類を絞り込んでいきます。
後に実施することになるはずのフェーズ2/3試験(3分の2ではなく、薬効の兆候を確認するフェーズ2とそれを証明するフェーズ3の両方の性質を兼ねた試験のことです。「フェーズツースリー」と読みます)で適応とする癌腫を選定するためです。

合計最大42症例と試験規模が小さいことへの不安についても、キャンバスの説明をしっかり書いてくださいました。

組み入れ患者数は少ないが、「有意差を出すことができ、十二分に有効性を確認することができると考えている。有効性が明らかになれば、次はフェーズII/IIIにできる」と河邊拓己社長は説明する。

これは決して独りよがりな強気の主張ではありません。
実際、いま大手製薬企業が相次いで実施している免疫チェックポイント阻害剤と化学療法剤2剤の併用による大規模なフェーズ2・フェーズ3の臨床試験も、それらを実施する意思決定に用いられたデータは、数十症例程度の小規模なフェーズ1試験から得られた有意差でした。

それらよりも有望な結果が得られれば(私たちは得られると考えています)何より。
また、仮にそれらと同程度の有効性であったとしても、副作用の重いことで知られる化学療法剤を1つ減らせる(CBP501単独では抗癌剤特有の重い副作用がありません)ぶん、「CBP501+シスプラチン+免疫チェックポイント阻害剤」の有用性は高く評価され得ます。

このように、比較的規模の小さい試験であっても勝機を見出せるという経済的側面は、この記事の最初に書いた科学的側面の検討結果と並び、キャンバスが今回のフェーズ1b試験に向かうことにした大きな理由です。

今後、この臨床試験に関する情報が各種メディアで報じられる機会が増えると思われます。
今回と同様に、報道の追加ご説明などを適宜このブログで発信していきますので、ぜひご注目ください。
ツイッターアカウント@canbas4575でも、更新速報を中心に情報発信していきます。